残酷な描写あり
第四十八話「魔女の再来」
緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
先程まで賑やかだったシンデレラ宮殿に怒声や悲鳴が聞こえてくる。地位など関係なく、パンサーにかけられた莫大な懸賞金を賭けて貴族同士で殺し合っていた。
「蒼乃先輩……これかなり不味いですね」
「そうですね。抗争が激しくなってます」
一体どうしたらここまで発展するのか。もしかしたらこの5日間ずっとこの抗争が続いていたかもしれない。だとしたら犠牲者数は殺人事件の比じゃない。
「C'est moi qui tue la Panthère ah !(パンサーを殺すのはこの俺だああ!!)」
当然ここにいる者全員がフランス人なので、フランス語が分からなければ対話も不可能。語るなら武力で語るしか無いのだ。
「優羽汰さん、ここは私に任せてください。優羽汰さんとはエレイナさんを連れて大蛇さん達を追ってください!」
「蒼乃ちゃん! 私も戦うよ!」
「エレイナさん……気持ちはありがたいですが、貴方のような人が一番標的になりやすいのです。なので優羽汰さんと共に行ってください!」
……そう、そうだよね。私がここで殺されるのは大蛇君が一番望んでいない。私も大蛇君がここで死ぬだなんて想像もしたくない。
「……分かったわ。でも無理はしないでね!」
それだけを蒼乃さんに言い残し、エレイナは優羽汰と共に2階へと向かった。蒼乃さんは笑みを浮かべながら二人を見届ける。その最中にそれぞれ剣と銃を構える二人の男が蒼乃さんに襲いかかる。
「Je ne vous donnerai pas de prime sur vous ah !(お前らに懸賞金を渡すものかああ!!)」
「Désolé, ...... vous n'avez plus rien à faire ici !(悪いけど……お前達はここでご退場だ!!)」
気持ちを切り替え、両手に二丁の銃を携えて二人を待ち受ける。
「エレイナさんがあそこまで私の事を心配してくださったのです……」
右手の銃から冷気が放たれる。それは徐々に氷の結晶へと姿を変え、蒼乃さんの足元には既に霜が付いていた。
「――ここで死ぬのは一生の恥です!!」
蒼乃さんは右手の銃を大上段から剣を振り下ろす男に向けてすぐ氷の弾丸を放った。
「――遅いです!」
咄嗟に背後の男の腹を右足で蹴り、右手の銃で凍らせる。
……何か嫌な予感がします。亜玲澄さんと正義さんがここまで苦戦を強いられている……。
だが、この抗争のお陰で人が確実に減ってきているのは確かだ。無論、中には死んでいる者がいるのも事実だ。
「厄介なのはパンサーだけでは無いという事ですね」
「その通りよ、氷のお嬢さん」
「っ――!?」
突然背後から妖しげな声が聞こえ、ふと振り向いて距離をとる。目の前にはあの『海の魔女』を思わせる黒い影を纏った女性が立っていた。
「貴方は一度大蛇さんに殺されたはず……」
「えぇ、殺されたわ。でも生まれ変わったの。あの子と同じようにね」
「え……」
……あの子? 生まれ変わった? どういう事なのでしょう。
「ほんとはあの子を殺すためにわざわざ騒がしいこのパーティーに来てるのに、会えないだなんてがっかりだわ……。まぁいいわ、貴方も十分殺しがいがありそうね!」
女性は足元から海藻のような黒い帯を精製し、蒼乃さんに襲いかかる。
「くっ……!」
『海の魔女』のタコ足の如く蒼乃さんだけでなく、乱闘をしている貴族達をも巻き込んだ。
「なっ――、おいおい何だこれ!!」
「あやつ……我らの剣舞の邪魔をしようとは……」
正義と爺は黒い帯を避けながら正面に来た帯を刀で斬る。
「あの子、僕達にまで攻撃してくるなんて大胆なものだね!」
