第3話 空が割れた日 9 ―あれから正義に何が起こったか―
9
時は少し前に遡る……
一度目の光と轟音が町を襲っている最中、赤井正義は不思議な世界にいた。
それは、真っ白な世界、白だけの世界、白しかない世界……
「な……なんだ? ……なんだよこれ!! どこだ……おいッ! ボッズー!! 希望!!」
正義は叫び、辺りを見回した。
………
………
………しかし、ここから始めても、彼に一体何が起こったのか分からないだろう。
だから、もう少し時を遡らせよう。一度目の光と轟音が、町を襲ったその瞬間に……
―――――
「まさか!! まさかこの音はっ!!」
赤井正義は轟音を聞いた瞬間に希望の頭から手を離し、大木を回り輝ヶ丘の空を見上げた。
「嘘だろ! まさか!! そんな!!! なんでだよ……まだ時間には早ぇだろうが!!!!」
正義の目に、空をヒビ割る様に走る稲妻に似た光の筋が映った。
「うわっ!!」
その光はカッとまたたき、正義を、町全体を照らした。
「ち……くしょ……」
光を浴びた正義は、咄嗟に顔を伏せ両腕で顔を隠し目を閉じた。
目映い光に包まれた正義の鼓膜を、轟音が激しく震わせ、激しい耳鳴りが起こる。それはまるで、警告音の様に……
「何なんだ……クッソッッッ………」
その時、正義は不思議な感覚に襲われた。
「え? な……なんだ!!!」
激しい風が足の先から脳天までを一気に吹き上げ、魂と肉体が切り離されそうになる……そんな感覚に。
「え………なっ!! クッ……クソッ!! 体が……体がぁ……重い!!」
更に、それだけではない……
地球の重力は一瞬にして変わってしまったのであろうか。正義の四肢は重たく、そして固くなってしまった。手も足も全く動かせられない。まるで重力という逆らえない存在に押さえ付けられているかの様に。
「あ……あぁッッッ!!!」
魂ごと吹き飛ばされる程の激しい風を受ける感覚と、体の自由を無くす程の強い重力を受ける感覚、二つが同時に正義を襲う。
「う……っ………く……うッッ! うわぁぁッッッ!!!」
正義は襲い来る二つの感覚を強引に振り払おうと全身に力を込めた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『力いっぱいに無理矢理にでも体を動かしてやるぞ!!』と、正義は気合いを込めて雄叫びをあげる。
「く……っ………うごぉ……けぇぇぇぇ!!! ッッッ!!!」
交差した両腕に全力を集中させると、右手の人差し指の先がピクリと動いた。
「もっと………もっとだぁ……!!!!」
更に中指、薬指と動き出す。
「もっと! もっとぉぉぉ!!!!」
右手の全ての指が動いた。連動しているのか、左手の指も。
正義は確信した。
― 行けるッ!!!
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
爆発音の様な雄叫びをあげながら、正義は顔の前で交差した両腕を開いた。
すると、途端に体が軽くなる。
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
自由を取り戻した正義がゆっくりと目を開いた時、
「えっ…………」
そこは輝ヶ丘ではなかった……
時は少し前に遡る……
一度目の光と轟音が町を襲っている最中、赤井正義は不思議な世界にいた。
それは、真っ白な世界、白だけの世界、白しかない世界……
「な……なんだ? ……なんだよこれ!! どこだ……おいッ! ボッズー!! 希望!!」
正義は叫び、辺りを見回した。
………
………
………しかし、ここから始めても、彼に一体何が起こったのか分からないだろう。
だから、もう少し時を遡らせよう。一度目の光と轟音が、町を襲ったその瞬間に……
―――――
「まさか!! まさかこの音はっ!!」
赤井正義は轟音を聞いた瞬間に希望の頭から手を離し、大木を回り輝ヶ丘の空を見上げた。
「嘘だろ! まさか!! そんな!!! なんでだよ……まだ時間には早ぇだろうが!!!!」
正義の目に、空をヒビ割る様に走る稲妻に似た光の筋が映った。
「うわっ!!」
その光はカッとまたたき、正義を、町全体を照らした。
「ち……くしょ……」
光を浴びた正義は、咄嗟に顔を伏せ両腕で顔を隠し目を閉じた。
目映い光に包まれた正義の鼓膜を、轟音が激しく震わせ、激しい耳鳴りが起こる。それはまるで、警告音の様に……
「何なんだ……クッソッッッ………」
その時、正義は不思議な感覚に襲われた。
「え? な……なんだ!!!」
激しい風が足の先から脳天までを一気に吹き上げ、魂と肉体が切り離されそうになる……そんな感覚に。
「え………なっ!! クッ……クソッ!! 体が……体がぁ……重い!!」
更に、それだけではない……
地球の重力は一瞬にして変わってしまったのであろうか。正義の四肢は重たく、そして固くなってしまった。手も足も全く動かせられない。まるで重力という逆らえない存在に押さえ付けられているかの様に。
「あ……あぁッッッ!!!」
魂ごと吹き飛ばされる程の激しい風を受ける感覚と、体の自由を無くす程の強い重力を受ける感覚、二つが同時に正義を襲う。
「う……っ………く……うッッ! うわぁぁッッッ!!!」
正義は襲い来る二つの感覚を強引に振り払おうと全身に力を込めた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『力いっぱいに無理矢理にでも体を動かしてやるぞ!!』と、正義は気合いを込めて雄叫びをあげる。
「く……っ………うごぉ……けぇぇぇぇ!!! ッッッ!!!」
交差した両腕に全力を集中させると、右手の人差し指の先がピクリと動いた。
「もっと………もっとだぁ……!!!!」
更に中指、薬指と動き出す。
「もっと! もっとぉぉぉ!!!!」
右手の全ての指が動いた。連動しているのか、左手の指も。
正義は確信した。
― 行けるッ!!!
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
爆発音の様な雄叫びをあげながら、正義は顔の前で交差した両腕を開いた。
すると、途端に体が軽くなる。
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
自由を取り戻した正義がゆっくりと目を開いた時、
「えっ…………」
そこは輝ヶ丘ではなかった……