▼詳細検索を開く
作者: 犬物語
【生物】食べ物からう◯こになるまでの旅路【栄養学】
口から入った"食べ物"は

紆余曲折を経て"うん◯"になる

エモくない?
 多くの"生き物"は何かを食わないと生きていけません

 わたしたち人間はもちろん、いっしょに暮らすイヌやネコ、そのへんの山にいるイノシシやクマだってそうです。たとえば"口"という器官を持ちつつなにも食わないかいこはほんの数週間で命を落としてしまいます

 食わなっきゃ生きてけない。それは『外部から何らかの栄養を摂取する』からです。生物は代謝をして身体を日々生まれ変わらせているので、吐き出す分のなにか・・・を外部からお取り寄せしなきゃアカンのです

 食べる、という行為を用いない場合、たとえば植物なんかは光合成や根っこから栄養を吸収していますね。なかには食虫植物とかいうおもしろい進化を遂げた子もいるようですが、そういった創意工夫は総じて『外部から何らかの栄養を接種する』ためのものです

 生き物は何かを食わないと生きてけない――それはわかるけど、じゃあ何でもかんでも食えばいいんか? ってとそうでもない。なまにくを食ったらだいたいの人は腹を壊すし、わたし自身、中途半端に火を通した鶏肉でイタい目にあいました。あの経験はもうしたくありません

 一方で、そんななまにくを食ってもへーきな動物はたくさんいます。この差はいったいなんでしょう? ――それはすなわち、わたしたちが備えている『消化器官』にあります

 外部からお取り寄せした食べ物をわたしたちの都合の良い感じに消化分解し、吸収し、それらを再合成して自らの栄養とするしくみがわたしたちには備わっています。今回はそんな消化器官について書いていきましょう





:消化器官は身体の外側にある:

 消化器官には以下のような機能があります

・食物の貯蔵
・食物の消化
・食物の吸収
・不要物の排泄
・それらの運搬

 主要な器官は食べ物が通る『消化管』、消化液を分泌する『消化腺』、消化の働きで使われる肝臓や膵臓すいぞうなどの『付属器』なども消化器系に含んで扱う場合があります

 肝臓、膵臓、胆嚢などは、消化を助けるための胆汁と膵液をつくり消化器へ送り込みます。これが消化吸収を助けるのですが、それは追い追い解説していきましょう

 消化器系に関してけっこうおもしろい概念があります。それは『消化器官は体の外側にある』ということ。消化器官は口からケツの穴まで一本の管が通ってるような感じになりますよね? そう考えると、わたしたちの身体の中心に空洞が貫いてるというイメージになり、そこは空気を通り抜けさせることができるので消化器官は身体の外側にあるという考え方ができるのです

 まあ、実際消化器官のすべての蓋が開かれることはありません。ノドはふだん呼吸のために閉じられていますし、胃から腸への入口が常時開きっぱなしだったら超強力な胃液が小腸にダイレクトアタックしてしまうし、常に肛門が開きっぱなしだったら――もうやめましょうこの話は

 まあとにかく、こういった意味から業界では「消化器官は身体の外側にあるよ」的な概念があったりします。これを覚えておくと解剖学者とか消化器官専門のお医者さんと話が弾むかもしれません

 なんて情報を披露しつつ、さっそく消化器官を紹介していきましょう





:口から肛門までぜーんぶ消化器官なの:

 消化器官っていうと、アナタは胃袋から腸まで的なイメージをするでしょうか? 実は消化器官ってけっこーたくさん含まれてるんです

・口
・食道
・胃
・腸
  十二指腸
  小腸
  大腸

 腸はもっと細かくなりますが、とりあえず大雑把に書いておきましょう

 『くち』は最初の消化器官です。専門的には『口腔こうくう』と呼ばれ、歯で食べ物を分解し、すりつぶし、より消化しやすい形にすることができます

 舌は食べ物を噛みやすいポジションに動かす役割を担っています。さらに舌には味を感じる『味蕾みらい』という器官があり、動物たちはこれを使って『食える/食えない』を判別しています

 口腔では唾液が出ますね。人間の場合『耳下腺じかせん顎下腺がっかせん舌下腺ぜっかせん』のみっつの腺から分泌されます。ちなみにイヌには『頬骨腺きょうこつせん』っていう唾液腺もあるんだぜ



:しっかり噛んどけ:

