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作者: konoyo
R-15
涙のわけは?
 もしも、あたしがあと三年強で死んだら家族のみんなはどんな声を出してくれるのだろう。やはり涙を流してくれるのだろうか。どんな顔であたしの死体を見つめるのだろう。想像が及ばない。いや、岳人の泣き顔なんて想像したくもない。あたしが死ぬことも怖ろしかったけど、岳人達に悲しい想いをさせることも悍しい。死に恐怖を感じる理由ははっきりとは分からなかったけど、岳人を泣かせることは明らかに忌まわしい。それは理由が分かるとか分からないではなくて、理由などないのだ。もしかしたら岳人達に嘆かわしい思いをさせなければ、死が与える恐怖心など耐えられるものかもしれない。それは願望でもあり、期待でもあった。

 あたしの溢れる涙を止めることなど敵わなかった。どうして涙が流れるのか分からないのだもの。止める術など分かるはずもないでしょ。まったくこの世は分からないことばかりで不便で仕方がない。

 夜はとにかく長かった。死ぬという事実が怖ろしい。そのことで誰かが泣いてしまうことはとても切ない。ふたつの感情は途切れることなく交互に続いて、いつの間にか窓の隙間から朝日が差し込んできた。

 それが何時だったのかは確認もしていない。ただ、さすがに苦しみ疲れてようやく眠りに堕ちた。その後、目が覚めたときのこともあたしはまるで覚えていない。
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