第2話 絶望を希望に変えろ!! 11 ―このとき、英雄はいるのだと僕は知った―
11
パサリ……
目映い光が消えた時、男の子の手足を縛っていた縄が二本同時に床へ落ちた。
きつく縛れていた筈の縄が、いとも簡単に……
男の子も縛られている感覚が無くなったのは分かっても、何が起こったのかが分からず、縛られた格好のまま後ろに立つ少年へ不思議そうな顔を向けた。
「へへっ! 一丁上がりだぜ! スゴいだろ~!」
少年はそんな男の子に向かって縄を持ち上げて見せた。
「ほら、取れたぜ!」
その表情は少しドヤッとしている。
その縄を見た男の子は一瞬驚いて、固まった。
でも、ドヤドヤとニンマリとした笑顔を浮かべ続ける少年の顔が段々面白く感じてきたのか、徐々に表情が緩み始め、遂には
「ぷはぁ!」
と吹き出した。
その笑顔は男の子が少年に対して安心したという事の表れだった。男の子が笑顔を見せたのは縄が取れた安堵感もあっただろう、でも一番は少年の笑顔だ。少年の、優しさと慈愛に満ちた太陽の様な笑顔は、男の子の心に希望の花を咲かせたんだ。
その笑顔を見た時、少年の瞳からは自然と涙が溢れた。
傷付いた筈のこの男の子に笑顔が戻った事は、少年にとって涙するほど嬉しい事だった。
少年はその涙を手の甲で拭うと、その涙をじっと見詰めて、男の子のすぐ目の前に回り込んで膝をついて座った。
そして、手に持った縄を床に置くと、男の子の背中にそっと腕を回して抱き起こし、自分の気持ちを男の子へ贈る様に両手でぎゅっと抱き締める。
少年は思った。
― この子の笑顔は、もう決して無くしちゃいけない………かけがえない宝物だ
「良かった……笑えるな。良かった……」
少年の温かいぬくもりと優しく囁くその声に男の子の瞳も自然と潤んだ。
流れた涙が頬を伝い、落ちた涙が少年のダウンジャケットを濡らす。
この……ほんの二、三秒程の抱擁を彼らは一生涯忘れる事は無い……
彼ら二人の友情が始まる、大切な想い出となるのだから……
「さて……そろそろ出ようか」
少年は男の子の頬から顔を離した。
男の子は「うん……」と頷くと、涙を拭って少年の目を見詰めた。
か細い声で男の子は少年に問い掛ける。
「でも……出るって、どうやって?あの人達はまだいるんでしょ?」
「あの人達?」
少年の頭に『もしやまだ捕まっている人がいるのか?』という考えがよぎったが、男の子の顔に恐れの二文字が再び浮かび上がっているのを見ると、その言葉が誰を指しているのかを知った。
「あの三人組の事か、それなら大丈夫!俺の友達が戦ってくれてるよ!そうだなぁ、もう今頃やっつけてぇ……」
ドゴンッ!!
爆音と共に部屋が揺れた。
「な……なんだ?」
少年は驚いて天井を見る。天井から吊り下げられた電球がゆらゆらと揺れているのが少年の視界に入った。
「この音、さっきも聞こえたよ。お兄さんが入ってくる前に」
「俺が入ってくる前? あっ……」
少年は膝を打った。
「そうか、アイツまた天井に穴を開けやがっ……」そこまで言って少年は黙った。
少年の顔は見る見る内に曇り始めた。
少年の耳には聞こえたんだ。人間の走る足音が。その足音はこちらに向かって来ている……
少年は男の子を再び抱き寄せると、急いで長テーブルの下へ押し入れた。
「え……なに?」
驚く男の子に、
しっーー!
