残酷な描写あり
第六十九話「入学前試験(下)」
――急げ。新入生が全滅する前に。止まるな。ここで止まったら全てが終わる気がするから。
……早く加勢しなければ、新入生全員病院送りだ。
俺――黒神大蛇はひたすら走っていた。教会に戻るために。生徒会を倒すために。卑怯で満ち溢れたこの試験を終わらせるために。
「……思い切り振るぞ。酔っても知らないからな」
『わ、私はその……剣なので……その、よ、酔いません……!』
ならいいかと勝手に解釈し、思い切り地を蹴って飛んだと同時に勢いをつけるために魔剣で何度も円を描くように回転する。刀身から徐々に闇のオーラが放たれ、軌道に合わせて舞う。
「うおおおおおお!!!」
教会めがけて回転で勢いをつけた一振りを喰らわせる。刹那、教会が真っ二つに斬り裂かれた。衝撃で教会の屋根は吹き飛び、外から見ても教会の中が丸見えになっている。
「な、なんだ……!」
新入生の一人が衝撃に耐えながら衝撃の発生源を見る。そこには俺――黒神大蛇が立っていた。
「待たせたな……ベディヴィエル・レント」
俺は魔剣を肩に担ぎながら正面に立つ純白の生徒会長に目を向ける。
「君がネフティス推薦の一人……『黒き英雄』の異名を持つオロチ・クロガミか。やはり君は我々の想像を超える逸材……是非こちらから対戦願おう!」
するとベディヴィエルは勢いよく飛び、俺めがけて青白い光を帯びた剣を振り下ろす。俺は肩に担いだ魔剣を降ろし、剣を逆手に取り、右腕の振り上げる力だけでベディヴィエルの剣を受け止める。周囲に火花と稲妻が散る。
「その剣……中々の代物だね! やはり君レベルになると専用の神器も与えられるのかな!?」
「生憎こいつは拾ってきたものだ。まだ扱い慣れてないが一応俺の武器だ!」
頭上に半円を描くように振り払い、ベディヴィエルの体制を崩す。そこめがけて下から回転するように斬り上げる。
「っ――!」
しかし、ベディヴィエルはそれを予知したかのように回転して腹部に当たる寸前で剣を前に置く。再び火花が散った。
……流石生徒会長と言うべきか、剣の腕は確かなものだ。恐らくこいつもネフティス推薦で入学したのだろう。
「惜しいな……もうちょっと速く振れば当たってたのにね!」
「ちっ――!」
見事に弾かれ、骨組みが顕になった柱に思い切り背中をぶつける。幸い骨は折れなかったが衝撃で背中が痺れて動けない。
「これで……終わりだ!」
そんな俺に容赦なくベディヴィエルの聖剣は目の前まで迫っていく――
チリーン……チリリーン…………
鐘のような音色が聞こえる。途端、背後から雷が落ちたかのような衝撃が走った。
「……恋鐘之刀・天雷之戒刃」
刹那、ベディヴィエルの背後から豪雷のような轟く音と共に桃色の稲妻が聖剣を真っ二つに斬った。
「何っ――!?」
俺と同じネフティスの制服に見覚えのある刀を降ろした青年が俺に背中を向けて立っていた。
「おいおい、ネフティス推薦者は黒坊だけじゃねぇぜ!」
「ちっ……剣を折られるとは!」
一度ベディヴィエルが下がると、すぐに残りの生徒会員がそれぞれの魔法を俺と正義弐飛ばす。だが、それも呆気無く新入生達に封じられていた。
「まだ新入生は生きてるぜええ!!」
「一年舐めんじゃねぇぞ!!」
「くっ……邪魔だ!」
「兄貴、やるなら今だ!」
「おう! ……黒坊、立てるか」
あまりの痛みで声こそ出なかったものの、まだ行けるので軽く頷いた。少しよろめきながらもしっかり両足で立ち上がる。
「さぁ、生徒会狩りの続きと行こうじゃねぇか!!」
その後、うおおおおおっという雄叫びを新入生達が吠えながら突撃する。俺達を含めると残り僅か20人程度の新入生と残り4人の生徒会が再びぶつかり合う。
「『地神之逆鱗』!!」
生徒会の魔法使い達はそれぞれの属性魔法攻撃で新入生達の行く手を阻む。
「てめぇら! 生徒会長さんを除く奴らは全員それぞれの属性しか使えねぇ! 弱点属性ねらってくぞおお!!」
少し巨体の新入生が全員に指示し、それぞれ片手で魔法を生成する。
「天風!」
