残酷な描写あり
第六十六話「入学前試験(上)」
4月7日 アルスタリア高等学院入学式当日――
「――この度は皆の入学を、このベディヴィエル・レントが在校生を代表してここに祝福する!」
アルスタリア高等学院2年生徒会長のベディヴィエル・レントと名乗る男が俺――黒神大蛇とその一行を含む計725人の入学を祝福した。彼は白銀の鎧を身に纏い、背中に神器と思われる聖剣を差している。
……これで生徒会長としての威厳、そして圧倒的な力を俺達新入生に示しているのだろう。決して逆らえないという呪縛でもかけているかのように。
「――私は君達にはとても期待している。過去最多に及ぶネフティス推薦者に数々の功績を残した者がこの新一年生の中にいる! たとえそうでないとしても、そんな彼らにもそれぞれ隠し持つ潜在能力を開花させられる事を私は信じている。是非、これから私達と共にネフティスメンバーへの切符を掴もう!!」
途端、周囲から歓声があがった。それほどあの生徒会長は信頼されてるということなのだろうか。
「では、担任の先生を紹介する前に……これから君達には試験を受けてもらう!」
途端、今度は『はぁ〜!?』とか『え〜!!』っといった予想だにしなかった事に新入生の全員が驚きを隠せずにいた。
「試験……?」
「ま、ままままさかぺぺぺぺペーパーテストだとかいいいい言わないよなああ!!??」
俺の左隣に座る正義が全身を震わせながら大声で言った。それをベディヴィエルはしっかりと聞き取って笑った。
「あはは、流石にそんな事はしないよ。これから受けてもらうのは実技試験さ。君達全員で、私達生徒会長を倒してもらう」
あらゆる場所から『はぁ〜!?』とか『出来るわけねぇだろ!!』といった怒涛の声が響き渡る。
「皆の気持ちはよく分かる。去年、今ここにいる僕達も先輩達にこの試験を受けさせられた。
その時、先輩はかつての私達にこう言った……『ネフティスは……戦士は常に己より強い者と戦う。中には未知なる存在とも戦うことになる。そのために、あえて君達には強い者と剣を交わらせる経験をする必要がある』と。
これはネフティスメンバーに抜擢される皆しか味わえない事であり、なる上でとても大切な事なんだ。最初は負けて当然だ。私達も先輩達にボコボコにされて散々痛い目に遭い続け、叩き上げられて今ここに立っている。だからめげずに、今君達が持つ全力で僕達に挑んでほしい!!」
ベディヴィエルはマイクに向かって叫んだ。それほど強い意志が新入生の心を震わせる。さっきまで怒涛が飛び交っていた教会が一気に静まった。
「……ならやってやろうじゃねぇか!」
「生徒会潰す気で行くぞ!!」
次第にそのような声が飛び交う。そしてある者が立ち上がって剣を抜くと徐々に新入生達がベディヴィエルに向かって剣を抜く。
「ぶっ潰すぞおおお!!!」
周囲の流れで自然に立ち上がった俺達も突撃する新入生達の流れに逆らえず、とりあえず前進する。
「……俺達も行くぞ」
そう言って俺は反命剣を召喚するべく右手をその場で翳す。しかし、剣の重みは右手に伝わらなかった。
「なっ……」
召喚出来ない。何度翳しても剣の重みは感じない。そもそも魔力が減る感覚すら感じられない。
「大蛇、まずいぞ……ここじゃ魔力が使えない!」
「……外に出られる感じもしないしな」
となると、エレイナは完全に詰み状態だ。誰かがエレイナを庇いつつ戦わなければならない。しかも相手は何故か神器持ち。そんな相手に素手で勝てるなんてまず無理だ。現状戦えるのは正義だけ。ここは正義に任せて何とか武器を確保しなくては。
「正義、しばらく耐えてくれ。俺と亜玲澄は使える武器を探してくる」
「おう、任せとき!」
「大蛇、エレイナは任せて」
「すまない、頼んだ」
ただそれだけ言い残して、生徒会と新入生による乱闘の隙に俺は亜玲澄と二人分の剣を探すべく教会を出る。しかし、俺の行く手を謎の豪炎が阻んだ。
「あら残念……ここは通行止めよ」
「ちっ……!」
何であいつらだけ神器や魔力が使えて俺達には使えないんだ。この教会……何か仕掛けられているな。
「あら、よそ見とは心外だねぇ……推薦者!!」
「は……!?」
突然視界を紅蓮の炎で埋め尽くされた。熱い。一瞬で肌を溶かすような熱さだ。いや、実際溶けているのかもしれない。
ふとした瞬間に視界が元に戻り、途端に身体がふらついてしまう。
くそっ、神器も魔法も使えない状態でこんな高度な魔法使いに勝てる方がおかしいだろ……!
