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作者: Siranui
残酷な描写あり
第十話「迫る未来」
 あらすじ

「ふざっ……けるな……!! おらあああ!!」

 暗黒神の言葉に惑わされ、真に受けてしまった八岐大蛇ヤマタノオロチは、視界に映る魔物を無慈悲に殺す。

 そんな中再びアレスが大蛇の暴走を止め、大蛇は無事自我を取り戻したのであった――




 あれから約10分程度歩いただろうか。それでもこの道を出られる気配もない。歩いても歩いても同じ猛吹雪で荒れる白い道が永遠に続く。

「……もし今の俺が死んだら、次は何になるんだろうな」

 ありもしない未来を想像してしまう。いや、あってほしくない未来と言うべきか。これ以上生きていても過ちは償えない。最初の時もそうだ。結局今も引きずったままではないか。

 ――何が殺せば過ちが償われるだ。冒涜を言うならもっと面白い冒涜を言ってほしいところだ。

「ねぇ、お兄さん。今何考えてた?」
への悪口言ってたよね〜」
「――!!」

 素早く後ろを向く。そこにはそれぞれ赤いスカートと水色のスカートを着た瓜二つの少女が立っていた。

 こんな猛吹雪の中、上着を羽織っていないのは流石に驚いた。だが、それは病衣を着ている俺も二人の事は言えない。

「あの方に逆らう人は殺さないとね〜」
「まさか。反逆者さんって」

 二人の少女は俺を嘲笑するかのように見つめる。その瞳は正しく悪魔に等しい。

「あの方……?」
「お兄さんなら分かるでしょ? あの方」
「分かるでしょ〜?」

 あの方。そう、言うまでもない。一先ひとまずそいつもこの二人も俺の敵と言う事だ。どの道殺す存在なのだ。なら……

 俺は右手から剣を召喚し、左にいる赤いスカートの少女に横から薙ぎ払う。それを少女は体制を低くして避ける。

「おっと、危ないな〜お兄さん。いきなり剣を振り回すなんて」
「これでもか弱い女の子なんだよ〜?」
「黙れ。早かれ遅かれ殺さないといけなくなるからな」
「はぁ〜、しょうがないな。ピコ、早速だけど使っちゃう?」
「そうだね、使っちゃうか!」
 
 二人の少女が右手をかざして試験管のようなものを召喚する。中にはそれぞれ紫色の液体と緑色の液体が入っている。

「お兄さんには先行公開になっちゃうけど……」
「特別に見せてあげる!」

 そう言うと二人は試験管を逆さにし、白い地に液体を垂らす。混ざりあった瞬間一気に白い煙が液体から発生し、吹雪によって煙が少女達の方向に飛んでくる。

「どうしよマコ! 煙が私達の方に!!」
「魔法使いさん! この吹雪何とかして!」

 マコと名乗る少女が呼んだ刹那、黒い影が現れ、両手を翳す。しかし、両手はローブが大きすぎるが故に一切見えない。

 無言で詠唱したのか、現れてから十秒も経たずに吹雪は一瞬にして止んだ。そして煙が上空に舞うようになった。

「あ、お兄さん気をつけてね。この煙は魔物を引き寄せるから」
「早く逃げないと死んじゃうよ〜」
「ちっ……!」

 振り向くともう眼の前まで先程と同じ魔物が近づいている。こうなれば戦うしか無いのか。

 あの液体も何かしら俺に害を与えてくるに違いない。早いうちに魔物を何とかしなければ……!

「畜生め……!」

 とは言ってもこの数ではとても倒しきれない。多分逃げる途中で殺される。この僅かな体力でどうしろと言うんだ……!

 考えてる内にも魔物の大群が俺に襲いかかってきた。こうなったら考えてる暇はない。

「『神器解放エレクト』!」

 右手に持つ黒剣が無数の直線みたいな形に分裂し、俺の周りを飛び回った。右手には同じ色の細かい紋章が出てきた。

「な、……何あれ!?」
「ピコ、私に聞いても困るよ〜!」

 これには流石の二人も驚く。それもそのはず。何故ならこれは……

「絶体絶命の危機にしか使わない、俺のとっておきだ……はあっ!」

 少ない体力で無数の魔物を倒す唯一の術。これは、今まで生きてきた……いやこれからも俺の中で唯一無二となるとっておき

 ――即ち、『最終奥義』に等しい技。

 右手を魔物の大群に向けて翳すと、無数の線がペルセウス座流星群の如く魔物の身体を一瞬にして穿つ。魔物は声も出せずにその場に倒れて黒い塵となる。

「うおおおおお!!!」

 俺は地割れを起こすのかと思う程強く地を蹴る。音速を超える速さで魔物の大群から抜け出した。線が敵を見つけては光のような速さで飛んでは確実に一撃で血も出さずに殺す。

「がああああ!!」

 千は軽く超えるほどの魔物も一分も経てばただの雪道と化していた。


「はぁっ、はぁ……」
 
 俺はとっくに息が切れていた。無数の糸も一つになって黒剣となり、俺の右手に収まる。紋章も消えていた。

 後ろを向くとあの少女二人の姿も無くなっていた。一先ず安堵し、一歩を踏み出す寸前にさっきも聞いた少女の声が聞こえた。

『ふふっ、お兄さんは面白いね。ただの反逆者ってわけじゃないみたいだし、何よりそんな強い魔法を持ってるんだね』
『ふふふっ、また会おうね、お兄さん!』

 もちろん後ろを向いても誰もいない。分かっている。でも何故かすぐ背後にいるような気がしてたまらなかった。

「……二度と会うものか」

 俺は遠くにいるであろう少女達にそう言いながら右足を踏み出す。しかし、目の前にはさっきまで乗っていた車が止まってある家が見えた。
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