残酷な描写あり
第七十四話「新たな生活」
――一閃。たったこの一振りで勝負が決まる。
「がっ……」
「ふふっ、勝負あったね」
負けた……俺が。『海の魔女』や『黒花』を倒してきた俺が負けた。痛い。敗北の痛みだ。腹部の傷口から鮮血が飛び散るのを感じた。視界がぐらりと揺らいだ。
「あ、ごめんね……大丈夫?」
意識を失う俺に気づき、すぐに右手を翳して回復魔法を唱える。
「……ふぅ」
傷を治し、ミスリアは片手で俺を肩に担ぎながら正門を通った。
アルスタリア高等学院 特殊区分生徒用教室――
普通の教室とは違い、それなりのホテルの一室かのような風景が広がる。ここが俺――黒神大蛇の通う教室だ。とても教室とは思えないが。
「あ、起きた! 早いね〜、私の攻撃を受けたら普通は2日3日は起きないのに」
「嬉しいような嬉しくないような……」
寝起きだからかあまり気分が乗らない俺に、ミスリアはくすりと笑った。
「じゃ、起きたことだし今からご飯作るね」
「……は?」
「だから、私が作るの! 君のご飯!」
刹那、ミスリアの身体が青い光に包まれる。その光が徐々にエプロン衣装へと変化していく。
「どう? 似合うでしょ」
「……それ今聞いてどうするんだ」
「も〜冷たいな〜! そこは『似合うと思うよ☆』とか言ってくれないと〜!」
そんなの咄嗟に考えられるわけがない。というかそれを言う俺とか自分でも考えられない。
「俺にそんな思考が出来ると思うのか」
「そんな顔しなくてもいいじゃ〜ん! もう、今から作ってくるね!」
ミスリアは少し気恥ずかしそうにしながらスタスタとキッチンへと歩いていった。
どうせベッドにいるのだし、今はもう一度寝よう。海の魔女や黒花との戦闘でこれでもかなり疲れが溜まっている。少しでも身体を休まなければ……
――しかし、これは大きな罠だった事に俺は気づくはずも無かった。
「……お〜い、オロチく〜ん、ご飯できたよ〜」
耳元で囁かれる。吐息が耳をくすぐる。眠っていた身体が震える。そして強制的に目が覚める。
「あははっ、君性格の割に可愛いんだね」
「……あんたこれでも先生のつもりか」
「うん、これでも先生だよ。君専用の……ねっ♪」
何か嫌な予感がしてすぐさまベッドから抜け、二人分の料理が並ぶテーブルへと向かう。
「もう……私にしては珍しく可愛い生徒を拾っちゃったな♪」
こんな子がネフティス総長とかになるって考えたら感慨深いよね〜。
「あの子を見てると君を思い出すよ……凪沙ちゃん……なんてね」
今頃何してるのかな……あの頃より少しは笑えるようになったかな……そうだといいな。
「――ふふっ」
「……何か可笑しいこと言ったか?」
「いいや、何でもないよ〜!」
「そう言われると余計気になるんだが……」
今は内緒だよと言うかのようにミスリアは悪戯っぽく笑った。そんな姿を見て、そろそろほんとに先生なのか疑ってしまう俺であった。
「がっ……」
「ふふっ、勝負あったね」
負けた……俺が。『海の魔女』や『黒花』を倒してきた俺が負けた。痛い。敗北の痛みだ。腹部の傷口から鮮血が飛び散るのを感じた。視界がぐらりと揺らいだ。
「あ、ごめんね……大丈夫?」
意識を失う俺に気づき、すぐに右手を翳して回復魔法を唱える。
「……ふぅ」
傷を治し、ミスリアは片手で俺を肩に担ぎながら正門を通った。
アルスタリア高等学院 特殊区分生徒用教室――
普通の教室とは違い、それなりのホテルの一室かのような風景が広がる。ここが俺――黒神大蛇の通う教室だ。とても教室とは思えないが。
「あ、起きた! 早いね〜、私の攻撃を受けたら普通は2日3日は起きないのに」
「嬉しいような嬉しくないような……」
寝起きだからかあまり気分が乗らない俺に、ミスリアはくすりと笑った。
「じゃ、起きたことだし今からご飯作るね」
「……は?」
「だから、私が作るの! 君のご飯!」
刹那、ミスリアの身体が青い光に包まれる。その光が徐々にエプロン衣装へと変化していく。
「どう? 似合うでしょ」
「……それ今聞いてどうするんだ」
「も〜冷たいな〜! そこは『似合うと思うよ☆』とか言ってくれないと〜!」
そんなの咄嗟に考えられるわけがない。というかそれを言う俺とか自分でも考えられない。
「俺にそんな思考が出来ると思うのか」
「そんな顔しなくてもいいじゃ〜ん! もう、今から作ってくるね!」
ミスリアは少し気恥ずかしそうにしながらスタスタとキッチンへと歩いていった。
どうせベッドにいるのだし、今はもう一度寝よう。海の魔女や黒花との戦闘でこれでもかなり疲れが溜まっている。少しでも身体を休まなければ……
――しかし、これは大きな罠だった事に俺は気づくはずも無かった。
「……お〜い、オロチく〜ん、ご飯できたよ〜」
耳元で囁かれる。吐息が耳をくすぐる。眠っていた身体が震える。そして強制的に目が覚める。
「あははっ、君性格の割に可愛いんだね」
「……あんたこれでも先生のつもりか」
「うん、これでも先生だよ。君専用の……ねっ♪」
何か嫌な予感がしてすぐさまベッドから抜け、二人分の料理が並ぶテーブルへと向かう。
「もう……私にしては珍しく可愛い生徒を拾っちゃったな♪」
こんな子がネフティス総長とかになるって考えたら感慨深いよね〜。
「あの子を見てると君を思い出すよ……凪沙ちゃん……なんてね」
今頃何してるのかな……あの頃より少しは笑えるようになったかな……そうだといいな。
「――ふふっ」
「……何か可笑しいこと言ったか?」
「いいや、何でもないよ〜!」
「そう言われると余計気になるんだが……」
今は内緒だよと言うかのようにミスリアは悪戯っぽく笑った。そんな姿を見て、そろそろほんとに先生なのか疑ってしまう俺であった。