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作者: Siranui
残酷な描写あり
第六十三話「強くなるために」
 2005年 3月31日 午前11時頃――

 東京都足立区 ネフティス司令塔 転送装置前

 何とか全員無事に任務を遂行し、日本に帰ってきた。少しずつだが転送装置にも慣れてきたような気がする。恐らく気のせいでただ俺が疲れているだけである。

「じゃあこの任務の事は俺が総長に報告しておくからお前達は休んでいいぞ」
「え、いいの優羽汰君!!」
「お言葉に甘えます」

 凪沙と蒼乃の疲れ切った顔が一気に明るくなり、2人一緒に近くのスイーツ屋に向かっていった。

「……そうだ、お前らは少し話がある。俺と一緒に来い」
「は……? 俺等には休み無しかよ!」
「後で取らせるから安心しろ。一先ひとまず来いって言ってるんだ」

 何が何だか分からないまま、俺――大蛇と亜玲澄、正義の3人は優羽汰の後についていった。


 東京都足立区 ネフティス本部 総長室――

「――そうか。真の黒幕がいたとはな……とりあえずご苦労だったな」

 俺達4人と向かい合って座る正嗣総長がそう言った。
 結末としてはパンサーは真の黒幕……黒花を倒すために『始祖神の加護』を持つ宝のみを盗んでいた。そして任務の依頼人があの黒花だという事も後々判明し、あらゆる誤解をこの任務の長期化が証明した。
 今は黒花も、パンサーも身柄をネフティスが引き取り、日本で起訴されてるとの事だ。

「桐雨芽依の事もあってか、色々苦労したことだろう。今はゆっくり羽を伸ばすといい」

 俺達は一斉に頭を下げる。だが正嗣総長は苦笑いをしながら頭を上げるように言ってきたので、ゆっくりと頭を上げた。

「それで、次の任務は……」
「早とちりしすぎだぞ、優羽汰。この長期化した任務に、君も同様に彼らは疲れている。次の任務はしっかり万全な状態で挑ませると何度も言っただろう?」

 無理に任務を詰めすぎてもメンバーの体力と気力が保たないだけ。それで任務に手を抜くくらいならしっかり休ませ、万全の状態で任務を遂行したほうがよっぽど良い。やはり長年総長を務めているからか、そこら辺の事はかなり意識している。

「……それと、彼ら3人とエレイナちゃんには任務の代わりにある場所に行ってもらう」
「ある場所……?」

 亜玲澄が咄嗟とっさに呟く。任務を投げてまで大切な用事があるのだろうか。

「大蛇君、亜玲澄君、正義君、エレイナちゃんの四人で、金星……ソロモンにある養成学校に向かってもらう」
「「よ、養成学校っ……!?」」

 全員が一斉に声に出して驚いた。これには流石の俺も驚かざるを得なかった。
 一体金星のどんな所に養成学校があるのだ。確かに転送装置があるから簡単に惑星を行き来出来るが、それにしても金星に行くだなんてどこの物語だ。……それを言ったら水星リヴァイスもおかしいと思うが。

「養成学校に通うということは、これから俺達がネフティスメンバーに入れる事を視野に入れてる……と言うことですね?」
「その通りだ、亜玲澄君。水星リヴァイスといいシンデレラ宮殿といい、徐々に任務の難易度が上がってきている。我々もいつ命を落とすか分からない。それを見据えて君達を養成学校に入学させるのだ」
「マジかよ……!」

 それは一理ある。たとえネフティスNo.2や3クラスの蒼乃さんや凪沙さんがいたとしても今回の任務ではかなり苦戦した。
 メンバーはもちろん、これから任務に挑む俺達も強くならなければ遂行できないのは勿論、救いたいものも救えずに終わる。つまりそれは運命に負けることになる。

「もっと強くならなければならない……か」
「そういう事だ。だが、あれほどの任務を乗り越えてきた君達にはとても期待している。もしかしたら歴代最強のネフティスメンバーになる可能性も秘めているからな」
「れ、歴代最強……俺達が……!!」
「正義、今なってるわけじゃないからな」

 正義の勘違いに亜玲澄がツッコむと全員が笑いだし、部屋が少し賑わった。

「とりあえず、4月7日に君達3人の養成学校入学を予定しているからそのつもりでいてほしい。それまでゆっくり休んでくれ」
「わ、分かりました……し、失礼します!!!」

 恐る恐る亜玲澄がそう言うとすぐに俺と正義を引っ張って総長室を出る。親子2人きりになった正嗣総長と優羽汰は、しばらく沈黙の空気を吸った後に正嗣総長から話しかけた。

「優羽汰、さっきお前の報告書にあった大蛇君から発せられた謎の光なんだが……」
「何か分かったのか?」
「いや、明確には……むしろ全くと言っていいほど情報がない。マヤネーン君でさえも実際に検査してみないと分からないとの事だ。だが、これは私の推測なんだが……」

 ――大蛇君は恐らく、この世界の人間では無い。

「っ――!?」

 この世界の人間じゃない……? 確かに今回の任務であの男の桁外れの能力をこの目で見てきたが……とてもそうとは思えない。

「お前が見た謎の光とやらは恐らく魔法というたぐいでは表現出来ない。きっと彼にしか無い、大蛇君にしかなのだろう……」

 正嗣総長が眉を歪ませながらそう呟いた。それを素直に聞いていた優羽汰は息を詰まらせていた。

 ――存在しない未知の力……? 何を言ってるんだ親父は。つまりは俺達のようなにはその領域に踏み込めないと言いたいのか。

 ますます謎になってきた……本当に一体あの光は何だったんだ――?
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