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作者: 犬物語
犬「ワイら汗かきにくいんや、かんべんな」
もし犬が汗っかきだったら?

毎日シャンプーせなアカンのか(白目
 人間という生き物がいます

 長時間の運動を可能とし、強靭なスタミナはトレーニングをすれば2時間以上も走り続けることすら可能とします。もし、これを他の動物が行おうとしたらすぐ体温が限界突破して再起不能リタイアしてしまうでしょう

 実は、人間は汗をかける数少ない動物のひとつです。っていうか全身から汗ダバダバかく動物って人間とウマくらいじゃね? って感じ。わたしたちと同じ霊長類は手とか一部にしか汗腺がないし、牛やらなにやら一部の哺乳類でもそう。ウサギや鳥さんたちはまったく汗をかくことができません

 汗という機能自体が大発明なのです。だからこそわたしたちは強靭なスタミナという武器を手に入れました……が、わんちゃんたちもどのくらい走り続けるんだ? ってくらい走りまくりますよね。あいつらは規格外の心肺機能をもっている故に長距離ランナーたりえますが、汗をかく機能はそこまで発達してるワケじゃないのです

 今回はそんな犬の汗について書いていきましょう





:えくりん! あぽくりん!:

 犬は全身毛むくじゃらな動物です。なので、わたしたちのように大量に汗をかくと、おそらくほんの数分走っただけでも全身びしょ濡れになっちゃうでしょう

 っていう理由かどうかは知りませんが、犬は汗をほとんど・・・・かきません。ひとつ例外をあげるとするなら肉球ですね。そこからはわたしたちと同じように99%水分による汗が噴出しています

 さて、ひとことで汗をかく言うても、実は汗には2種類あるのです

・エクリン汗腺
・アポクリン汗腺

 人間は全身にエクリン汗腺をもちます。水分99%の見事な"汗"です。あせっていうか、しる?

 エクリン汗腺は皮膚に直接伸びている汗腺です。水分をそのまま外部へ放出し、蒸発し、その気化熱によって身体の表面が冷えていく。体温調整などで有効的ですね。エクリンちゃんは温熱刺激や精神的緊張、また辛いものを食べた時などによって発汗が促されます

 一方、アポクリン汗腺は毛穴へ伸びている汗腺で、結果的に毛の周囲から皮膚へにじみ出てくるような構造をしています。人間の場合、性ホルモンの分泌などで量が多くなります

 エクリン汗腺が99%水分である一方、アポクリン汗腺はタンパク質、糖類、脂質、アンモニア、鉄、などけっこーな"ニオイの元"が分泌されていますが、これだけじゃまだあの独特なニオイを発しません。そこに雑菌やら皮脂やらなにやらが交じり、雑菌がそれらを分解したりなんだったりすることで独特の臭いを発するようになるのです

 ほら、毛根は皮脂腺言うて皮脂を出すヤツもあるじゃん? アポクリン汗腺もそのエリアから分泌されてるワケで、当然ながらそこには皮脂腺から分泌された皮脂も存在するわけで、皮膚表面にはいろんな雑菌がいて、皮脂はわりと住心地の良い空間だったりして――まあ、そういうことです





:どうやって体温下げる?:

 エクリン汗腺は体温を下げる機能があるけど犬にはそれが少ない。じゃあどうやってるか? ――そうだね、パンティングだね

 パンティングは汗のかわりに大量の唾液を分泌します。人間が汗でやることを、犬は唾液の気化熱を利用して行うということですね。ただし、人間は全身で熱冷ましができるのに対し、わんちゃんはお口まわりでしか体温調節ができません。ってことで、わんちゃんは自分の熱を発散させる手段が少ないです。さらに書くと、短頭種と呼ばれるパグやブルドッグなどはパンティングがニガテなので、より体温調整に気を使わなければいけなくなります

 夏場に服着せるとか拷問以外のなにものでもないからやめてね? なお、毛がないヘアレスドッグなるわんわんもいますが、その子たちは皮膚のお手入れという別の課題もあったりします

 なんでエクリン汗腺が少ないのか? その理由はわからんけど、まあ犬の全身にエクリン汗腺があったら5分遊んだだけで全身ズブ濡れになるからなくて正解だったと思います。その点人間は全身の毛という防御を捨てスタミナモードに突っ切った感じでしょう

 わたしたちにはエクリン汗腺とアポクリン汗腺どっちもついてます。さきほど書いたようにエクリン汗腺は全身に、そしてアポクリン汗腺はワキの下とか陰部とかそういう箇所についています。そのせいで、一部の方はワキガという悩みをもっているようですね

 ちょっとしたトリビア。人間ってどんな猛毒も"薬"として活用できちゃう生き物らしくてね、世界的に超強力な毒として知られるボツリヌストキシン――致死量10億分の1グラムとされる――をワキにチュッとすることで、ワキガの原因となるアポクリンからの汗を押さえちゃおう! 的な手法があったりします

 ボツリヌストキシンは凄まじい神経毒で、汗を出す機能やら筋肉の収縮機能やらを妨げる効果があり、それらを美容目的で注入する方も多いとかなんとか

 いやぁ、人間の進化はすさまじいねって話でした閑話休題ついでにこの段落もおしまい



 上記の理由もあり、犬は体温調整がちょっとヘタです。強靭なスタミナでいつまでも走り続けることはできますが、その際は常にハァハァしてなけなしの気化熱に頼っている状況。わたしたちの常識に当てはめて考えてはいけません

 たとえば車の中に犬を置いていく――これからの時期、外気温が低くても陽の光によって車内はガンガン温められていきます。そんな環境下、体温調節がニガテなわんわんがいたらどうなるでしょうか?

 人間とおなじ、犬だって熱中症になります。そういったことを考え極力車内置いてけぼりわんわんにならぬよう、どーしてもって場合は窓を開けて冷たい水を用意したりするなどの工夫は不可欠でしょう。アナタの大切な"家族"のために、どうぞいたわってあげてください

 世の中すべてのわんわんに、そしてそんなかわいい毛むくじゃらと過ごすアナタに幸あれ!
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