『エス-楽園創造-』
こんにちは。
今回もB-NOVELに投稿していただいた、素晴らしい小説をご紹介させていただこうと思います。
今回の作品のタイトルは『エス-楽園追放-』
ジャンル『恋愛・ガールズラブ』とある通り、いわゆる『百合作品』で、序盤はマリア様が見ていそうな雰囲気で話が進んで行きます。
この作品を読んで最初に感じたのは、単語に対するセンスの良さです。
まずはタイトルにもなっている『エス』という単語。
あらすじにも
「一方で、花の修道女同士が特別な関係となる「エス」の文化が流行していた。」
とされる単語。
この言葉は、女性同士の「そういった関係」を示す言葉です。
もう少し詳しく言うと、太平洋戦争前に生まれた隠語で、sister(姉妹)の頭文字である「S」を語源としているそうです。
つまり辞書にも載っている既存の言葉で、決して造語ではありません。
しかし、この言葉を重要な位置に据え、タイトルにまでした点には作者である鈴菜さんセンスを感じずにはいられません。
この文章を読んでいる方は、おそらくこの素晴らしい物語を読んでいないと思います。
そのため、すこし説明がいると思って書くのですが、『エス』という文字を見て、真っ先に連想するのはなんでしょうか?
おそらく「S」というアルファベットを思い浮かべたのではと思いますが、この文字には女性のイメージがあります。
英語で「he」といえば彼、つまり男性。
その頭に「s」をつければ彼女、つまり女性になる。
この知識がある人間はもう『エス』という文字で、何となく女性をイメージします。
さらに『エス』という文字列を見れば、人は不足感を覚えます。
もちろん『えす』という純日本語は存在しません。
外来語なのは明らかですが、『エス』といえば『S』。
そして単なる『S』という英単語が存在しないのも明らかです。
そうであれば、意味を知らなくても何かの『隠語』であることは直感できます。
女性的なイメージがあり、しかも隠語。
それも隠しているものが隠しているものだけに、この言葉が出てくる文脈には常にある種の背徳感が漂います。
ある種の人間は、そこに『美』を見出します。
この作品では、この『エス』なる単語がもつ背徳美を存分に利用して読者を引きつけ、物語の推進力にもしています。
理屈だけでは到達できないセンスの成せる業です。
さらにもう一つ。
この作品には『罪女』なる単語も出てきます。
これは作中に登場する『ニゲラ』という名の、過去に神を裏切り、神を滅ぼした元修道女――まさに罪ある女――に付けられた呼び名です。
私は作者ではないので予想になりますが、おそらくは『聖女』を意識した言葉でしょう。
セイジョとザイジョ。
あえて音を近づけることで、より『聖』とは真反対の存在だと強調しているのです。
もっとも、作品を読んで『罪女』と接すれば、すこし印象が変わります。
彼女は『聖女』とは言い難い性格ではあっても、決して悪でもなく、むしろ魅力的な人物なのです。
そんな彼女が、あえて『聖女』と真逆であることを強調してあるのも、『罪女』と貶められているのも、すべて重要な意味のあることです。
これもセンスというしかない巧の業と言えます。
各キャラクターに付けられた名前も素晴らしいの一言です。
登場キャラクターは大半が『花の修道女』のため、名前も大半が
「シスター・○○(花の名前)」
となっているのですが、それぞれの花の特性や花言葉が、キャラクターの運命や性格を暗示しているのです。
例えば『シスター・ルゴサ』というキャラクターがいます。
ルゴサとはバラの一種で、短い期間で散ってしまう儚い花です。
そして花言葉は
「美しい悲しみ」
「あなたの魅力に惹かれます」
僕は彼女の運命を見届けてから花言葉を調べたのですが、彼女に名前をつけるなら、たしかにこの名前だと感心せずにはいられませんでした。
(ちなみに、このキャラクターの運命はあらすじに記載があります。
これが興味深いところで、ネタバレを恐れることなくあらすじに書き込んだ点から鈴奈さんの自信が窺えます)
他のキャラクターにしても、やはりセンスが図抜けています。
物語中で重要な役割を果たすキャラクターに
『シスター・ルドベキア』
『シスター・アザレア』
などがいます。
やはりピッタリの名前です。
また、花の修道女であるはずなのにも関わらず、花の名前で呼ばれないキャラクターもいます。
彼女は何者なのか。
どうして花の名前で呼ばれないのか。
そこもまた一つの仕掛けになっていて、もはや脱帽するしかありませんでした。
今回はあくまで紹介ということで、批評ではありません。
そのため、これ以上ストーリー展開に言及するのは避けます。
しかし、これだけのセンスを持つ方が紡ぐストーリーが、つまらないなんてことがあるでしょうか?