「獄炎!!」
「喰らえ、塵氷!」
それぞれが得意とする属性の魔法を放つ。が、生徒会側の強力な魔法によって打ち消される。その隙を狙って俺と正義が叩き込む。
「恋鐘之刀・天馬烈光」
「冥鬼裂斬」
互いに相反せし光が剣を帯びながら無数の軌道を描く。
「おい、こっちに来るぞ! 誰でもいいから止めろ!」
「くそっ、こんな時に副会長がいれば……!」
突然の奇襲で慌てている生徒会一行はただ俺と正義の連撃にやられるがままになった。が、ベディヴィエルだけは連撃を半身の剣で受け流しつつ避け、徐々に俺との間合いを詰めていく。
「うおおおお!!」
「これで終わりにしよう……『天神之烈光』!!」
ベディヴィエルが刀身を俺に突こうとした刹那、一筋の閃光が俺の腹部を貫いた。
「がっ……」
「黒坊!! ……ってくそっ!」
形勢逆転された大蛇に集中してしまい、その隙を取られた正義も土属性魔法によって絶対絶命の危機に立たされた。巨大な柱のような6本の岩が正義を囲った。
「トドメ……! 『操岩死槍』!!」
6本の岩の先から無数の矢のようなものに変化し、動けなくなった正義に襲いかかる。
「うぐっ……がああ!!」
無数の槍は正義の全身を貫き、魔法が解けると同時に砕け散る。そのまま正義はその場に倒れた。そして俺も力が完全に抜け、真下の床に倒れた。
残りの新入生達も生徒会の強力な魔法にやられたのか、全滅となってしまった。
「うん……今年はやっぱり強いね。というかここまで強いとは予想外だったよ」
「私達も本気を出してもこれですからね……相当強いですよ今年は」
「特に推薦で選ばれたこの二人……期待ですね」
何とか生き残った4人の生徒会達が集まり、新入生達の倒れる姿をじっと見ていた。
そこに、異常な程眩しい光が差し込んだ。
「あっつ……って、何これ!?」
「太陽……だというのか!?」
全員が驚く。それもそのはず。何故なら彼はほとんどこの試験に参加しなかったのだ。
――本来の力を取り戻すために。
「おいおい試験はまだ終わんねぇぜ……この俺様を倒してから安心してくれよなぁ……!!」
……早く加勢しなければ、新入生全員病院送りだ。
俺――黒神大蛇はひたすら走っていた。教会に戻るために。生徒会を倒すために。卑怯で満ち溢れたこの試験を終わらせるために。
「……思い切り振るぞ。酔っても知らないからな」
『わ、私はその……剣なので……その、よ、酔いません……!』
ならいいかと勝手に解釈し、思い切り地を蹴って飛んだと同時に勢いをつけるために魔剣で何度も円を描くように回転する。刀身から徐々に闇のオーラが放たれ、軌道に合わせて舞う。
「うおおおおおお!!!」
教会めがけて回転で勢いをつけた一振りを喰らわせる。刹那、教会が真っ二つに斬り裂かれた。衝撃で教会の屋根は吹き飛び、外から見ても教会の中が丸見えになっている。
「な、なんだ……!」
新入生の一人が衝撃に耐えながら衝撃の発生源を見る。そこには俺――黒神大蛇が立っていた。
「待たせたな……ベディヴィエル・レント」
俺は魔剣を肩に担ぎながら正面に立つ純白の生徒会長に目を向ける。
「君がネフティス推薦の一人……『黒き英雄』の異名を持つオロチ・クロガミか。やはり君は我々の想像を超える逸材……是非こちらから対戦願おう!」
するとベディヴィエルは勢いよく飛び、俺めがけて青白い光を帯びた剣を振り下ろす。俺は肩に担いだ魔剣を降ろし、剣を逆手に取り、右腕の振り上げる力だけでベディヴィエルの剣を受け止める。周囲に火花と稲妻が散る。
「その剣……中々の代物だね! やはり君レベルになると専用の神器も与えられるのかな!?」
「生憎こいつは拾ってきたものだ。まだ扱い慣れてないが一応俺の武器だ!」
頭上に半円を描くように振り払い、ベディヴィエルの体制を崩す。そこめがけて下から回転するように斬り上げる。
「っ――!」
しかし、ベディヴィエルはそれを予知したかのように回転して腹部に当たる寸前で剣を前に置く。再び火花が散った。
