第4話 王に選ばれし民 17 ―止められるのは何者か―
17
王は瞳が形作られたその時から、既にボッズーを見ていた。輝ヶ丘の高台にいるボッズーを。
そして、王はボッズーをその瞳で捉えながら、ゆっくりと口を開いた。
「人類よ……」
穏やかな口調で発せられたその言葉は、とても意外なもの……
「我を許し賜え……」
それは、贖罪の言葉……
「なに……」
この言葉を聞いたボッズーは目を見張った。宇宙の言葉で話されている様な気分、王の発した言葉の意味がボッズーには全く分からなかった。
「許す……??どういう意味だボズ……」
何故なら、王は侵略者。この世界の敵だ。その敵が、何故許しを乞うのか……ボッズーは王の言葉の意味を考えた。
その答えは一つしか見付からない。
ボッズーが出した答え、それは、侮辱……
― この世界を破滅させる事を許せ……そういう意味かボズ!! 馬鹿にしやがって!!
心の中のボッズーの叫びは、思わずその口から飛び出る。
「馬鹿にしやがって!! そんな事、許せる訳が無いだろボッズー!!」
この叫びを、高台に吹く風が巨大な雲で形作られた王の元へと運んでいく。
「ふっ……」
ボッズーの声を聞いた王は、ふてぶてしくも口元を緩ませた。
そして、
「そう……我は人類にとって許されざる者」
威風堂々の面持ちで、王は認めた。
そして、王は続ける。
「英雄よ……我等の侵略を……止める事が出来ると思っている様だな」
「そうッ………」
『そうだ!絶対に止めてやる!!』ボッズーはそう叫び返しそうになる自分を拳を握って制した。ボッズーは思ったんだ。『これは王の挑発だ……』と。
― 奴等の挑発には乗ってはいけないボズ……
ボッズーは知っている。敵が挑発してくる時には必ずそこには意味がある事を。『その意味を考えずに挑発に乗ってしまえば、敵の策略に自ら嵌まっていく事になる……』そうボッズーは考えていた。
しかし、また別の考えがボッズーの頭をよぎる。
― でも……ここで黙っていて本当に良いのかボズ?
ボッズーは考えた。『きっと自分の声はさっきピエロが正義に仕掛けたみたいに、王の声と共に世界中の人類に届いている筈だ』……と。
― 俺が今ここで黙ったら、世界中の皆はどう感じる?
そして、今更になってボッズーは気付いた。
― ……ん? もしかして? そうか……そういう事か!!
命を侮辱する言葉を吐くピエロに立ち向かい続けていた正義の気持ちに、ボッズーはやっと気付いた。
― 正義は呼び掛けていたんだ。『絶対にお前等を倒す!!』ってピエロに啖呵を切りながら、世界中の人々に『希望を捨てないでくれ!』って……『その希望に自分自身がなるから!』って……でも……正義はまだ眠ってる。今、英雄を代表するのは俺しかいないぞボズ……なら、ここで勝利を誓う言葉を上げるべきじゃないのかボズ?世界中のみんなを励ます言葉を上げるべきじゃないのかボッズー!! いや…………そうしないでどうするんだボッズー!! もし王の目的が俺に言い返させる事だったとしても、俺の言葉が世界中のみんなの希望の種に成るなら、俺は……ヨシッ!!
ボッズーの選択は決まった。
『だったら自分も切るべきだ。王に向かって啖呵を切るべきだ』……と。
だから、ボッズーは叫んだ。
「あぁ! そうだボズ!! 絶対に止めてやるボッズぅぅぅぅッッッ!!」
それは、声の限り、ありったけの声。『喉が枯れようが、潰れようがどーでも良い!!』とボッズーは叫んだ。
しかし、このボッズーの啖呵を聞いた王は……
「そうか……」
白い髭の中に微かに見える唇を再び緩ませただけ。
「何が可笑しいんだボズ!!」
その問いに王は答えない。
「誰が止める……我を誰が止めるのだ……」
風が唸る様な王の囁く声、この問い掛けも再びの挑発とボッズーは解釈した。『王は「誰も自分を止められはしない」と嘲笑うつもりなんだ』……と。
この挑発に切り返す言葉は一つしか無い。
「すぅ~~~ッ!!」
ボッズーは大きく息を吸って言葉を放つ準備を始めた。しかし、その目が王のある変化を捉える。それは、自分を見詰めていた王の瞳が、微かに動き、ボッズーの背後を見た事……
それと同時に、ボッズーの足元の正義の腹が風船の様に膨らみ、更に背後からはさっきのボッズーと同じ様に「すぅ~~~ッ!!」と大きく息を吸う音がした……
「あっ………!!」
その音を聞いたボッズーは、彼が目を覚ました事を知った。
それは、いつも心配ばかりかける友、ボッズーの心の中にいつも希望の花を咲かせてくれる愛すべき友。『我を誰が止める………』王はボッズーにそう聞いた。その答えはこの世で一つ。この世で唯一変わる事の無い、唯一無二の答え……
だから友は叫んだ。
腹にいっぱいの空気を溜めて、爆音上げて王に向かって宣言した。
「俺だよ!!!!」
王は瞳が形作られたその時から、既にボッズーを見ていた。輝ヶ丘の高台にいるボッズーを。
そして、王はボッズーをその瞳で捉えながら、ゆっくりと口を開いた。
「人類よ……」
穏やかな口調で発せられたその言葉は、とても意外なもの……
「我を許し賜え……」
それは、贖罪の言葉……
「なに……」
この言葉を聞いたボッズーは目を見張った。宇宙の言葉で話されている様な気分、王の発した言葉の意味がボッズーには全く分からなかった。
「許す……??どういう意味だボズ……」
何故なら、王は侵略者。この世界の敵だ。その敵が、何故許しを乞うのか……ボッズーは王の言葉の意味を考えた。
その答えは一つしか見付からない。
ボッズーが出した答え、それは、侮辱……
― この世界を破滅させる事を許せ……そういう意味かボズ!! 馬鹿にしやがって!!
