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作者: konoyo
R-15
帰る道・逝く道
随分と長い儀式を終えて卒業式の日程は終了した。みなおしゃべりをしながら教室を出たり、その場で友人同士話をする者、様々だった。あたしのところにはいつものふたりがやってきて、

「これからどうするの?」

「ううん。全然予定なんてない。」

とやり取りをしたあと、ふたりがあたしに肩を貸してくれて、いつも3人で話をしていた陽だまりまで連れて来てくれた。ここにくるとなんか落ち着く。黙っていてもここに連れて来てくれるということは、果歩ちゃんと美羽ちゃんにとってもここが特別な場所だと思っていてくれていたのだろう。あたしは、それだけでちょっと泣きそうになって下を向きながらここまで歩いてきた。

「亮君にはなにかお話しなくていいの?」

果歩ちゃんにそう聞かれた。

「今晩、うちで卒業のお祝いをすることになっているの。だから、昼間はほったらかしても大丈夫だよ。」

あたしは、もう長いこと亮君と連れ添っているかのように答えた。

「誰をほったらかすの?」

あたしの後ろから首を突っ込んできた亮君があたし達3人を覗き込んできた。彼は少しだけ意地悪そうな口調と表情でそう言った。亮君のことをいかにも自分のものだからって感じで発言した自分が少し照れくさかった。

「せっかくだから今日は4人で帰ろうよ。」

果歩ちゃんが明るい声で提案したが、あたしはちょっとだけ不安だった。帰るときにもしかして体調が悪くなったりしないだろうか。

まあ、周りにいてくれるのがこの3人ならこれほど頼もしいこともないか。お母さんに確認をとったら少しだけ悩んだけど、やっぱりOKを出してくれた。ただし、あんまり寄り道をしないで帰るようにと。

実はこの4人で帰り道を歩くことは初めてのことなのだ。亮君とふたりで帰るときには果歩ちゃんと美羽ちゃんは気を使って別々に帰るし、その反対のときは亮君が気を使ってあたしはふたりの友人と帰るのだった。あたしはこの4人で下校出来るということがとても幸せだった。そして、今日は特にみんなに話したいことがあった。
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