第4話 王に選ばれし民 14 ―みんな……俺に力を与えてくれ。そして、聞こえてくる声……―
14
もっと強く………
もっと強くならなきゃ………
俺は………
もっと………
強く………
勇気………
愛………
夢………
優………
ボッズー………
みんな……
俺に………
俺に力を与えてくれ………
-----
正義の救出に成功したボッズーはある場所へ向かう事を決意していた。
『グッタリと眠る正義の体を癒すには、その場所へ行くべきだ……』と何故かそう感じたんだ。
だから太陽に向かって急上昇で飛び上がったボッズーは一気に方向転換、体を斜め下に向け、"上の翼"に取り込んだ風を"下の翼"でジェット噴射が如く噴き出すと、今度は下降へと転じた。
「ケケケケケケケケッ!! 鳥ちゃんの方はバカセイギよりも頭が良いらしいなぁ!! そうだよ! そうだよ! 負け犬はケツ向けて逃げりゃ良いんだよ!!」
遠退いていくボッズーの背中を見ながら、ピエロは唾を吐くように笑った。
ピエロは、ボッズーが恐れをなして逃げ出したと思ったんだ。
でも、それはピエロの勘違いだ。それは傲りとも言う。
確かに敵は強かった。ボッズーも正義も傷付いた。だが、それでもボッズーは負けたつもりなんて無かった。逃げてるつもりも無い。
だって、ボッズーは正義を助けられたのだから。
正義は人類の希望だ。ボッズーはその希望を繋ぎ止める事に成功したんだ。これはボッズーにとって、信念のある後退なんだ。『希望さえあれば、人類は決して"侵略者"などに負けはしない……』、ボッズーはそう信じてるから。
だから、ボッズーはピエロに言い返す事はしない。
どんなに蔑まれようが、ただ黙ってボッズーは飛び続けた。稚拙な嘲笑になど耳を貸してる暇は無いんだ。
『今は、"赤井正義という希望"を、安全な場所まで送り届ける……それが自分の使命だ!!』とボッズーは燃えた。そして『その場所にはきっと、更なる希望が"待っている"んだ!!』と信じて、ボッズーは目的地まで急いだ。
「ケケケケケケケケッ!! 哀れ、哀れ!! 哀れだよぉ~~!! ケケケケケケケケッ!!」
― なんとでも言え……馬鹿にしたかったらすれば良いボズ……
ボッズーは心の中で呟いた。
― 今に見てろ……今に見てろボッズー!!
ボッズーは飛び続ける。加速を増して飛び続ける。
……ほら、もう少しだ。
ビルとビルの隙間の向こう側に、まるで雲みたいにモクモクと繁る葉っぱを生やした大木が見えた。
― ヨシッ!!
ボッズーはここまで来ると、翼の形をビュビューンモードから元の二本の翼へと戻した。『もうビュビューンモードに頼らなくてもOK!』ボッズーはそう判断し、ビュビューンモードの余力だけでビルとビルの隙間を通り抜けた。
― あぁ……やっと着いた…… 輝ヶ丘の大木だボズ!!
