第2話 バケモノッッッッッ!!!!! 9 ―希望はアイツがお嫌い―
9
「ほらよ!!」
正義はいつものニカッとした笑顔を浮かべてダウンジャケットのポケットから"ある物"を取り出すと、希望の手に握らせた。
「え……コレって……」
希望は『渡したい物があるんだ!』と正義に呼び出されて『それはいったい何だろう!』とワクワクと期待に胸をふくらませていたのだけれど、手渡された物が"とあるキャラクターの人形"だと知った時、その眉は少し困った。
「ダンボール……ジョーカー……」
「へへっ! ソレ、希望のだろ? 昨日あの男の車ん中で見付けたんだよ! へへっ!」
「あ……う、うん……ぼ、僕のだね。う、うん……」
二人は今、希望のマンションのエントランスに居るのだが、暖色の間接照明で照らされた室内はムードはあるがハッキリとした明かりは無く、尚且つ外は曇り空だから、午前11時過ぎにも関わらず太陽の光も当たらずでかなり薄暗かった。
しかし、エントランスの薄暗さに反して、希望を見詰める正義の笑顔は明るい。希望が困っているとは夢にも思っていないのだろう、ニカッと笑って満足げに腕まで組んでいる。
この明るい表情と、満足げな正義の態度……それを見ていると、希望は本音を話す事は出来なかった。
「ハハっ……ぼ、僕、さ、探してたんだぁ! ダ、ダンボールジョーカー大好き! ハハっ……だって格好良いもん! 正義さんが見付けててくれてたんだね!!」
そう言うと希望は、ダンボールジョーカーの人形をズボンのポケットにしまった。
「へへっ! どうってことねぇよ! それより、昨日渡し忘れちまってごめんな! で、どうだ?昨日はちゃんと眠れたか?」
ニカッと笑う正義の目元は細い。そんな細めた目で見ていると、戸惑う希望の顔も喜んでいる様に見えるのか、正義は希望の表情の変化に全く気付かなかった。
「う、うん、寝れたよ」
「おっ! そうか、そりゃ良かった! 昨日は色々あったからな、希望、悪い夢でも見てなきゃ良いけどって思ってさ!」
「あ……ハハっ、大丈夫だよ!正義さんは心配性だなぁ~! ハハっ……」
希望は空咳の様に笑った。希望は嘘をついた。希望は見たんだ。不気味な"アイツ"が出てくる嫌な夢を……でも、その内容を正義には言えない。
だって、"アイツ"は茶色い髪がクルクルと巻いていて、白い肌に丸くて真っ赤な鼻が特徴的だから。
希望は昔から何故"アイツ"が人気者なのか理解出来なかった。……しかも、そんな大嫌いな"アイツ"にそっくりな奴を昨日は二人も目にしてしまった。
一人は巨大なスクリーンの中から人類を嘲笑ったアイツ、もう一人は大好きな仮面バイカーのくじを引いたら出てきたアイツ……そんな日の夜に"アイツ"の夢を見ない訳がない……でも、その事は正義には言えない。だって、その内の一人は当の本人によって希望の手に戻されてしまったから……
因みに、その嫌ぁな悪夢を払拭する為に、希望はアツガミバットを使って、『せめてゲームの中でだけでもアイツを退治してやろう!』と奮闘していたんだ。
「そっか、そっか、へへっ!」
正義は希望の嘘に全く気付かなかった。そして笑顔を浮かべたまま、正義は話題を変えた。
「で、希望はあの後、ちゃんと警察には行ったのか?」
この質問になら希望は素直に答えられる。
「うん、行ったよ。ちょっと緊張したけどね。でもね、正義さんが言った通りで、警察に居る間はずっとおじさんが付いててくれたんだ。だから我慢出来た!」
「へへっ! そっか、そっか! おじさんもおばさんも心配してたろ?」
「うん、スッゴく!!」
……と、答えた時、希望は思い出した。
― あ…………!!!!
