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作者: タアアタ
残酷な描写あり
第19話 舞台を作ろう
人に最低限必要な空間とはなんだろうか?
まず足を延ばして寝ることの出来る空間から始まる。
この空間が終わりを告げた時、人は立ち上がって高さを得る。
やがて歩き回り、寝ることが出来る空間から一時去る。
たったこれだけでは足りないと、空腹感を得る。
自分という空間を保つために他を空虚にする必要が出てくる。
どのような食べ物であれ食べて空間を保つ。
人はそうやって生きていく生き物だ。
その他にも自分を自分らしくとみせる空間も要る。
こうしてどんどんと自分の空間が脹れあがっていくのを成長と呼ぶか、
誇大妄想と呼ぶかは知らないが、人は成長する。
何度となく、拡大しては縮小を繰り返しながら生きている。
一日の最後には眠る、その時、最少の空間となる。
一日という拡大した空間を寝ているところからはじめて、
やがて寝ているところに折りたたんでいく、
そうやって想像は続いていく、これを守っていれば大概のことは、
循環していくのであるが、循環が立たれる瞬間が来る。
人は自らが動く空間を制限された時、強く反発する。
自由をもとめて働いているのに、労働に自由を奪われることは恐怖だ、
しかし労働という空間の居心地がよければ人はそれを続ける。
問題は労働の居心地を確かめることが出来ない人々である。
彼らは悪文である。
本来なら善をおこなえば正常に回っているはずの社会において、
善以外の行動を取ることで不当の利益をあげるものがいる。
それがステータスだと言ってはばからないものが要る。
いつしか寝て起きて寝るというこの三つすら奪おうとする。
人は寝て起きて寝る生き物である。起きること、寝ること、
寝ていることを否定されては生きてはいけない。
だから人は寝る。自らの居場所を再確認するために。
寝ている場所全てが自分の物であればとてもよいことである。
にもかかわらず、寝ている場所が保たれていないことすらある。
文士崩れにとって寝て起きて寝ることがままならなくなった時、
それは人間を辞めなければならない時を表わしているのであり、
人間を辞めたものは悪文となり、やがて悪竜の肉体となっていく。
世の中は善では回らない、
寝ている誰かを起こさなければ始まらないというがごとくに、
連続して続いていく、悪を為さねばならない時がくる。
眠りについたすべての人を叩き起こすものが通りを歩いている。
鐘を打ち鳴らして時間を決めたものが走り去っていく。
時間は決まった、すべては時間によって調節されていく、
スピードが全てになり、すべてがスピードに変わっていく。
恐るべきペースでなされるそれが世界ならいったいなんと言えばいいだろう。
寝て起きて寝ることを何人も早めることは出来ないのに。
人は寝て起きて寝ることを早くしようと努力してやまない、
眼よ覚めろ、気よ冴えよ、願わくばすべてのものを叩き起こせ、
悪竜よ、悪竜よ、悪竜よ。
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