 学校で『唾液にはアミラーゼが含まれている』ってのは習いましたよね? これは食物に含まれるデンプンを糖へ消化することができます。デンプンってのは糖がいくつも合体した状態なので、アミラーゼでより細かく分解してあげるイメージですね

 ここでどんくらい噛んだか、唾液をどのくらい浸透させたかによって以降の消化に影響があらわれます。よく噛む方は胃腸への負担が少なくなりますし、その逆であれば言うまでもなく胃腸の負担が増えていきます。しっかり噛んで、胃腸へパスしてあげましょう

 咀嚼してごっくんして、ノド奥の咽頭、喉頭蓋こうとうがいの切り替えで食べ物は『食道』に送り込まれます。そこでは蠕動運動ぜんどううんどうと呼ばれる動きで食べ物が先へ先へ送られていきます

 蠕動運動ってのはねぇ……やわらかい管があるとするじゃん? その途中に食べ物があるともっこり膨らむじゃん? そのもっこりがそのまま下へ下へ移動していくイメージ。ヘビさんが獲物を丸呑みするシーンとかあるじゃん? で、獲物がヘビの中を通ってるなーってのがわかるじゃん? アレです。わからない方はググってみてね





:なんでも消化しちゃうゾ☆:

 長いトンネルを抜けたら、そこは地獄だった――食べ物のキモチになったらたぶんこんな文章になると思います

 食道を進んでいくと、そこに胃の入口である『噴門ふんもん』が待ち構えています。そこを突破すると胃袋本体である胃体いたいへ到達。じゃあ超強力な酸性の海へダイブしましょう

 胃の内側は粘膜で覆われ、そこには胃腺と呼ばれる小さな穴がビッシリあり胃液が染み出しています

 これがめっちゃ強力な酸性を示し、胃袋はだいたいpH1~1.5程度を保っています。また、食べものが胃袋に入ると蠕動運動が起こり胃袋全体を混ぜ合わせていきます。これによって食べ物に胃液が浸透し、じゃんじゃん消化していくわけですね

 ここでは通常3~6時間じっくり消化していきます。また、胃液にはタンパク質を分解する『ペプシン』という物質が含まれており、複雑な構造をしてるタンパク質もある程度消化することができます

 こんな環境に数時間どっぷり浸かるワケですから、胃袋は基本無菌です。まあたまーに生きてて大暴れするヤツもいるけどなピロリとか。けどまあそれは例外中の例外ってことでひとつどうぞ。胃袋は超強力な胃酸の海っていう力技で消化していくので雑菌はほぼ死滅。食べ物もだいたい消化しちゃう人類の切り札? 的な臓器となっております。が、その強力さが仇となり自らの身体を傷つけてしまう『胃潰瘍』なんていう疾患もありますね

 ストレスなどに気をつけて、胃潰瘍なんかにならぬよう生活していきましょう。食べ物がいい感じに消化できた頃合いを見計らって少量ずつ小腸へ送り込んでいくことになります。胃袋から腸へ出ていく出口は『幽門ゆうもん』と呼ばれています





:小腸言うてけっこーあるのよ:

 小腸は長さ6~7mの細長い管で、それぞれ以下の領域に分けられています

・十二指腸
  胃袋から小腸へ続く"橋"みたいなもの
・空腸
  空っぽである場合が多いから"空"の腸
・回腸
  大腸側の領域

 十二指腸は肝臓から伸びる総胆管、膵臓すいぞうから膵管がつながっておりそれぞれ『胆汁・膵液』が分泌されています

 胆汁は消化しにくい脂肪を乳化、えーっと界面活性剤みたいに水と脂どっちにも馴染みやすい形にしてくれます。これによって脂質を消化するリパーゼと反応しやすくなるんだね

 胆汁に消化酵素はないけど、その分水駅には糖質、脂質、タンパク質を消化できる酵素がドバドバ含まれているのでご安心ください

 これらの分泌液はアルカリ性になっており、胃酸で酸性マシマシになったヤベー食物たちを中和してくれます。じゃないと小腸が胃酸でマッハになっちゃうからね。んで例によって蠕動運動によって空腸に送られていきます

 小腸の回路は『空腸/回腸』言われてるけど明確な境界線はありません。空腸は食べ物が比較的早く通り過ぎちゃっていつもスカスカだから空腸言われてる感じ。いちおう腸間膜と呼ばれる膜に多少の性質の差があるようですが、このあたりは専門的なレベルになるので割愛しましょう

