残酷な描写あり
第一話「全ての始まり」
これは運命の日……2005年1月11日までを描いた、今そして未来へ繋がる物語――
………。
………………………。
ここはどこだ。何故身体が動かないのだ。まるで重力に押し潰されてるかのように。
俺は死んだのか……そもそもどうやって死んだ?
――あぁ、そうだ。思い出した。首を焼かれたのか。あの時の俺は八つの首を持った蛇竜だったからな。
竜族の中でも俺の名は恐れられてたっけ。それもそうか。何を言おう、俺は『厄災竜』……八枚舌で有名なヤマタノオロチなのだから。
でも、そんな人々に恐れられていた俺に恐れること無く、逆に微笑んでくれた女神の少女もいた。
『大蛇くんっ――!!』
ちょっともないきっかけだが、これが俺の……初めての恋だった。ここまで守りたい、大切にしたいと思ったのは彼女だけだった。
『大蛇、くん……?』
――でも、守れなかった。むしろこの手で殺めてしまった。
それが俺に課せられた永遠の『過ち』。運命の歯車が狂い出した原点はここにある。
【お前はいつまで経っても彼女を守れない。そういう運命……いや、宿命なのだ。お前は己の大切なものを次々とその血塗られた手で殺め続けるのだ。
これは決して変えられない。かつて厄災竜として世界を焼き尽くし、人々に恐怖を与えた存在に相応しい運命だ。
受け入れろ、英雄。お前は永遠に裏切り続ける。大切なものを失い続ける。過ちを犯し続ける。
そして最終的にはあらゆるものから傷つけられ無様に散る。その後もお前は歴史の塵にもならずに消えるのだ。諦めろ、お前如きに何も変えられない――】
あぁ、嫌な声が聞こえる。だがその通りとしか言えない。今の俺には何も変えられない。何も守れない。
愛するものさえもこの身で……魂で失うんだ。
身体は無いが、心の中で深い溜息を吐いた。その嫌な声も溜息と共に外に出るのを感じた。
「っ………!」
目を覚ます。青白い光が眩しくてつい目を瞑る。その次に肌寒さを感じる。
無意識に身体が震え、いち早くエレイナの部屋に戻らなくては――と思い身体を起こす。
だが、まず感じたのはこの身体による違和感からだった。
「な……何だこれはっ!?」
あの頃とは全く違う別の身体になっていた。視界がとてつもなく狭い。普段なら八つの首を使って360度くらい容易く見れたが、この身体では180度しか見れない。しかも横に動かす感じだと、真後ろは見れない。
………どうなってるんだ、この身体は。
その代わりと言っても良いのだろうか。元々首がついてあった部分に腕がついている。
その先には竜の爪に近いものが片方に5本ずつついている。爪も小さく鋭くない。これでどう戦えというんだ。
「っ――!?」
試しに腕を動かして見たが、5本ずつ生えてるものに関節がついていてとても気味が悪かった。
「ちっ……気持ち悪いなこれ」
慣れてないだけかもしれないが、耳に関節がついている状態で無意識に動いてる感じがする。それくらい気持ち悪い。伝わらないとは思うが。
だが、あの時のエレイナにもこんなのが身体についていたような気がする………そう思うだけでも良しとしよう。
次に腹。あの頃よりもほっそりとしていて弱そうな身体。これだと竜の炎程度で簡単に焼き焦げてしまう。
……あれか、これが『過ち』を犯した俺への天罰なのか。一時の家族を、友を、恋人を裏切った俺に与えられた罪の代償なのだろうか。そう言われても納得がいく身体だ。
尻尾の感触も一切無い。太腿からは膝にかけても竜のようにがっしりしてなく、真っ直ぐで美しい形をしている。
だが、その中にもがっしりしているところもある。何とも不思議だ。足も先程の腕同様、動かすと気持ち悪い5本ずつ生えたものがある。
「明らかに竜の身体じゃないな……」
俺は生まれ変わったのか? なら何故竜ではないのだ?
そもそも何故俺は生きているのか――
「あ、ようやくお目覚めかしら?」
突然何かが開く音が聞こえ、そこから一人の女性が姿を現した。肩まで届く栗色の長髪にサファイアのような青く輝く瞳。
黒い衣服のようなものを着ていて、眼鏡がとても似合う女性だ。
そんな女性が俺――八岐大蛇の様子を見に来てくれた。
「こ、ここは……」
そう、まずはこの状況からだ。何もかもが分からないこの場所で今俺はどういう状況なのかを説明してほしいところだ。
「ここは東京都足立区にある『機密特殊任務部隊ネフティス』の仮眠室よ………これで伝わるかしら?」
「……構わない」
東京……か。俺の生きていた頃からかなり変わっているな。あの女の服装も全く見慣れない。もしかしたら江戸という街も滅びたのだろうか。
それに、何かの組織の中にいるって言ってたよな……生まれ変わってすぐ俺は罪人なのだろうか。
色々と考え込んでしまう大蛇に女性は微笑む。
「ふふっ……考えすぎは良くないわよ、『転生者』さん」
「てっ………!?」
「自己紹介が遅れたわね。私は機密特殊任務部隊ネフティス本部長の『錦野智優美』よ。しばらくあなたはここで過ごしてもらうからその間よろしくね」
い、色々聞きたいことが山積みだが、それは追々この人に聞くとしよう。
「……八岐大蛇だ。これからよろしく頼む」
全ては、ここから始まった。彼らを誘う残酷な運命はここから動き出したのである。
………。
………………………。
ここはどこだ。何故身体が動かないのだ。まるで重力に押し潰されてるかのように。
俺は死んだのか……そもそもどうやって死んだ?
