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作者: 清水レモン
導かれていく
 階段を登り切ると校庭だった。校庭?
 いちめんの土、黒いというより赤くて茶色い。校庭の向こうに崖そびえ、はげ山のよう。
 耳をすませばパラパラと落石のような音の気配。石というよりは土の塊かな。
 校庭を囲むように校舎、それと体育館かな。ひとつだけ、ひときわ赤い曲線の建物。
 
 「おー。よく来たなー」

 と声がしたので顔を向けると、さっきとは別の背の高い紳士。すらりとした身長の高さが上品さをたたえている。が、その目線は容赦なく鋭く感じられる。

 さっきとは逆。こちらの先生は殺気まる出しかよ?
 
 言葉こそ丁寧で優しい響きだが、うっかり近づきすぎると胴体真横にまっぷたつ。斬られる!
 そう思った。
 おそるおそる歩み寄れば、先生の前には数人の…生徒たち、受験生か。だろうな、だよな?

 「じゃあひとまず行くかー。こっち、ついてこーぃ」

 ぎろり睨まれながら返事をするのを忘れてうなずいてしまう、あわてて「はい」と答えたが。
 
 「うん。靴そのままでいいからなー。気にするなー。こーぃ」
 と先生と目が合った。
 ほんの一瞬だけ、口元だけでなく目も笑って見えた。
 まるでなんていうか、こちらの弱点を見抜いたかのような笑み。
 こ、これは、まさかのまさかで…

 すでにもう、なにか見破られてしまっている?

 おれは愕然とした。
 入学試験の緊張?
 そんなの感じてる場合ではなかった。おれには命のやりとりのような気迫に思えてしまったから。
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