おじさんとの約束を……
「ほらよ!!」
正義はいつものニカッとした笑顔を浮かべてダウンジャケットのポケットから"ある物"を取り出すと、希望の手に握らせた。
「え……コレって……」
希望は『渡したい物があるんだ!』と正義に呼び出されて『それはいったい何だろう!』とワクワクと期待に胸をふくらませていたのだけれど、手渡された物が"とあるキャラクターの人形"だと知った時、その眉は少し困った。
「ダンボール……ジョーカー……」
「へへっ! ソレ、希望のだろ? 昨日あの男の車ん中で見付けたんだよ! へへっ!」
「あ……う、うん……ぼ、僕のだね。う、うん……」
二人は今、希望のマンションのエントランスに居るのだが、暖色の間接照明で照らされた室内はムードはあるがハッキリとした明かりは無く、尚且つ外は曇り空だから、午前11時過ぎにも関わらず太陽の光も当たらずでかなり薄暗かった。
しかし、エントランスの薄暗さに反して、希望を見詰める正義の笑顔は明るい。希望が困っているとは夢にも思っていないのだろう、ニカッと笑って満足げに腕まで組んでいる。
この明るい表情と、満足げな正義の態度……それを見ていると、希望は本音を話す事は出来なかった。
「ハハっ……ぼ、僕、さ、探してたんだぁ! ダ、ダンボールジョーカー大好き! ハハっ……だって格好良いもん! 正義さんが見付けててくれてたんだね!!」
そう言うと希望は、ダンボールジョーカーの人形をズボンのポケットにしまった。
「へへっ! どうってことねぇよ! それより、昨日渡し忘れちまってごめんな! で、どうだ?昨日はちゃんと眠れたか?」
ニカッと笑う正義の目元は細い。そんな細めた目で見ていると、戸惑う希望の顔も喜んでいる様に見えるのか、正義は希望の表情の変化に全く気付かなかった。
「う、うん、寝れたよ」
「おっ! そうか、そりゃ良かった! 昨日は色々あったからな、希望、悪い夢でも見てなきゃ良いけどって思ってさ!」
「あ……ハハっ、大丈夫だよ!正義さんは心配性だなぁ~! ハハっ……」
希望は空咳の様に笑った。希望は嘘をついた。希望は見たんだ。不気味な"アイツ"が出てくる嫌な夢を……でも、その内容を正義には言えない。
だって、"アイツ"は茶色い髪がクルクルと巻いていて、白い肌に丸くて真っ赤な鼻が特徴的だから。
希望は昔から何故"アイツ"が人気者なのか理解出来なかった。……しかも、そんな大嫌いな"アイツ"にそっくりな奴を昨日は二人も目にしてしまった。
一人は巨大なスクリーンの中から人類を嘲笑ったアイツ、もう一人は大好きな仮面バイカーのくじを引いたら出てきたアイツ……そんな日の夜に"アイツ"の夢を見ない訳がない……でも、その事は正義には言えない。だって、その内の一人は当の本人によって希望の手に戻されてしまったから……
因みに、その嫌ぁな悪夢を払拭する為に、希望はアツガミバットを使って、『せめてゲームの中でだけでもアイツを退治してやろう!』と奮闘していたんだ。
「そっか、そっか、へへっ!」
正義は希望の嘘に全く気付かなかった。そして笑顔を浮かべたまま、正義は話題を変えた。
「で、希望はあの後、ちゃんと警察には行ったのか?」
この質問になら希望は素直に答えられる。
「うん、行ったよ。ちょっと緊張したけどね。でもね、正義さんが言った通りで、警察に居る間はずっとおじさんが付いててくれたんだ。だから我慢出来た!」
「へへっ! そっか、そっか! おじさんもおばさんも心配してたろ?」
「うん、スッゴく!!」
……と、答えた時、希望は思い出した。
― あ…………!!!!
おじさんとの約束を……