少なくとも僕の経験上、こういうセンスがいい作品は面白い確率が高いと言えます。
とはいえ『百合作品』なので、苦手な方は多いと思われ、その点では万人にオススメできるとは言えません。
しかし百合が好きな方には自信をもってオススメできます。
そういう方には是非とも御一読ください。
最後に一言。
この作品と出会わせてくださった神に感謝。
神に愛を。
今回もB-NOVELに投稿していただいた、素晴らしい小説をご紹介させていただこうと思います。
今回の作品のタイトルは『エス-楽園追放-』
ジャンル『恋愛・ガールズラブ』とある通り、いわゆる『百合作品』で、序盤はマリア様が見ていそうな雰囲気で話が進んで行きます。
この作品を読んで最初に感じたのは、単語に対するセンスの良さです。
まずはタイトルにもなっている『エス』という単語。
あらすじにも
「一方で、花の修道女同士が特別な関係となる「エス」の文化が流行していた。」
とされる単語。
この言葉は、女性同士の「そういった関係」を示す言葉です。
もう少し詳しく言うと、太平洋戦争前に生まれた隠語で、sister(姉妹)の頭文字である「S」を語源としているそうです。
つまり辞書にも載っている既存の言葉で、決して造語ではありません。
しかし、この言葉を重要な位置に据え、タイトルにまでした点には作者である鈴菜さんセンスを感じずにはいられません。
この文章を読んでいる方は、おそらくこの素晴らしい物語を読んでいないと思います。
そのため、すこし説明がいると思って書くのですが、『エス』という文字を見て、真っ先に連想するのはなんでしょうか?
おそらく「S」というアルファベットを思い浮かべたのではと思いますが、この文字には女性のイメージがあります。
英語で「he」といえば彼、つまり男性。
その頭に「s」をつければ彼女、つまり女性になる。
この知識がある人間はもう『エス』という文字で、何となく女性をイメージします。
さらに『エス』という文字列を見れば、人は不足感を覚えます。
もちろん『えす』という純日本語は存在しません。
外来語なのは明らかですが、『エス』といえば『S』。
そして単なる『S』という英単語が存在しないのも明らかです。
そうであれば、意味を知らなくても何かの『隠語』であることは直感できます。
女性的なイメージがあり、しかも隠語。
それも隠しているものが隠しているものだけに、この言葉が出てくる文脈には常にある種の背徳感が漂います。
ある種の人間は、そこに『美』を見出します。
この作品では、この『エス』なる単語がもつ背徳美を存分に利用して読者を引きつけ、物語の推進力にもしています。
理屈だけでは到達できないセンスの成せる業です。
さらにもう一つ。
この作品には『罪女』なる単語も出てきます。
これは作中に登場する『ニゲラ』という名の、過去に神を裏切り、神を滅ぼした元修道女――まさに罪ある女――に付けられた呼び名です。
私は作者ではないので予想になりますが、おそらくは『聖女』を意識した言葉でしょう。
セイジョとザイジョ。
あえて音を近づけることで、より『聖』とは真反対の存在だと強調しているのです。
もっとも、作品を読んで『罪女』と接すれば、すこし印象が変わります。
彼女は『聖女』とは言い難い性格ではあっても、決して悪でもなく、むしろ魅力的な人物なのです。
そんな彼女が、あえて『聖女』と真逆であることを強調してあるのも、『罪女』と貶められているのも、すべて重要な意味のあることです。
これもセンスというしかない巧の業と言えます。
各キャラクターに付けられた名前も素晴らしいの一言です。
登場キャラクターは大半が『花の修道女』のため、名前も大半が
「シスター・○○(花の名前)」
となっているのですが、それぞれの花の特性や花言葉が、キャラクターの運命や性格を暗示しているのです。
例えば『シスター・ルゴサ』というキャラクターがいます。
ルゴサとはバラの一種で、短い期間で散ってしまう儚い花です。
そして花言葉は
「美しい悲しみ」
「あなたの魅力に惹かれます」
僕は彼女の運命を見届けてから花言葉を調べたのですが、彼女に名前をつけるなら、たしかにこの名前だと感心せずにはいられませんでした。
(ちなみに、このキャラクターの運命はあらすじに記載があります。
これが興味深いところで、ネタバレを恐れることなくあらすじに書き込んだ点から鈴奈さんの自信が窺えます)
他のキャラクターにしても、やはりセンスが図抜けています。
物語中で重要な役割を果たすキャラクターに
『シスター・ルドベキア』
『シスター・アザレア』
などがいます。
やはりピッタリの名前です。
また、花の修道女であるはずなのにも関わらず、花の名前で呼ばれないキャラクターもいます。
彼女は何者なのか。
どうして花の名前で呼ばれないのか。
そこもまた一つの仕掛けになっていて、もはや脱帽するしかありませんでした。
今回はあくまで紹介ということで、批評ではありません。
そのため、これ以上ストーリー展開に言及するのは避けます。
しかし、これだけのセンスを持つ方が紡ぐストーリーが、つまらないなんてことがあるでしょうか?
少なくとも僕の経験上、こういうセンスがいい作品は面白い確率が高いと言えます。
とはいえ『百合作品』なので、苦手な方は多いと思われ、その点では万人にオススメできるとは言えません。
しかし百合が好きな方には自信をもってオススメできます。
そういう方には是非とも御一読ください。
最後に一言。
この作品と出会わせてくださった神に感謝。
神に愛を。