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作者: 犬物語
【入門用】そもそも"睡眠"ってなんだよ?【4ステージ】
毎日寝覚めスッキリしたい

ぐっすり眠りたい

疲れをすっぱり抜き去りたい

って願望をおもちの方は、とりあえず基礎知っときゃいいんじゃない?
 生き物は例外なく睡眠を必要とします

 サバンナの中心で死ぬか生きるかを繰り広げるあの動物たちも、川の流れに流されぬよう泳ぎ続ける魚たちも、眠らないと言われるあの生き物だって少なからず『睡眠』状態に入る瞬間があります

 一般的に、睡眠は『脳を休めるための時間』という認識でしょう。が、実は最新の睡眠研究では「生物が"脳という機関"を手に入れる前から"睡眠"という働きがあったんじゃね?」なんて説も提唱されています。つまりどういうことかってと――

 生物にとって睡眠こそそもそもの状態・・・・・・・であり、進化によって意識をもち活動する起きている状態・・・・・・・を獲得した

 実際、睡眠という現象は脳をもたないクラゲにも観測されており、睡眠は脳がある・なしによらないのでは? という考察ができますね。生物にとって『動き回る』というのはとても疲れるし効率的ではない。じゃあどういう状態が最も楽でクリーンな状態か? って問われるとそりゃあもう睡眠中だったりするのよ

 睡眠は必ずしも脳のための機能ではない、しかし脳をもつ動物の睡眠は脳が司っている……これはなかなか興味深い話ですが、アナタにとって重要なトコは「より良い睡眠で寝覚めスッキリしたい!」とか「睡眠の質を高めたい!」とかそういうヤツよね

 うん、わかる。率直に『良質な睡眠には〇〇が重要です』とか書けば済む話なんだけど、それらをより深く理解し、勘違いせず確実に効果を発揮させたいなら、とりあえず睡眠の基礎というか「睡眠とはなんぞや?」的な知識を取り入れといたほうがいいと思うのですよ

 たとえば『ダイエットしたい!』って目的があるとするじゃん? んで「糖質制限がいいよ」言われてそれ実践しはじめたとするじゃん? ――そのあと「脂質制限がいいよ」言われてじゃあそれも並行してやろうってなったとするじゃん? ――そしたら糖質制限と脂質制限しちゃってそもそもの栄養素が足らなくなって、かえって体調悪化して泥沼に、なんてオチが待ってたり、ダイエット中のガマンでストレスマッハになってキレ食いしちゃってかえって太ったとか、まあいろいろあったりするのですよ

 ただ『〇〇するといい』という言葉だけで実践しようとすると落とし穴にハマります。そうじゃなく、ある程度の土台となる知識をもって、なんでその方法が効果的なのか? ってのをある程度知った上で実践するクセをつけてみてください。今回は良質な睡眠を手に入れるための基礎知識『睡眠の4ステージ』をメインにご紹介します





:睡眠不足はあるけど"貯金"はできない:

 率直に申し上げて『寝溜め』というものはできません。睡眠は100%が限度であり、ゲームとかでよくある120%! 的な状態はありません

 睡眠は『HP,SP,MPを満タンにする』イメージです。それぞれのステータスが満タンになってもそれ以上にはならんでしょ? 宿でセーブしつつ宿泊して満タンになっても、じゃあもう一泊言うて宿泊して満タンのその先まで回復することはないでしょ?

 寝溜めは存在しないのです。あるとすれば、それは『アナタが睡眠不足に気づいてなくて、寝溜めという認識で100%になっただけ』です。つまり普段の睡眠で100%まで回復してないという捉え方もできます

 これ大事なコトなのでもう一度書きます。睡眠不足でマイナス・・・・・・・・・になるけど・・・・・睡眠しすぎたら・・・・・・・プラスになる・・・・・・ワケではない・・・・・・ってのをしっかり熟知しといてください。もし「いや、自分は寝溜めでスゲー疲れが取れるの実感してるけど?」って言ってる方がいたら、つまりそういうこと・・・・・・なので、どうぞ。睡眠の本質はプラスではなくデフォルト、つまり『いかにマイナスがない状態を作るか?』に焦点を置くべきなのでしょう