ボッズーの顔は安堵の色へと変わる。
体に鞭を打って飛び続け、ボッズーはもうクタクタだった。でも、もう頑張る必要はない。やっと安心出来る場所まで到着したんだ。
「さて……」
ボッズーは着陸の姿勢に入る為に、大木から少し視線を反らし草原を見た。
柔らかそうな草が風に吹かれてソワソワと揺れている。
しかし、その草原を見たボッズーの顔は何故か一瞬暗く曇る。
「なんだよボズ……誰も居ないじゃないか。誰も……」
ガッカリした様子でそう呟くと、ボッズーは大きな翼で羽ばたきながら正義を草原の上へと降ろした。
「ふぅ……疲れたボズ」
そして、ボッズーは辺りを見回す。
ここに来れば、何か正義の体を癒す方法がある筈だとボッズーは思っていた。
それは直感というものだ。だから実際は何をしたら良いのか分からない。でも、必ず何かがある筈だった……
「とりあえず、大木の中に連れて行くかボズ……。でも、それには腕時計の力が無いと……」
そう言うとボッズーは正義の手首を掴んで、腕時計のベルトの部分をいじり始めた。腕時計を外す為だ。
「う~ん……」
しかし、出来ない。
「そっか……そうだったボズね。コレは装着者自身じゃないと外せないんだったボズよね」
ため息と共にボッズーは言葉を吐き出し、再びガッカリとした表情に変わる。
実は、この時点でボッズーの予想は一つ外れていたんだ。
ボッズーは『輝ヶ丘の大木が立つこの高台に来れば、勇気や愛が自分達を待っていてくれている筈!』……そう考えていた。
でも、その予想は外れた。
だからボッズーはさっき『誰もいないじゃないか』と独り言を言ったんだ。
― 勇気達さえいれば、腕時計の力を借りれるのにボズ……
「仕方ない……」
気を失った正義に無理をさせたくは無かった。しかし、大木の中へと連れていくにはそうするしか無い……
「正義……起きてくれ。輝ヶ丘の大木に戻ってきたんだぞ。あの中に行こうボズ!!」
ボッズーが呼び掛けると援護する様に草原の草が正義の頬をくすぐった。
ボッズーも正義の体を揺さぶる。
「正義、起きてッ!!」
………
………
………
…………ダメだ。
全く目覚める気配が無い。
やはり正義が受けたダメージは大き過ぎたんだ。
「ケケケケケケケケッ!! 少しやり過ぎちゃったなぁ~!! あぁ~後で王に怒られちゃう! ケケッ! ソイツが調子に乗るからだよ!! 再起不能、もう無理ッ!! おわりぃ~~~」
ピエロがまた笑った。
スクリーンから大木までは遠く離れている筈なのに、ピエロの不快な声は相変わらず鮮明にボッズーの耳へと届く。
― そんな事ない……そんな訳が無いボズ。正義はこんなところで終わる奴じゃ無いボズ……
そう心の中で呟いて、ボッズーがもう一度正義に呼び掛けようとした時、
「終わりではない」
もっと強く………
もっと強くならなきゃ………
俺は………
もっと………
強く………
勇気………
愛………
夢………
優………
ボッズー………
みんな……
俺に………
俺に力を与えてくれ………
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正義の救出に成功したボッズーはある場所へ向かう事を決意していた。
『グッタリと眠る正義の体を癒すには、その場所へ行くべきだ……』と何故かそう感じたんだ。
だから太陽に向かって急上昇で飛び上がったボッズーは一気に方向転換、体を斜め下に向け、"上の翼"に取り込んだ風を"下の翼"でジェット噴射が如く噴き出すと、今度は下降へと転じた。
「ケケケケケケケケッ!! 鳥ちゃんの方はバカセイギよりも頭が良いらしいなぁ!! そうだよ! そうだよ! 負け犬はケツ向けて逃げりゃ良いんだよ!!」
遠退いていくボッズーの背中を見ながら、ピエロは唾を吐くように笑った。
ピエロは、ボッズーが恐れをなして逃げ出したと思ったんだ。
でも、それはピエロの勘違いだ。それは傲りとも言う。
確かに敵は強かった。ボッズーも正義も傷付いた。だが、それでもボッズーは負けたつもりなんて無かった。逃げてるつもりも無い。
だって、ボッズーは正義を助けられたのだから。
正義は人類の希望だ。ボッズーはその希望を繋ぎ止める事に成功したんだ。これはボッズーにとって、信念のある後退なんだ。『希望さえあれば、人類は決して"侵略者"などに負けはしない……』、ボッズーはそう信じてるから。
だから、ボッズーはピエロに言い返す事はしない。
どんなに蔑まれようが、ただ黙ってボッズーは飛び続けた。稚拙な嘲笑になど耳を貸してる暇は無いんだ。
『今は、"赤井正義という希望"を、安全な場所まで送り届ける……それが自分の使命だ!!』とボッズーは燃えた。そして『その場所にはきっと、更なる希望が"待っている"んだ!!』と信じて、ボッズーは目的地まで急いだ。
「ケケケケケケケケッ!! 哀れ、哀れ!! 哀れだよぉ~~!! ケケケケケケケケッ!!」
― なんとでも言え……馬鹿にしたかったらすれば良いボズ……
ボッズーは心の中で呟いた。
― 今に見てろ……今に見てろボッズー!!
