第2話 絶望を希望に変えろ!! 6 ―さぁ救出作戦の始まりだ―
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少年とタマゴは囚われた子供の救出作戦を開始した。
「もう少し、もう少しだボッズー」
辺りは依然として暗闇に包まれている。少年はタマゴに誘導されながら、子供が囚われた部屋へと近付いていった。
右手を自分の体の右側にある壁に沿わせながら、足音を立てぬ様に静かに、それでいて少し足早に……
左手の腕時計から発せられる光を懐中電灯代わり出来たが、工場の外にはチョウがいる、彼に光を見られたら怪しまれると思い、少年は体の右側に腕を巻く様にしてダウンジャケットの中に隠していた。
「着いたボズよ……」
コツン……
タマゴの声が聞こえると同時に、少年の左靴の爪先が固い感触に当たった。
子供が囚われた部屋の外壁だ。
少年はその爪先の感触を頼りにして右手を部屋の外壁へと移動させた。
「ここから……」
「シーッ……そっちは喋るなボズ。俺が誘導する。そこから、お前の足なら大股で五歩だボズ。五歩進んだら、そこに部屋の扉があるボズ」
少年はコクリと頷き返して、タマゴの誘導通りに進み始めた。
さっきと同じく右手を壁に沿わせて、
一歩……二歩……三歩……四歩……五歩
タマゴの指示通りの五歩目。
少年は右手で壁をまさぐった。
どうやらタマゴの見立てよりも少年の足は短かった様だ。半歩先に扉があった。
「兄貴はまだ中にいるボッズー。俺が誘い出す。それまですぐ近くで待機しててくれボズ」
少年はまた無言でコクリと頷くと、さっきの動きを逆再生する様に、一歩……二歩……三歩……後ろへ下がった。
背中を壁に着けて、顔を扉へ向ける。
待機の姿勢は整った。
「兄貴の野郎……どうやら飯でも食ってるみたいボズね。椅子に座ってカップ麺でもすすってる感じだ」
タマゴがリーダー格の男の状況を説明すると、少年は腕時計を右手で隠しながら自分の顔に近付けた。
「あの子は……無事か?」
少年の囁くような質問。
「おっとと……喋るなって! でも、まだ大丈夫ボズよ。少しだけど動いてるボズ。縛られてるのは変わらないけど、大丈夫、まだ生きてるボズよ」
このタマゴの回答に、少年は思った。
― "生きてる"……こんな当たり前の事をなんで確かめなきゃいけないんだ
少年は腕を元の位置へと戻すと、タマゴに向かってまた無言で頷いた。
「少しだけ待っててくれボズな、まずはチョウの方に行くボズ。ちょっと面白いことを思い付いたんだボッズー。アイツを使って、兄貴を呼び出すボズよ! 大騒ぎを起こすボズ!」
タマゴがそう言うと、少年の腕時計の光は消えた。
タマゴが通信を切ったんだ。
少年とタマゴは囚われた子供の救出作戦を開始した。
「もう少し、もう少しだボッズー」
辺りは依然として暗闇に包まれている。少年はタマゴに誘導されながら、子供が囚われた部屋へと近付いていった。
右手を自分の体の右側にある壁に沿わせながら、足音を立てぬ様に静かに、それでいて少し足早に……
左手の腕時計から発せられる光を懐中電灯代わり出来たが、工場の外にはチョウがいる、彼に光を見られたら怪しまれると思い、少年は体の右側に腕を巻く様にしてダウンジャケットの中に隠していた。
「着いたボズよ……」
コツン……
タマゴの声が聞こえると同時に、少年の左靴の爪先が固い感触に当たった。
子供が囚われた部屋の外壁だ。
少年はその爪先の感触を頼りにして右手を部屋の外壁へと移動させた。
「ここから……」
「シーッ……そっちは喋るなボズ。俺が誘導する。そこから、お前の足なら大股で五歩だボズ。五歩進んだら、そこに部屋の扉があるボズ」
少年はコクリと頷き返して、タマゴの誘導通りに進み始めた。
さっきと同じく右手を壁に沿わせて、
一歩……二歩……三歩……四歩……五歩
タマゴの指示通りの五歩目。
少年は右手で壁をまさぐった。
どうやらタマゴの見立てよりも少年の足は短かった様だ。半歩先に扉があった。
「兄貴はまだ中にいるボッズー。俺が誘い出す。それまですぐ近くで待機しててくれボズ」
少年はまた無言でコクリと頷くと、さっきの動きを逆再生する様に、一歩……二歩……三歩……後ろへ下がった。
背中を壁に着けて、顔を扉へ向ける。
待機の姿勢は整った。
「兄貴の野郎……どうやら飯でも食ってるみたいボズね。椅子に座ってカップ麺でもすすってる感じだ」
タマゴがリーダー格の男の状況を説明すると、少年は腕時計を右手で隠しながら自分の顔に近付けた。
「あの子は……無事か?」
少年の囁くような質問。
「おっとと……喋るなって! でも、まだ大丈夫ボズよ。少しだけど動いてるボズ。縛られてるのは変わらないけど、大丈夫、まだ生きてるボズよ」
このタマゴの回答に、少年は思った。
― "生きてる"……こんな当たり前の事をなんで確かめなきゃいけないんだ
少年は腕を元の位置へと戻すと、タマゴに向かってまた無言で頷いた。
「少しだけ待っててくれボズな、まずはチョウの方に行くボズ。ちょっと面白いことを思い付いたんだボッズー。アイツを使って、兄貴を呼び出すボズよ! 大騒ぎを起こすボズ!」
タマゴがそう言うと、少年の腕時計の光は消えた。
タマゴが通信を切ったんだ。