……流石生徒会長と言うべきか、剣の腕は確かなものだ。恐らくこいつもネフティス推薦で入学したのだろう。
「惜しいな……もうちょっと速く振れば当たってたのにね!」
「ちっ――!」
見事に弾かれ、骨組みが顕になった柱に思い切り背中をぶつける。幸い骨は折れなかったが衝撃で背中が痺れて動けない。
「これで……終わりだ!」
そんな俺に容赦なくベディヴィエルの聖剣は目の前まで迫っていく――
チリーン……チリリーン…………
鐘のような音色が聞こえる。途端、背後から雷が落ちたかのような衝撃が走った。
「……恋鐘之刀・天雷之戒刃」
刹那、ベディヴィエルの背後から豪雷のような轟く音と共に桃色の稲妻が聖剣を真っ二つに斬った。
「何っ――!?」
俺と同じネフティスの制服に見覚えのある刀を降ろした青年が俺に背中を向けて立っていた。
「おいおい、ネフティス推薦者は黒坊だけじゃねぇぜ!」
「ちっ……剣を折られるとは!」
一度ベディヴィエルが下がると、すぐに残りの生徒会員がそれぞれの魔法を俺と正義弐飛ばす。だが、それも呆気無く新入生達に封じられていた。
「まだ新入生は生きてるぜええ!!」
「一年舐めんじゃねぇぞ!!」
「くっ……邪魔だ!」
「兄貴、やるなら今だ!」
「おう! ……黒坊、立てるか」
あまりの痛みで声こそ出なかったものの、まだ行けるので軽く頷いた。少しよろめきながらもしっかり両足で立ち上がる。
「さぁ、生徒会狩りの続きと行こうじゃねぇか!!」
その後、うおおおおおっという雄叫びを新入生達が吠えながら突撃する。俺達を含めると残り僅か20人程度の新入生と残り4人の生徒会が再びぶつかり合う。
「『地神之逆鱗』!!」
生徒会の魔法使い達はそれぞれの属性魔法攻撃で新入生達の行く手を阻む。
「てめぇら! 生徒会長さんを除く奴らは全員それぞれの属性しか使えねぇ! 弱点属性ねらってくぞおお!!」
少し巨体の新入生が全員に指示し、それぞれ片手で魔法を生成する。
「天風!」
「獄炎!!」
「喰らえ、塵氷!」
それぞれが得意とする属性の魔法を放つ。が、生徒会側の強力な魔法によって打ち消される。その隙を狙って俺と正義が叩き込む。
「恋鐘之刀・天馬烈光」
「冥鬼裂斬」
互いに相反せし光が剣を帯びながら無数の軌道を描く。
「おい、こっちに来るぞ! 誰でもいいから止めろ!」
「くそっ、こんな時に副会長がいれば……!」
突然の奇襲で慌てている生徒会一行はただ俺と正義の連撃にやられるがままになった。が、ベディヴィエルだけは連撃を半身の剣で受け流しつつ避け、徐々に俺との間合いを詰めていく。
「うおおおお!!」
「これで終わりにしよう……『天神之烈光』!!」
ベディヴィエルが刀身を俺に突こうとした刹那、一筋の閃光が俺の腹部を貫いた。
「がっ……」
「黒坊!! ……ってくそっ!」
形勢逆転された大蛇に集中してしまい、その隙を取られた正義も土属性魔法によって絶対絶命の危機に立たされた。巨大な柱のような6本の岩が正義を囲った。
「トドメ……! 『操岩死槍』!!」
6本の岩の先から無数の矢のようなものに変化し、動けなくなった正義に襲いかかる。
「うぐっ……がああ!!」
無数の槍は正義の全身を貫き、魔法が解けると同時に砕け散る。そのまま正義はその場に倒れた。そして俺も力が完全に抜け、真下の床に倒れた。
残りの新入生達も生徒会の強力な魔法にやられたのか、全滅となってしまった。
「うん……今年はやっぱり強いね。というかここまで強いとは予想外だったよ」
「私達も本気を出してもこれですからね……相当強いですよ今年は」
「特に推薦で選ばれたこの二人……期待ですね」
何とか生き残った4人の生徒会達が集まり、新入生達の倒れる姿をじっと見ていた。
そこに、異常な程眩しい光が差し込んだ。
「あっつ……って、何これ!?」
「太陽……だというのか!?」
全員が驚く。それもそのはず。何故なら彼はほとんどこの試験に参加しなかったのだ。
――本来の力を取り戻すために。
「おいおい試験はまだ終わんねぇぜ……この俺様を倒してから安心してくれよなぁ……!!」