第3話 慟哭 9 ―お前の友は、死であり、恐怖だ―
9
「お前は誰だ! 友を間違えるなとはどういう意味だ! 恐怖? 俺はそんな物と友になったつもりはない!!」
勇気は否定した。『お前の友は、死であり、恐怖だ』と言う声を。だが、再び謎の声は勇気に語り掛ける。
『抵抗するな、受け入れろ、お前の今までの人生は、常に死への恐怖と共に、あったではないか、』
「笑わせるな! そんな事はない!」
勇気は強く首を振る。だが、再び声が……
『自分に嘘をつくな、父が死んだ日に、お前は死への恐怖を知った、その日から恐怖はお前の友となった、恐怖こそ、お前の本質、恐怖こそ、お前の力になる、お前が英雄の力を得られない事、それが、その証拠だ、』
「ほざくなッ!!!」
『受け入れろ、受け入れろ……、受け入れるのなら、お前は民となれる、選ばれし民へと』
「五月蝿い……黙れ、黙れ!!」
声は耳を塞いでも聞こえてくる。気が付けば勇気は声に抗う事に気を取られ、目の前のバケモノ……《デカギライ》を注視出来なくなっていた。勇気は無意識の内に、謎の声の虜になってしまっていたんだ。
『否定するな、受け入れろ』
「違う! 違う! 違う!!」
勇気は耳を押さえ、激しく頭を振った。頭を振ると刺された様な鋭い頭痛が勇気を襲う。
「うぅ………」
勇気は呻きながら背後にあった木に力無く体を預け、地面に座り込んだ。
『否定すれば、する程、お前は、肯定してるのが分からないのか、お前の友は恐怖だ、受け入れろ、受け入れれば、お前は力を得られるのだぞ』
「勝手な事を言うな! 俺の友はそんなんじゃない! 俺に恐怖なんて無い!! そんな力なんていらない!」
『いや、お前の友は恐怖だ、どうしても否定するのならば、今……分からせてやろう』
「分からせる……? 分からせるって何だッ!!!」
勇気は叫んだ。しかし、その問いに答えは返ってこなかった。
「ハハッ! さっきから何を一人でベラベラと喋ってるんだ? 怖いなぁ、もしかしてこの山、幽霊でも出るのか? フハハハ………ん?おっ!」
勇気を嘲笑うデカギライは辺りを見回した。人の気配が増えたんだ。
それは、
「動くな!!」
警官達だった。
「今すぐその少年から離れろ!」
デカギライと勇気に追いついた警官達は、分散して一人一人が木を盾にしながらデカギライを取り囲んでいた。
「君、聞こえるか?」
それは勇気の背後から聞こえた声。五名いる警官の内一人が、勇気が座り込んだ木の真裏に来ていた。
「聞こえているよね? 良いかい? 今から私達があの怪物を惹き付けるから、その間に君は逃げなさい」
「に……逃げる」
勇気の脳内は謎の声に惑わされ、鈍くなっていた。警官に声を掛けられても、その言葉を理解出来ていない。ただ反射的に答えただけ。耳に入った言葉をただそのまま返しだけ。
「そうだ。分かったね?」
勇気の言葉を、警官は了解の意味に捉えてしまった。そして、警官は木の陰から飛び出そうと汗で濡れた銃のグリップを握り直した。
『丁度良い、まずはこの男に、しようか』
謎の声がまた勇気に語り掛けた。
「まずは……?」
謎の声の言葉だけは勇気の脳に届く。警官の言葉は理解出来なくても、謎の声の言葉は理解出来た。
「な……何をする?この人に何を……」
勇気は問い掛けるが、再び、声は勇気の問いに答えなかった。だが、勇気は答えを待つ必要は無かった。何故なら、すぐにその答えは、警官によって示されたのだから。
「お前は誰だ! 友を間違えるなとはどういう意味だ! 恐怖? 俺はそんな物と友になったつもりはない!!」
勇気は否定した。『お前の友は、死であり、恐怖だ』と言う声を。だが、再び謎の声は勇気に語り掛ける。
『抵抗するな、受け入れろ、お前の今までの人生は、常に死への恐怖と共に、あったではないか、』
「笑わせるな! そんな事はない!」
勇気は強く首を振る。だが、再び声が……
『自分に嘘をつくな、父が死んだ日に、お前は死への恐怖を知った、その日から恐怖はお前の友となった、恐怖こそ、お前の本質、恐怖こそ、お前の力になる、お前が英雄の力を得られない事、それが、その証拠だ、』
「ほざくなッ!!!」
『受け入れろ、受け入れろ……、受け入れるのなら、お前は民となれる、選ばれし民へと』
「五月蝿い……黙れ、黙れ!!」
声は耳を塞いでも聞こえてくる。気が付けば勇気は声に抗う事に気を取られ、目の前のバケモノ……《デカギライ》を注視出来なくなっていた。勇気は無意識の内に、謎の声の虜になってしまっていたんだ。
『否定するな、受け入れろ』
「違う! 違う! 違う!!」
勇気は耳を押さえ、激しく頭を振った。頭を振ると刺された様な鋭い頭痛が勇気を襲う。
「うぅ………」
勇気は呻きながら背後にあった木に力無く体を預け、地面に座り込んだ。
『否定すれば、する程、お前は、肯定してるのが分からないのか、お前の友は恐怖だ、受け入れろ、受け入れれば、お前は力を得られるのだぞ』
「勝手な事を言うな! 俺の友はそんなんじゃない! 俺に恐怖なんて無い!! そんな力なんていらない!」
『いや、お前の友は恐怖だ、どうしても否定するのならば、今……分からせてやろう』
「分からせる……? 分からせるって何だッ!!!」
勇気は叫んだ。しかし、その問いに答えは返ってこなかった。
「ハハッ! さっきから何を一人でベラベラと喋ってるんだ? 怖いなぁ、もしかしてこの山、幽霊でも出るのか? フハハハ………ん?おっ!」
勇気を嘲笑うデカギライは辺りを見回した。人の気配が増えたんだ。
それは、
「動くな!!」
警官達だった。
「今すぐその少年から離れろ!」
デカギライと勇気に追いついた警官達は、分散して一人一人が木を盾にしながらデカギライを取り囲んでいた。
「君、聞こえるか?」
それは勇気の背後から聞こえた声。五名いる警官の内一人が、勇気が座り込んだ木の真裏に来ていた。
「聞こえているよね? 良いかい? 今から私達があの怪物を惹き付けるから、その間に君は逃げなさい」
「に……逃げる」
勇気の脳内は謎の声に惑わされ、鈍くなっていた。警官に声を掛けられても、その言葉を理解出来ていない。ただ反射的に答えただけ。耳に入った言葉をただそのまま返しだけ。
「そうだ。分かったね?」
勇気の言葉を、警官は了解の意味に捉えてしまった。そして、警官は木の陰から飛び出そうと汗で濡れた銃のグリップを握り直した。
『丁度良い、まずはこの男に、しようか』
謎の声がまた勇気に語り掛けた。
「まずは……?」
謎の声の言葉だけは勇気の脳に届く。警官の言葉は理解出来なくても、謎の声の言葉は理解出来た。
「な……何をする?この人に何を……」
勇気は問い掛けるが、再び、声は勇気の問いに答えなかった。だが、勇気は答えを待つ必要は無かった。何故なら、すぐにその答えは、警官によって示されたのだから。