――あぁ、そうだ。思い出した。首を焼かれたのか。あの時の俺は八つの首を持った蛇竜だったからな。
竜族の中でも俺の名は恐れられてたっけ。それもそうか。何を言おう、俺は『厄災竜』……八枚舌で有名なヤマタノオロチなのだから。
でも、そんな人々に恐れられていた俺に恐れること無く、逆に微笑んでくれた女神の少女もいた。
『大蛇くんっ――!!』
ちょっともないきっかけだが、これが俺の……初めての恋だった。ここまで守りたい、大切にしたいと思ったのは彼女だけだった。
『大蛇、くん……?』
――でも、守れなかった。むしろこの手で殺めてしまった。
それが俺に課せられた永遠の『過ち』。運命の歯車が狂い出した原点はここにある。
【お前はいつまで経っても彼女を守れない。そういう運命……いや、宿命なのだ。お前は己の大切なものを次々とその血塗られた手で殺め続けるのだ。
これは決して変えられない。かつて厄災竜として世界を焼き尽くし、人々に恐怖を与えた存在に相応しい運命だ。
受け入れろ、英雄。お前は永遠に裏切り続ける。大切なものを失い続ける。過ちを犯し続ける。
そして最終的にはあらゆるものから傷つけられ無様に散る。その後もお前は歴史の塵にもならずに消えるのだ。諦めろ、お前如きに何も変えられない――】
あぁ、嫌な声が聞こえる。だがその通りとしか言えない。今の俺には何も変えられない。何も守れない。
愛するものさえもこの身で……魂で失うんだ。
身体は無いが、心の中で深い溜息を吐いた。その嫌な声も溜息と共に外に出るのを感じた。
「っ………!」
目を覚ます。青白い光が眩しくてつい目を瞑る。その次に肌寒さを感じる。
無意識に身体が震え、いち早くエレイナの部屋に戻らなくては――と思い身体を起こす。
だが、まず感じたのはこの身体による違和感からだった。
「な……何だこれはっ!?」
あの頃とは全く違う別の身体になっていた。視界がとてつもなく狭い。普段なら八つの首を使って360度くらい容易く見れたが、この身体では180度しか見れない。しかも横に動かす感じだと、真後ろは見れない。
………どうなってるんだ、この身体は。
その代わりと言っても良いのだろうか。元々首がついてあった部分に腕がついている。
その先には竜の爪に近いものが片方に5本ずつついている。爪も小さく鋭くない。これでどう戦えというんだ。
「っ――!?」
試しに腕を動かして見たが、5本ずつ生えてるものに関節がついていてとても気味が悪かった。
「ちっ……気持ち悪いなこれ」
慣れてないだけかもしれないが、耳に関節がついている状態で無意識に動いてる感じがする。それくらい気持ち悪い。伝わらないとは思うが。
だが、あの時のエレイナにもこんなのが身体についていたような気がする………そう思うだけでも良しとしよう。
次に腹。あの頃よりもほっそりとしていて弱そうな身体。これだと竜の炎程度で簡単に焼き焦げてしまう。
……あれか、これが『過ち』を犯した俺への天罰なのか。一時の家族を、友を、恋人を裏切った俺に与えられた罪の代償なのだろうか。そう言われても納得がいく身体だ。
尻尾の感触も一切無い。太腿からは膝にかけても竜のようにがっしりしてなく、真っ直ぐで美しい形をしている。
だが、その中にもがっしりしているところもある。何とも不思議だ。足も先程の腕同様、動かすと気持ち悪い5本ずつ生えたものがある。
「明らかに竜の身体じゃないな……」
俺は生まれ変わったのか? なら何故竜ではないのだ?
そもそも何故俺は生きているのか――
「あ、ようやくお目覚めかしら?」
突然何かが開く音が聞こえ、そこから一人の女性が姿を現した。肩まで届く栗色の長髪にサファイアのような青く輝く瞳。
黒い衣服のようなものを着ていて、眼鏡がとても似合う女性だ。
そんな女性が俺――八岐大蛇の様子を見に来てくれた。
「こ、ここは……」
そう、まずはこの状況からだ。何もかもが分からないこの場所で今俺はどういう状況なのかを説明してほしいところだ。
「ここは東京都足立区にある『機密特殊任務部隊ネフティス』の仮眠室よ………これで伝わるかしら?」
「……構わない」
東京……か。俺の生きていた頃からかなり変わっているな。あの女の服装も全く見慣れない。もしかしたら江戸という街も滅びたのだろうか。
それに、何かの組織の中にいるって言ってたよな……生まれ変わってすぐ俺は罪人なのだろうか。
色々と考え込んでしまう大蛇に女性は微笑む。
「ふふっ……考えすぎは良くないわよ、『転生者』さん」
「てっ………!?」
「自己紹介が遅れたわね。私は機密特殊任務部隊ネフティス本部長の『錦野智優美』よ。しばらくあなたはここで過ごしてもらうからその間よろしくね」
い、色々聞きたいことが山積みだが、それは追々この人に聞くとしよう。
「……八岐大蛇だ。これからよろしく頼む」
全ては、ここから始まった。彼らを誘う残酷な運命はここから動き出したのである。