心の中のボッズーの叫びは、思わずその口から飛び出る。
「馬鹿にしやがって!! そんな事、許せる訳が無いだろボッズー!!」
この叫びを、高台に吹く風が巨大な雲で形作られた王の元へと運んでいく。
「ふっ……」
ボッズーの声を聞いた王は、ふてぶてしくも口元を緩ませた。
そして、
「そう……我は人類にとって許されざる者」
威風堂々の面持ちで、王は認めた。
そして、王は続ける。
「英雄よ……我等の侵略を……止める事が出来ると思っている様だな」
「そうッ………」
『そうだ!絶対に止めてやる!!』ボッズーはそう叫び返しそうになる自分を拳を握って制した。ボッズーは思ったんだ。『これは王の挑発だ……』と。
― 奴等の挑発には乗ってはいけないボズ……
ボッズーは知っている。敵が挑発してくる時には必ずそこには意味がある事を。『その意味を考えずに挑発に乗ってしまえば、敵の策略に自ら嵌まっていく事になる……』そうボッズーは考えていた。
しかし、また別の考えがボッズーの頭をよぎる。
― でも……ここで黙っていて本当に良いのかボズ?
ボッズーは考えた。『きっと自分の声はさっきピエロが正義に仕掛けたみたいに、王の声と共に世界中の人類に届いている筈だ』……と。
― 俺が今ここで黙ったら、世界中の皆はどう感じる?
そして、今更になってボッズーは気付いた。
― ……ん? もしかして? そうか……そういう事か!!
命を侮辱する言葉を吐くピエロに立ち向かい続けていた正義の気持ちに、ボッズーはやっと気付いた。
― 正義は呼び掛けていたんだ。『絶対にお前等を倒す!!』ってピエロに啖呵を切りながら、世界中の人々に『希望を捨てないでくれ!』って……『その希望に自分自身がなるから!』って……でも……正義はまだ眠ってる。今、英雄を代表するのは俺しかいないぞボズ……なら、ここで勝利を誓う言葉を上げるべきじゃないのかボズ?世界中のみんなを励ます言葉を上げるべきじゃないのかボッズー!! いや…………そうしないでどうするんだボッズー!! もし王の目的が俺に言い返させる事だったとしても、俺の言葉が世界中のみんなの希望の種に成るなら、俺は……ヨシッ!!
ボッズーの選択は決まった。
『だったら自分も切るべきだ。王に向かって啖呵を切るべきだ』……と。
だから、ボッズーは叫んだ。
「あぁ! そうだボズ!! 絶対に止めてやるボッズぅぅぅぅッッッ!!」
それは、声の限り、ありったけの声。『喉が枯れようが、潰れようがどーでも良い!!』とボッズーは叫んだ。
しかし、このボッズーの啖呵を聞いた王は……
「そうか……」
白い髭の中に微かに見える唇を再び緩ませただけ。
「何が可笑しいんだボズ!!」
その問いに王は答えない。
「誰が止める……我を誰が止めるのだ……」
風が唸る様な王の囁く声、この問い掛けも再びの挑発とボッズーは解釈した。『王は「誰も自分を止められはしない」と嘲笑うつもりなんだ』……と。
この挑発に切り返す言葉は一つしか無い。
「すぅ~~~ッ!!」
ボッズーは大きく息を吸って言葉を放つ準備を始めた。しかし、その目が王のある変化を捉える。それは、自分を見詰めていた王の瞳が、微かに動き、ボッズーの背後を見た事……
それと同時に、ボッズーの足元の正義の腹が風船の様に膨らみ、更に背後からはさっきのボッズーと同じ様に「すぅ~~~ッ!!」と大きく息を吸う音がした……
「あっ………!!」
その音を聞いたボッズーは、彼が目を覚ました事を知った。
それは、いつも心配ばかりかける友、ボッズーの心の中にいつも希望の花を咲かせてくれる愛すべき友。『我を誰が止める………』王はボッズーにそう聞いた。その答えはこの世で一つ。この世で唯一変わる事の無い、唯一無二の答え……
だから友は叫んだ。
腹にいっぱいの空気を溜めて、爆音上げて王に向かって宣言した。
「俺だよ!!!!」