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作者: 犬物語
【生物】血管にも"穴"があるんだよなぁ【血管の構造】
身体ってのはよくできてんのよ
 人間が移動手段としてもちいる『車』。使い方によってはあまりにも強力な凶器・・たりえるので、車を用いる国は必ずそのための法律が策定されています

 とくに『車が走る専用の場所』をつくるのは重要で、ときには人がよりつけないよう整備し、そこだけは100キロくらいの速度で走ってもおっけーよと定められていたりする――こういった有料の高速道路は、通称"大動脈"なんて言われたりします。首都高速道路は日本の大動脈だ、なんてね

 大動脈、まあ動脈ってのは血管に関する用語だね。ヒトの身体、いやまあだいたいの生物の身体には血管ってヤツがありまして、そこにはいろんなブツが身体のあちこちに運搬されております

 血管と道路は似てる。だからこそ例えに使われるんです。血管は栄養素、老廃物などを運搬する道路であり、その血管が閉塞――何らかの原因で通れなくなってしまえばその先に栄養を送り届けることができなくなり、栄養を受け取れなくなった部位は壊死してしまいます

 実際の車道も、車に積み込んだ物資が運搬できなければその先の地方にそれを運び込むことができなくなり、住民に大きなダメージを負わせてしまうのです。だからこそ、記憶に新しい能登半島地震のときは、車で避難することは避けられ、さらに乗り捨てる車は車道の外側に停めるよう言われていたのです

 まあ、みんな車で避難しようとしたら大渋滞必至なので、それを割けるねらいもあったのですが、そこまで書くと話が脱線してしまうので割愛

 ヒトの身体に張り巡らされた血管。今回はこれについて書いていきましょう





:ヒトの交通網・血管:

 血管は『血液を身体の隅々まで送り届ける道路』です

 血液はありとあらゆる栄養素、老廃物、ホルモンその他もろもろの物質が水分に薄められた"車"の総称であり、血管という道路を使って全身に行き渡っています。車との違いは停車しないってコトでしょうかね。もし停車したらそれは血管が閉塞したってことで、まあアカンことになります。救急車はよ

 このほか、血管は『体温の維持』にもたいへん役立っております。血液があったかぁ~い状態で全身を駆け巡ることにより体温が維持され、逆に身体が熱せられてヤバいというときは、皮膚付近の血管が太くなり、そこに血液が循環することで身体を冷やしていく。身体ってなかなかよく出来てるでしょ?

 ちなみに、ひとことで血管といっても以下みっつに分けられています

・動脈
  心臓から全身に血液を送り届ける
・静脈
  酸素を供給し、二酸化炭素を取り込んだ血液を
   心臓に戻す
・毛細血管
  各組織に酸素と栄養を供給し、二酸化炭素や
   老廃物を回収する場所

 血管は全身に張り巡らされていますが、それらを1本の管にして伸ばすと約10万kmあります。それってどんくらい長いの? 言うたら『地球2周半』分くらいです。ちなみに面積はテニスコート(約24m×11m = 約264平方2)の6面ぶんくらいになる

 けっこーすごくね?





:血管は3層構造:

 アナタは『道路』ってワードにどのような風景をイメージするでしょう?

 ツヤツヤしたコンクリートに覆われた道?

 薄灰色でちょっとヒビがある年代モノの道?

 砂や砂利で敷き詰められた道?

 まあ人によっていろんなイメージが浮かぶでしょうが、血管は「あ、ちょっと道壊れちゃった、テヘ☆」なんてコトがあると大問題っていうか命に関わるので、基本的にはメチャクチャ柔軟かつ屈強な道路として機能しています。そのため、血管は3層構造になっています

・外膜
・中膜
・内膜

 それぞれコンクリート的な、専門用語で『結合組織』言うて、まあ弾力があるタンパク質がビルディングしてくれます。みんなだいすきコラーゲンもその役割を担っていますが、血管の主成分はエラスチンと呼ばれているタンパク質です。まあ大体エラスチンとコラーゲンとその他細胞みたいな塩梅でイメージしてください

 内膜は内皮細胞とよばれる細胞がメイン。中膜は平滑筋と呼ばれる弾力性のある筋肉、まあ胃袋とかにもある筋肉がメインで構成され、外膜は上記で書いたタンパク質がメインになります。より細かくするとこんな感じ


血液
:内膜:
内皮細胞
平滑筋細胞
弾性膜
:中膜:
平滑筋細胞
弾性膜
:外膜:
弾性膜


 コラーゲンもエラスチンも弾力性があるので、とくに心臓がドックンドックンやってるような現場では大活躍します。大動脈は弾力性があるので『弾性動脈』とも呼ばれています

 血管はなかなか都合がいい構造をしておりまして、えーアドレナリンとかそういうホルモンあるでしょ? ああいうのに血管の平滑筋が反応して収縮します

 ただ血液が常に流れてるので、いきなりキュッとすると血管がプチュッってなっちゃうので、血管内の平滑筋はゆっくり電気情報が伝達していきます――これがうまくいかなくなる病気とかもあるのでご注意ください

 心臓付近の大動脈と異なり、そこからアッチコッチに分岐した動脈たちは弾力性より平滑筋のほうが割合が多いため『筋性動脈』と呼ばれています。このヘン生物のテストに出るかどうか知らんが、まあ覚えといて損はないんじゃないでしょうか?