ボッズーは飛び続ける。加速を増して飛び続ける。
……ほら、もう少しだ。
ビルとビルの隙間の向こう側に、まるで雲みたいにモクモクと繁る葉っぱを生やした大木が見えた。
― ヨシッ!!
ボッズーはここまで来ると、翼の形をビュビューンモードから元の二本の翼へと戻した。『もうビュビューンモードに頼らなくてもOK!』ボッズーはそう判断し、ビュビューンモードの余力だけでビルとビルの隙間を通り抜けた。
― あぁ……やっと着いた…… 輝ヶ丘の大木だボズ!!
ボッズーの顔は安堵の色へと変わる。
体に鞭を打って飛び続け、ボッズーはもうクタクタだった。でも、もう頑張る必要はない。やっと安心出来る場所まで到着したんだ。
「さて……」
ボッズーは着陸の姿勢に入る為に、大木から少し視線を反らし草原を見た。
柔らかそうな草が風に吹かれてソワソワと揺れている。
しかし、その草原を見たボッズーの顔は何故か一瞬暗く曇る。
「なんだよボズ……誰も居ないじゃないか。誰も……」
ガッカリした様子でそう呟くと、ボッズーは大きな翼で羽ばたきながら正義を草原の上へと降ろした。
「ふぅ……疲れたボズ」
そして、ボッズーは辺りを見回す。
ここに来れば、何か正義の体を癒す方法がある筈だとボッズーは思っていた。
それは直感というものだ。だから実際は何をしたら良いのか分からない。でも、必ず何かがある筈だった……
「とりあえず、大木の中に連れて行くかボズ……。でも、それには腕時計の力が無いと……」
そう言うとボッズーは正義の手首を掴んで、腕時計のベルトの部分をいじり始めた。腕時計を外す為だ。
「う~ん……」
しかし、出来ない。
「そっか……そうだったボズね。コレは装着者自身じゃないと外せないんだったボズよね」
ため息と共にボッズーは言葉を吐き出し、再びガッカリとした表情に変わる。
実は、この時点でボッズーの予想は一つ外れていたんだ。
ボッズーは『輝ヶ丘の大木が立つこの高台に来れば、勇気や愛が自分達を待っていてくれている筈!』……そう考えていた。
でも、その予想は外れた。
だからボッズーはさっき『誰もいないじゃないか』と独り言を言ったんだ。
― 勇気達さえいれば、腕時計の力を借りれるのにボズ……
「仕方ない……」
気を失った正義に無理をさせたくは無かった。しかし、大木の中へと連れていくにはそうするしか無い……
「正義……起きてくれ。輝ヶ丘の大木に戻ってきたんだぞ。あの中に行こうボズ!!」
ボッズーが呼び掛けると援護する様に草原の草が正義の頬をくすぐった。
ボッズーも正義の体を揺さぶる。
「正義、起きてッ!!」
………
………
………
…………ダメだ。
全く目覚める気配が無い。
やはり正義が受けたダメージは大き過ぎたんだ。
「ケケケケケケケケッ!! 少しやり過ぎちゃったなぁ~!! あぁ~後で王に怒られちゃう! ケケッ! ソイツが調子に乗るからだよ!! 再起不能、もう無理ッ!! おわりぃ~~~」
ピエロがまた笑った。
スクリーンから大木までは遠く離れている筈なのに、ピエロの不快な声は相変わらず鮮明にボッズーの耳へと届く。
― そんな事ない……そんな訳が無いボズ。正義はこんなところで終わる奴じゃ無いボズ……
そう心の中で呟いて、ボッズーがもう一度正義に呼び掛けようとした時、
「終わりではない」