 小腸では酵素の働きにより糖質が最小単位であるグルコース(ブドウ糖)に、タンパク質はより細かいアミノ酸になり、小腸粘膜にビッシリ生えてる絨毛じゅうもうで吸収されていきます。だいたいの栄養素は小腸内部で吸収されています



:タンパク質ってなんだよ:

 ちなみにタンパク質は『アミノ酸が鎖状に結合したもの』で、アミノ酸は『アミノ基とカルボキシ基の両方持ってる化合物の総称』です。生物の話になっちゃうね、えーっとちょっと待ってね

 わたしたちは究極的に書くと、酸素とか炭素とかがいろいろくっついてできてるじゃん? で、それらは一定のルールで一定のまとまりがあるの。で、それらを「この物質は水素ふたつと酸素ひとつと炭素ひとつの化合物です」とかいちいち言うのメンドウじゃん? ってことで、ある一定の組み合わせを『〇〇基』という呼び方にしてるの

・アミノ基
  -NH2 (水素2つ、窒素1つ)
・カルボキシ基
  COOH (水素1つ、酸素2つ、炭素1つ)

 タンパク質はとても複雑な組成をしてるので、口の時からしっかり噛んで分解してあげましょう





:あとは出すだけ:

 大腸は直径だいたい5~8mあり、小腸のまわりを一周するような形をしています。んで以下の要素に分かれます

・盲腸
  入口の下にあるちっこいふくらみ
・結腸
  ぐるっと一周する部分
  上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸に分かれる
・直腸
  肛門までの道筋

 回腸と大腸の入口は『回腸口』と呼ばれ、大腸の壁に回腸の一部がにゅっと差し込んだような形になっています。出てきた先には大腸が待ち構えており、そこはゆりかごみたいな形になって回腸への逆流を防ぐ設計になっております

 その下にはちっちゃな袋みたいなの。これを盲腸と呼んでるわけですね。この盲腸、以前は不要な臓器とされていましたが、実は最近になって免疫系のリンパ組織が多くあり、リンパ球や抗体が作られるため重要な器官(虫垂)なんじゃねという説が出てきてますが、その真偽は今後の研究で明らかになっていくでしょう

 大腸の役割は老廃物の運搬です。余計な水分をここで絞りだし吸収。余ったヤツを蠕動運動で運び肛門からオサラバするためせっせと動いています。まずは上行結腸、次におなかを横切るような横行結腸、下行結腸ときて最後にS字型のS字結腸へ続く。なんでこんな設計になったか知らんけど、たぶんなんかいろいろ都合がいいんでない?

 S字結腸でおなかの真ん中あたりに運び込まれ、最終的にケツ穴への橋渡しである直腸へパスされます。直腸はイロイロなアレを溜め込むためか、ちょっと膨らんだ形をしています。わたしたちがトイレに駆け込む時には、ここがミッチリと茶色い物体に満ちているワケですね



:すべてを水に流そう:

 直腸は『肛門管』という器官に繋がり、ここが実質的な直腸と肛門をむすぶ橋となります。3cmほどの肛門管には柱のような形をした突起がいくつもあり、これによって肛門が閉じられています。これで不要な漏れを防ぐと同時に、わたしたちはわたしたちの意志で筋肉――括約筋を駆使してガマンすることができるのですね

 大腸は食べ物を新たに取り入れると『胃大腸反射』と呼ばれる蠕動運動を行い、イッキに便意へと導いてくれます。メシ食った後すぐ◯んち行きたくなるのはそのせい。まあこれも正常に働いてるということで、メシ食った後はリラックスして便意を促しましょう

 そういや「オレ消化早いから食事のあとすぐう◯ちするんだよ」言ってた友人はゲンキしてるだろうか……1時間足らずで消化吸収完了できたらそれはもう人間じゃないんだよなぁ

 という蛇足は置いといて、まあこれらが"消化器官"のすべてになります。専門家からすっとまだ書き足りないところがありそうですが、まあこれ以上は文字数的にアレなのでやめときましょうね



 普段の食事、気にしてますか? 食べ物はわたしたちの身体になるものです。それらをしっかり消化吸収するためには、まずしっかり噛んで、唾液を分泌させ、規則正しい食習慣にすることが大切です

 アナタ自身の健康のため、毎日栄養バランスの良い食事を摂りましょう。アナタの心身の健康を祈ります
Twitter