「それで推薦者を名乗るつもりかしら? はっきり言って弱いわね」
「……勝手に言ってろ。少なくともお前らみてぇなイカサマ生徒会よりはマシだ!」
ふらついた身体を両足で踏ん張って止め、その勢いで地を蹴る。
「とにかく俺の邪魔をするな!!」
魔女の火属性魔法を顔面から喰らいながらも目を閉じずに右拳を後ろに構える。そして腹部めがけて渾身の一撃を放つ。『黒壊』の魔力無しバージョン……すなわちただ殴っただけである。
「っ――!」
しかし魔力が無いとはいえ、この技がかなり磨かれてたからか魔女は大きく吹き飛び、教会の扉に背中を強打した。
「……生徒会の壁は案外こじ開けられるんだな」
気絶した魔女にそれだけを言い残し、俺は教会の扉を開けた。
「――この度は皆の入学を、このベディヴィエル・レントが在校生を代表してここに祝福する!」
アルスタリア高等学院2年生徒会長のベディヴィエル・レントと名乗る男が俺――黒神大蛇とその一行を含む計725人の入学を祝福した。彼は白銀の鎧を身に纏い、背中に神器と思われる聖剣を差している。
……これで生徒会長としての威厳、そして圧倒的な力を俺達新入生に示しているのだろう。決して逆らえないという呪縛でもかけているかのように。
「――私は君達にはとても期待している。過去最多に及ぶネフティス推薦者に数々の功績を残した者がこの新一年生の中にいる! たとえそうでないとしても、そんな彼らにもそれぞれ隠し持つ潜在能力を開花させられる事を私は信じている。是非、これから私達と共にネフティスメンバーへの切符を掴もう!!」
途端、周囲から歓声があがった。それほどあの生徒会長は信頼されてるということなのだろうか。
「では、担任の先生を紹介する前に……これから君達には試験を受けてもらう!」
途端、今度は『はぁ〜!?』とか『え〜!!』っといった予想だにしなかった事に新入生の全員が驚きを隠せずにいた。
「試験……?」
「ま、ままままさかぺぺぺぺペーパーテストだとかいいいい言わないよなああ!!??」
俺の左隣に座る正義が全身を震わせながら大声で言った。それをベディヴィエルはしっかりと聞き取って笑った。
「あはは、流石にそんな事はしないよ。これから受けてもらうのは実技試験さ。君達全員で、私達生徒会長を倒してもらう」
あらゆる場所から『はぁ〜!?』とか『出来るわけねぇだろ!!』といった怒涛の声が響き渡る。
「皆の気持ちはよく分かる。去年、今ここにいる僕達も先輩達にこの試験を受けさせられた。
その時、先輩はかつての私達にこう言った……『ネフティスは……戦士は常に己より強い者と戦う。中には未知なる存在とも戦うことになる。そのために、あえて君達には強い者と剣を交わらせる経験をする必要がある』と。
これはネフティスメンバーに抜擢される皆しか味わえない事であり、なる上でとても大切な事なんだ。最初は負けて当然だ。私達も先輩達にボコボコにされて散々痛い目に遭い続け、叩き上げられて今ここに立っている。だからめげずに、今君達が持つ全力で僕達に挑んでほしい!!」
ベディヴィエルはマイクに向かって叫んだ。それほど強い意志が新入生の心を震わせる。さっきまで怒涛が飛び交っていた教会が一気に静まった。
「……ならやってやろうじゃねぇか!」
「生徒会潰す気で行くぞ!!」
次第にそのような声が飛び交う。そしてある者が立ち上がって剣を抜くと徐々に新入生達がベディヴィエルに向かって剣を抜く。
「ぶっ潰すぞおおお!!!」
周囲の流れで自然に立ち上がった俺達も突撃する新入生達の流れに逆らえず、とりあえず前進する。
「……俺達も行くぞ」
そう言って俺は反命剣を召喚するべく右手をその場で翳す。しかし、剣の重みは右手に伝わらなかった。
「なっ……」
召喚出来ない。何度翳しても剣の重みは感じない。そもそも魔力が減る感覚すら感じられない。
「大蛇、まずいぞ……ここじゃ魔力が使えない!」
「……外に出られる感じもしないしな」
となると、エレイナは完全に詰み状態だ。誰かがエレイナを庇いつつ戦わなければならない。しかも相手は何故か神器持ち。そんな相手に素手で勝てるなんてまず無理だ。現状戦えるのは正義だけ。ここは正義に任せて何とか武器を確保しなくては。
「正義、しばらく耐えてくれ。俺と亜玲澄は使える武器を探してくる」
「おう、任せとき!」
「大蛇、エレイナは任せて」
「すまない、頼んだ」
ただそれだけ言い残して、生徒会と新入生による乱闘の隙に俺は亜玲澄と二人分の剣を探すべく教会を出る。しかし、俺の行く手を謎の豪炎が阻んだ。
「あら残念……ここは通行止めよ」
「ちっ……!」
何であいつらだけ神器や魔力が使えて俺達には使えないんだ。この教会……何か仕掛けられているな。
「あら、よそ見とは心外だねぇ……推薦者!!」
「は……!?」
突然視界を紅蓮の炎で埋め尽くされた。熱い。一瞬で肌を溶かすような熱さだ。いや、実際溶けているのかもしれない。
ふとした瞬間に視界が元に戻り、途端に身体がふらついてしまう。
くそっ、神器も魔法も使えない状態でこんな高度な魔法使いに勝てる方がおかしいだろ……!
「それで推薦者を名乗るつもりかしら? はっきり言って弱いわね」
「……勝手に言ってろ。少なくともお前らみてぇなイカサマ生徒会よりはマシだ!」
ふらついた身体を両足で踏ん張って止め、その勢いで地を蹴る。
「とにかく俺の邪魔をするな!!」
魔女の火属性魔法を顔面から喰らいながらも目を閉じずに右拳を後ろに構える。そして腹部めがけて渾身の一撃を放つ。『黒壊』の魔力無しバージョン……すなわちただ殴っただけである。
「っ――!」
しかし魔力が無いとはいえ、この技がかなり磨かれてたからか魔女は大きく吹き飛び、教会の扉に背中を強打した。
「……生徒会の壁は案外こじ開けられるんだな」
気絶した魔女にそれだけを言い残し、俺は教会の扉を開けた。