少年は人差し指を立てて見せた。
その意味が分かったのか、男の子はゴクリと生唾を飲み込んだ。
バタンッ……と音を立てて部屋の扉が開く音が聞こえた。
少年はテーブルの下から滑り出るとさっきまで男の子を縛っていた縄の"切れ端"を掴んだ。
パサリ……
目映い光が消えた時、男の子の手足を縛っていた縄が二本同時に床へ落ちた。
きつく縛れていた筈の縄が、いとも簡単に……
男の子も縛られている感覚が無くなったのは分かっても、何が起こったのかが分からず、縛られた格好のまま後ろに立つ少年へ不思議そうな顔を向けた。
「へへっ! 一丁上がりだぜ! スゴいだろ~!」
少年はそんな男の子に向かって縄を持ち上げて見せた。
「ほら、取れたぜ!」
その表情は少しドヤッとしている。
その縄を見た男の子は一瞬驚いて、固まった。
でも、ドヤドヤとニンマリとした笑顔を浮かべ続ける少年の顔が段々面白く感じてきたのか、徐々に表情が緩み始め、遂には
「ぷはぁ!」
と吹き出した。
その笑顔は男の子が少年に対して安心したという事の表れだった。男の子が笑顔を見せたのは縄が取れた安堵感もあっただろう、でも一番は少年の笑顔だ。少年の、優しさと慈愛に満ちた太陽の様な笑顔は、男の子の心に希望の花を咲かせたんだ。
その笑顔を見た時、少年の瞳からは自然と涙が溢れた。
傷付いた筈のこの男の子に笑顔が戻った事は、少年にとって涙するほど嬉しい事だった。
少年はその涙を手の甲で拭うと、その涙をじっと見詰めて、男の子のすぐ目の前に回り込んで膝をついて座った。
そして、手に持った縄を床に置くと、男の子の背中にそっと腕を回して抱き起こし、自分の気持ちを男の子へ贈る様に両手でぎゅっと抱き締める。
少年は思った。
― この子の笑顔は、もう決して無くしちゃいけない………かけがえない宝物だ
「良かった……笑えるな。良かった……」
少年の温かいぬくもりと優しく囁くその声に男の子の瞳も自然と潤んだ。
流れた涙が頬を伝い、落ちた涙が少年のダウンジャケットを濡らす。
この……ほんの二、三秒程の抱擁を彼らは一生涯忘れる事は無い……
彼ら二人の友情が始まる、大切な想い出となるのだから……
「さて……そろそろ出ようか」
少年は男の子の頬から顔を離した。
男の子は「うん……」と頷くと、涙を拭って少年の目を見詰めた。
か細い声で男の子は少年に問い掛ける。
「でも……出るって、どうやって?あの人達はまだいるんでしょ?」
「あの人達?」
少年の頭に『もしやまだ捕まっている人がいるのか?』という考えがよぎったが、男の子の顔に恐れの二文字が再び浮かび上がっているのを見ると、その言葉が誰を指しているのかを知った。
「あの三人組の事か、それなら大丈夫!俺の友達が戦ってくれてるよ!そうだなぁ、もう今頃やっつけてぇ……」
ドゴンッ!!
爆音と共に部屋が揺れた。
「な……なんだ?」
少年は驚いて天井を見る。天井から吊り下げられた電球がゆらゆらと揺れているのが少年の視界に入った。
「この音、さっきも聞こえたよ。お兄さんが入ってくる前に」
「俺が入ってくる前? あっ……」
少年は膝を打った。
「そうか、アイツまた天井に穴を開けやがっ……」そこまで言って少年は黙った。
少年の顔は見る見る内に曇り始めた。
少年の耳には聞こえたんだ。人間の走る足音が。その足音はこちらに向かって来ている……
少年は男の子を再び抱き寄せると、急いで長テーブルの下へ押し入れた。
「え……なに?」
驚く男の子に、
しっーー!
少年は人差し指を立てて見せた。
その意味が分かったのか、男の子はゴクリと生唾を飲み込んだ。
バタンッ……と音を立てて部屋の扉が開く音が聞こえた。
少年はテーブルの下から滑り出るとさっきまで男の子を縛っていた縄の"切れ端"を掴んだ。