第3話 慟哭 19 ―世界を救う為ならば……―
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勇気は、正義に背を向け歩き始めた。
勇気は、心に固く誓っていた。正義との決別を……
― 自分はもう正義の傍に居てはいけない……
そう思うから。
勇気は知っているから。
― 自分が傍に居ては、友を想う気持ちの強い正義は自分を選ぼうとする……
その事を勇気は知っているから。
― それは決してあってはならない事。世界を救う戦いに、俺は不要なんだ。俺は、正義の邪魔をしたくない………
―――――
正義は勇気の『さよなら』……その言葉が何を意味するのか、勇気のたった一言だけで、全て理解出来た。
何故理解出来たのか、そこに理屈はない。
言葉で表すなら、『正義と勇気が友達だから』それだけだ。他に言葉はない。『友達だから』理由はそれだけ。
「ま……待てよ!」
勇気は外へと繋がるエレベーターの中へと消えてしまった。
正義は嫌だった。『勇気との別れ』……そんな事、絶対に嫌だった。勇気は正義にとって掛け替えのない友達だから……
だけど………
一歩、二歩と歩き出して正義は気付いた。
自分を説得しようと叫んでいた勇気の瞳の奥に、『恐怖なんて見えなかった……』と。それどころか、正義はその瞳の奥に…………
「え……?」
突然、腕時計から目映い光が発した。それは白い光……ボッズーからの通信だ。
「ボッズー……?」
その光……嫌な予感がした。正義はボッズーに『勇気と二人っきりで話がしたい』そう言って基地に来た。そしてボッズーは『分かったボズよ。ゆっくり話をしてこいボズ! その代わり、もし何かあったら腕時計で呼ぶからなボズ!!』そう言ってくれた。
そんなボッズーから届いた通信……嫌な予感しかしない。その予感は一つ、『デカギライが現れた』そう思えた。
「………」
正義は勇気を追い掛けたかった。しかし、その気持ちを抑え、腕時計を叩くしかなかった。
「ちきしょう……何でこのタイミングなんだ!」
―――――
やはり……正義の予感は当たった。
デカギライが現れたんだ……
「正義!! 大変だボッズー!!」
腕時計を叩いた瞬間に聞こえた言葉。
「出たのか……」
正義は静かにそう聞いた。
「うん……よく分かったなボズ!」
「いや、予感がしてな。で、場所は?」
「それがな、今度は山奥とかじゃないボズ! 町中ボズよ!! 愛から連絡があったんだボズ!! 道路を走っていたパトカーが、爆発したって情報が今出回ってるって!!!」
「そうか……」
正義は拳を握った。行くしかなかった。本当は勇気を追い掛けたいのに。
「分かった。ボッズー、行くぞ……」
それでも行くしかなかった。デカギライが次の被害者を生む前に止めなければならない………正義は腕時計の文字盤を思いっきり叩いた。
「レッツゴー!! ガキセイギッ!!!」