 眠ってる間身体では何が起きてるのか? ――最も大事なものとして『脳みそのおそうじ』が挙げられます

 アナタは『睡眠中に脳のアミロイドβが除去され――』なんて話を耳にしたことがあるでしょうか。メディアなどでよく取り上げられてるのでおそらく知ってると思います

 アミロイドβもそうですが、睡眠中は活動してた脳のいろいろな老廃物を血中に運んでくれます。睡眠中は脳に求められる酸素量が少ないので血流が押さえられますが、そのぶん脳脊髄液が循環したり、その際グリア細胞の一種『アストロサイト』くんがせっせとゴミ拾いをしてくれたり……グリア細胞について書くと文字数がアレなので端折りますが、もうとにかく学校の掃除の時間なんて比較にならないくらいの大掃除をしてくれるんですよ。これはもうちょっとググっただけでたくさん情報が出ると思うので『睡眠 脳 掃除』的なワードで調べていただければ幸い

 睡眠不足だと掃除が中途半端な状態になっちゃうんですね。じゃあそれがずぅ~っと継続しちゃってたら? 睡眠不足が日常的になっていたとしたら? ――寝溜めをしたとしても、掃除しきれなかったところを細かく掃除するにはけっこうな手間がかかります。普段掃除してないトコって汚れが溜まったり色が変わったりしてなかなか取れないでしょ? それが脳でも起こってるとイメージしていただければわかりやすいてでしょう

 ここまでの話で『もうとにかく睡眠って大事なんだな』ってのがご理解いただけたかと思います。ってことで、次はさらなる基礎知識。いよいよ睡眠の4ステージについて書いていきましょうか





:睡眠は4段階 ~7時間以上寝とけ~:

 睡眠は基本的に『深い眠り → 浅い眠り』を交互に繰り返し、徐々に眠りが浅くなって覚醒段階に至ります。睡眠時間を7~8時間くらいとするなら4段階の睡眠を合計4回くりかえし、最終的な目覚めに至ります

 肝心なのは『次の回の眠りは、その前の回の眠りより浅い』ということ。覚醒に向かってるからね。よく「睡眠は最初の90分間が肝心だ」と言われるのはこのためで、さいしょにふかーい眠りができてないと、必然的に次の眠りも浅いモノとなってしまう――毎日決まった時間に寝て決まった時間に起きる生活を習慣づけていれば、身体は寝るモードに切り替えやすくなり最初にグンと眠ることができるようになったりします。できれば毎日7時間30分以上、寝る時間と起きる時間を決めて『身体が睡眠モードに移行しやすい習慣』をつけておきたいですね

 睡眠のステージは4段階ありますが、はじめの段階はいわゆる"眠り始め"になります


:第1ステージ:

 人間には『入眠潜時』とよばれる眠るまでの時間があります。ふとんに入ってハイすぐ寝られる! って方はいないでしょう。ちょっと横になって目を閉じて、すこーしじっとしてたらいつの間にか眠ってた……多くの方は10分から15分くらいで睡眠モードに移行できるようです

 このとき、アナタがほんとうに眠ろうと思っていたら身体は睡眠モードに移行します。が、アナタが眠るつもりでなかった、あるいは寝る体勢になってなかった場合はその限りではありません。よくあるのが『ジャーキング』と呼ばれる現象、アナタもきっと体験済みでしょう

 授業中うとうとして、ある瞬間にビクン・・・! ってなっちゃうアレです

 第1ステージ中、脳みそちゃんは睡眠モードになるため身体を動かす機能をカットします。が、身体の平衡感覚を司るシステムはまだ稼働中になっており、机にギジついてうとうとしてると、ある瞬間に「身体のバランスが崩れてるぞ! このままだと倒れてしまうぞ!!」という信号が脳内に走って、身体が反射的に身体を守ろうとするためビクン! となっちゃうのです

 逆に、もうホントに寝るって場合はそもそも倒れてるので平衡感覚の出番なんてありませぬ。しかも本人が寝る気マンマンなので脳みそちゃんも安心して睡眠モードに移行できる……ってことで、この段階をクリアしたら次のステージに移りましょう


:第2ステージ:

 睡眠全体の半分以上を締めるこのステージは、脳があちこちに情報提供し、記憶の定着を図る段階とされています

 紡錘波と呼ばれる速くてリズミカルな脳波が『視床 → 大脳皮質』へと送られ、そのほかゆったり大きな波も現れ『K複合波』と呼ばれる波長が見られるようになります

 紡錘波は運動関連の記憶と深く関係するとされます。スポーツの技術に楽器の演奏など身体を動かす記憶を整理してるとされるので、この段階はアスリートにとっては貴重ですね。なお、加齢によりこの脳波は少なくなるらしいですが、それは新しい経験をしなくなってきたからと解釈することもできます

 年老いてもたくさん経験や学習を積み重ね、たっぷり睡眠して脳波を出していきたいですね

 ちなみに、この頃から覚醒しにくくなります。ムリに起こそうとしなければぐっすりですが、起こされた場合眠気が残ってウ~ン的な感じになるでしょう

 ここを乗り越えると、さらにふかーい睡眠が待ち構えています


:第3ステージ:

 目覚まし時計でも起こせないような、まさに"石のように眠る"段階がここ。ムリに起こされた場合、身体も意識も覚醒できず酔っ払ったような状態になります。これを睡眠酩酊なんて呼んだりします

 紡錘波が出なくなり、大きくてゆったりした脳波だけになります。この時、大脳皮質は記憶を司る『海馬』とも連絡を取り合うようになります。海馬くんが一時的に記憶した情報を大脳皮質に送り、その際生まれる『リップル波』が観測されるようになります

 言うまでもなく重要なステージだよね。ちなみにどの記憶を覚えるかは海馬くんの気分次第。テクニックとかで覚えやすくすることはできても確実に覚えられるかどうかはアナタ次第なので、まあがんばってください(祈

 なお、この段階はみんなだいすき成長ホルモンの分泌タイムです。いや、他の段階でも出るんだけどこの段階はとくに出る。ストレスホルモン言われるコルチゾールが減って、成長や免疫に関する『ソマトロピン』が分泌されて細胞の修復とかにも役立ちます。血圧や心拍も下がるので正真正銘の"熟睡"時間になるよね

 この段階を抜けると、睡眠は徐々に覚醒段階へ進んでいきます


:第4ステージ:

 いわゆる『レム睡眠』の段階

 レム睡眠とノンレム睡眠。このワードはアナタも聞いたことがあるでしょう。レム睡眠がいわゆる"浅い眠り"で、この時に夢を見るとされています。この時間帯以外をノンレム睡眠というイメージでおk

 レムってのは『 Rem = Rapid Eye Movement = 急速眼球運動 』の略。つまり寝てる時に目がギュンギュン動いてるの

 このステージ中も海馬や大脳皮質はコミュニケーションをとっています。ただ上記で書いたようにランダムで記憶が定着されるランダムガチャ的なアレ。それが関係してるかどうかわかりませんが、夢の内容があべこべなのはそのランダム性が理由なのでは? とされていますね

 レム睡眠中、眼球だけじゃなく呼吸や脈拍なども増加し、神経活動も活発になりほぼ覚醒時に近い状態となります。が、言うて眠ってるので身体は動かせません。まあ、たまに動くけどね……ちなみに、数時間の睡眠中、人は無意識に覚醒するタイミングがあります。ほんの一瞬だし記憶に残らないレベルなのでまたすぐ寝てしまいますが、もしかしたら「真夜中になんか起きたような気がする……」って感じがした場合、その記憶が残っているのかもしれません

 睡眠中、身体の機能は基本遮断されてますが、場合によっては寝返りとかで動くこともありますね。とはいえ、レム睡眠中ですらその程度。もし、アナタが睡眠中にも関わらず布団やベッドから出てそのヘン彷徨ってたりするなら、睡眠中何らかの問題が発生してる可能性もあるので、念のため睡眠外来に通うのもひとつの手段でしょう



 この他、ステージ2から3までの移行期も分けたりするのですが今回は割愛しました

 睡眠は上記の4ステージをひとまとめにし、おおよそ4回数繰り返して覚醒へと近づいていきます。その際、前のループより後のループの方が眠りが浅いので最初のループ、つまり眠りはじめからの90分間が最も重要視されてるんですね

 さいしょの眠りが浅ければ必然的に次の段階の眠りも浅くなる。そうなるとレム睡眠中ちょっとした衝撃で起きちゃったり、しっかり休息しきれず覚醒段階に進んじゃったりなどザンネンな結果になってしまうかもしれません

 睡眠は『マイナスをなくす』ことが基本です。睡眠不足はそのままパフォーマンスの低下に繋がり、いくら常時時短行為をしていたとしても睡眠不足分の思考能力低下ですべてがペイされてしまいます

 そんなのもったいなくない? ――時短や効率を考えるなら『しっかり眠る』ってのは基本中の基本だってことを覚えておきましょう

 着実な睡眠習慣を身につけて、アナタにとって最高のパフォーマンスを発揮できる"土台"を形成してください。アナタの人生に乾杯!


:いろいろ参考になるかも:
厚生労働省、健康づくりのための睡眠ガイド 2023
ttps://www.mhlw.go.jp/content/001208247.pdf
厚生労働省、e-ヘルスネット
ttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
奈良県臨床検査技師会
ttps://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/2005/kirei/nouha_suimin/nouha_suimin.html
日本睡眠学会
ttps://jssr.jp/
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