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作者: タアアタ
残酷な描写あり
第18話 三世
クシ王は一等文士に船を与えた、
この言葉だけが重要なのだ、
かくてトンベンマガスガトリクト二世の子種は、
海を越えてゆくことが出来るようになった。
 もともと、小さな国家間の争いだけでは使える代物でもない、
もっと大きな戦いで扱ってこそ価値が出てくるものなのだ。
とはいえ、利用価値はそれだけでは無いはずだ。
「トンベンマガスガトリクト三世よ、吐き出せ悪文を」
悪文こそがこの世界を肥し、耕す力そのものである。
悪文を始めよう。
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「さんにんそろってなかよしこよし」
「けんかしたおこったなかまわれ」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「さんにんそろってなぐりあい」
「いたくていたくてダメージだ」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「さんにんそろってにげだした」
「さんにんからさんにんそろって逃げだした」
「だから六人になった」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「にげた三人を追いかける三人」
「それを見守る三人で九人になった」
「人は増えたりしないのに」
「みたりきいたりはなしたりしてふえた」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「ついに三〇人になっちゃった」
「だれがどの誰か分からないよ」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「それぞれ違うからわからない」
「やることも為すこともてんで違う」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」
「ついに宇宙を覆うほどふ-えた」
「それをみるひとによって永遠に増え続ける」
「それをきくひとによってさらに増え続ける」
「まーちゃんみーちゃんめーちゃん」

悪文はお終いを嫌う、悪竜もお終いを嫌う、
これで留めとならないのは永遠に増え続けるからだ、
キャラクターの考え方も歩き方も癖もすべて、
永遠に増え続けていって管理が難しくなる。
管理できないものは再び暴れ出す。
そのチカラが恐ろしい。
人々は自らが作りだした力を制御できない、
悪竜トンベンマガスガトリクト三世も同じ、
何百回でも作りだすことが叶うそれは、
何万度でも人類の前に立ちはだかるものだ。
何万世となったとき、はたしていかなものとなるのか?
想像だにしない質と量と数でしめられた空間だけが残る。
その空間を空虚にできる力こそが人類に余暇をもたらす、
自分の身が守れない状況に置かれた人は、
無限の旅人になってやがて空間を得る。
空間を得ることが許されないことは罪作りである。
空間を得ることを罰するものは奴隷を欲し続ける。
生きる事は空間を得ることから始まるというのに、
人間は空間を得ることに罰を与えた、すべてに。
やがて知るようになる。
すべてを罰しているに等しいことを。
すべてを罰することは叶わないということを。
空間こそが私たちならば、
わたし達を殺すものは死そのものであり、
空間が無くなってしまえば、
なにものも育つ余地が失われてしまうのだから。
人間は永遠に空間を求め続けなければならない生き物なのだ。
それこそが人間のより良き闘争となる。
無限の空間を求める、やがて堅実な空間となるそれを、
そのために指を振るって人文を残していく、
人は文士に空間の維持を求める、求め続ける。
そして空間を必要とし続ける。もっと広く、もっと大きくと。
文士はその土台を築きつづけなければならない。
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