▼詳細検索を開く
作者: ビーグル
序章 ―始まりの日―
 6年前、小学5年生の俺は不思議な男の子と出会った。

 その男の子は突然降った大雨の中、かがやきがおかの大木の下で寂しそうに座っていた。

 輝ヶ丘の大木とは、俺の故郷、《かがやきがおか》にある山の中腹ちゅうふくの高台に立つ大きな大きな木の事だ。
 それはそれは大きな木だから、町のどこからでもその姿を見る事が出来て、町の人達からは「守り神様」や「守護神様」と呼ばれていたりもする。

 当時の俺は、公園で遊んでから、駄菓子屋へ行って、それから輝ヶ丘の大木の近くで遊ぶ……そんな毎日を繰り返していた。
 その日も俺は友達と一緒に大木の立つ高台に行った。「んじゃ、鬼ごっこでもしようか!」なんて話していると、天気予報でも言ってなかった突然の大雨が降り出した。
 慌てた俺たちは雨宿りをしようと大木の下に駆け込んだ。

 そして、男の子と出会ったんだ。

 友達と一緒だったのだから、ひとりじゃない。

 いつも一緒に遊んでる同級生の青木あおき勇気ゆうきと、幼稚園からの幼馴染の桃井ももいあい、学年は違うが何故か気が合う黄島きじまゆめ、最後に弟みたいに可愛がっていた1番年下の緑川みどりかわまさる、いつもの仲間と一緒だった。

 その男の子は初めて見た子だったから、はじめは誰も話し掛けようとはしなかった。けど、その子があまりにも寂しそうな顔をしていたから、俺は話し掛けてみる事にした。
 話し掛けてみると、俺たちはすぐにその男の子と友達になれた。友達が増えると、俺達はうずうずしてきてしまって、気が付けば雨宿りをしていた筈なのに、雨も気にせず鬼ごっこをして遊んでいた。


 それから……


 ひとしきり遊んだ後、男の子は不思議な事を俺たちに言ったんだ。

「6年後の2月15日の夕方17時、空が割れ、世界に破滅をもたらす王が現れる」

……と。

 そして、もう一つ。

「私は君達に英雄になってもらいたい。君達に世界を救ってもらいたいんだ」

……と。
Twitter