 動脈は心臓からのドックンで血液を送り込まれますが、末端の動脈や毛細血管などはどーしてもその恩恵を受けにくくなっています。そこで、ほっそい動脈は自身の血管を収縮・拡張することで血圧を調整し、血液を送り込むことができます。自身で血圧の抵抗値を操作できる、まあ自律神経からの指令でいろいろ抵抗値を弄れるので『抵抗血管』とも呼ばれていますね

 テ覚

 静脈は動脈ほど圧力が高くないためそれほどの柔軟性を要求されません。ってことで、動脈の中膜にある厚い平滑筋細胞や弾性膜が薄くなっており、さらに血管内部に逆流防止ようの弁がついています(半月弁)

 便じゃないよ?

 弁だよ? 漢字間違うとヤベーことになるから注意ね

 足は筋肉の収縮が『第二の心臓』としての役割をもっており、動かすことで血液を上に上に運んでくれる役割を担っております。なのでみんなたっぷり歩きましょう

 なお、動脈と静脈は同じ割合だと思われガチですが、実際は静脈勢力のが優勢なので覚えおきましょう

・動脈
  約20%
・静脈
  約75%
・毛細血管
  約5%

 そうそう、毛細血管はほんとに全身に分布しております。ただ「ここから先行き止まり」的な血管は存在せず、必ずどっかしらで『動脈-毛細血管-静脈』って関係をもっています

 動脈と静脈は道路でいう高速道路や大きな国道。毛細血管は細い国道や都道府県道、さらに市町村道や私道などをひっくるめたような存在で、比率的にはこんな漢字になっています

動脈:静脈:毛細血管

1:2:700

 圧倒的じゃないか我が軍毛細血管は……まあ、いかに毛細血管が全身隅々までカバーしてるかがおわかりでしょう

 ちなみに、血管は日常生活やスポーツの衝撃などでわりとぶっ壊されてます。が、みなさんおわかりのように、血管にはちゃんと血小板ちゃんという血管修復のプロがいらっしゃるのでご安心ください

 ほかにも、血管が閉塞しちゃってヤバいってときに新しい血管を伸ばしていく機能もあったりします。実は心臓の血管詰まってたよ☆ みたいな方がわりと生きてられるのもこの機能のおかげかもしれませんね。詳しいメカニズムは文字数の都合で割愛します。とりあえず『内皮細胞に穴ぁ作って、タンパク質やら溶かしてトンネル工事してく』的なイメージでどうぞ





:血管にも穴はある:

 血管はあっちこっちに栄養を送ったり、老廃物を受け取ったりする場所ですからそれらをやりくりするための"穴"が存在します

 たとえば白血球(好中球)は遊走言うて血管どころか文字通り身体のあっちこっちに行くことができたりしますし、ほかにも血管内のある物質の濃度が異なるため水分が細胞の方に流れてく、的な現象も起こったりします。そのせいで透析患者が気分悪くなったりするんだけど例によって文字数割愛

 穴があって、いろいろやり取りできる血管ですが、例外的に脳は門番が設けられています。じゃないと病原菌さんたちが「チィーッス通りまーす」しちゃうからね

グリア細胞「ふざけんな、テメーはダメだ」

 ってことで、脳には『血液脳関門』というしくみがあり、グリア細胞(アストロサイト)が脳血管を覆い尽くしてそこから必要な栄養素やらなにやらだけを取捨選択し、脳細胞くんに送り込んでいくんですね

アルコール「とーりまーす」
アストロサイト「よし通れ」

 いや待て、それも通すなやボケ――まあ、小さな物質とか脂溶性物質とかはスルーされちゃうの御愛嬌でよろしくです

 血管はわたしたちの暮らし・・・・・・・・・を護ってくれる重要な交通網です。そんな彼らを思うならば、きちんと日々の運動をこころがけ、脂ぎった食生活から脱却しましょう。若いうちから動脈硬化なんてシャレにならんぜよ

 さいごに、なんかいい感じに参考になりそうな情報源をシェアしときましょう。んじゃ、アナタの心身の健康を祈ってますよ!

東京医科大学、八王子医療センター
ttps://hachioji.tokyo-med.ac.jp/assets/department/images/230613cvs_newsletter.pdf
秋田大学、保健管理センター
ttps://www.akita-u.ac.jp/hkc/healthinfo/lsd.html
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