「んな事言ってねぇで何とかするぞ!」
亜玲澄とゼラートも帯を避けながら交戦を続ける。
「あはははは!! さぁ、再開しようじゃないか! 『裁き』のパレードをね!!」
アースラを思わせる女性は高笑いをしながら宮殿中に無数の帯の柱を生み出す。
「くっ――!」
回避しきれず、何ヶ所か帯が掠って出血する。痛い。痛いと共に恐怖が襲ってくる。
「あいつ、前に見た事が……」
「よそ見は厳禁だよ、アレス!」
「黙っとけナルシストが!!」
海の惑星での既視感を覚えた亜玲澄だが、ゼラートの銃撃にせき止められる。
「くそっ! 蒼乃パイセンがやべぇぞ!」
「次は刎ねるぞ……お主の首!!」
「へっ、やれるもんならやってみろジジイ!!」
……いち早く蒼乃さんを助けるべく、正義はこの一手で勝負をつけるが如く左腰の刀に右手を置いた。
「終わりかいお嬢ちゃん! 少なくともあの子はこの程度で終わる奴じゃ無かったよ!!」
「私だって……!」
……そう、私はずっと臆病な人間でした。何かに挑戦するのが怖くて、失敗するのが怖くて、結局何もしなかった。そんな自分が嫌になった。
「うっ……!」
「あははっ! さっきまでの威勢を見せてくれよお!!」
そんな時に凪沙さんに出会って、失敗の大切さ……成功する事の達成感をこの身に感じる事が出来ました。今までの任務も、ネフティス副総長になれたのも全部凪沙さんがいてくれたからこそです。
「あぐっ……!」
だから私はこんな所で諦めたくないです。たとえどれほど血を流そうとも……運命に打ちひしがれても、皆との約束を破るわけにはいかないんです!
「もう満身創痍だねぇ? そろそろ終わりにしてあげるよっ!!『影剣血殺』!!」
……皆さん、お願いします。私に力を貸してください。今だけで構いません……
――私に、約束を果たす力をください!!
「『氷星之血晶』!!」
蒼乃は頭上目掛けて右手に持つ神器『絶氷銃』の引き金を引いた。絶氷の弾丸が天井に当たった刹那、シンデレラ宮殿が一瞬にして氷漬けとなった。
「くっ、動けない……!」
蒼乃はゆっくりと氷漬けの女性へと歩み寄る。そしてそのおでこに銃口を向ける。
「へぇ……まさかお嬢さんも使えるのね、『禁忌魔法』」
「……生憎ですが、今習得したばかりのもので」
バシュッと女性のおでこに一発。そこから一気に全身へと氷が侵食する。
「がっ……ぁぁああああ!!」
「今私には貴方と遊んでる暇は無いので、早いうちに息の根、止めますね」
「ま……待て――」
言いかけた途端、蒼乃さんは何発か氷の弾丸を放った。誰よりも冷たく、無慈悲に女性の頭を撃っては全身を氷漬けにする。
「……チェックメイトです、アースラ」
そして、左手の銃で女性の心臓を撃ち抜いた――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
先程まで賑やかだったシンデレラ宮殿に怒声や悲鳴が聞こえてくる。地位など関係なく、パンサーにかけられた莫大な懸賞金を賭けて貴族同士で殺し合っていた。
「蒼乃先輩……これかなり不味いですね」
「そうですね。抗争が激しくなってます」
一体どうしたらここまで発展するのか。もしかしたらこの5日間ずっとこの抗争が続いていたかもしれない。だとしたら犠牲者数は殺人事件の比じゃない。
「C'est moi qui tue la Panthère ah !(パンサーを殺すのはこの俺だああ!!)」
当然ここにいる者全員がフランス人なので、フランス語が分からなければ対話も不可能。語るなら武力で語るしか無いのだ。
「優羽汰さん、ここは私に任せてください。優羽汰さんとはエレイナさんを連れて大蛇さん達を追ってください!」
「蒼乃ちゃん! 私も戦うよ!」
「エレイナさん……気持ちはありがたいですが、貴方のような人が一番標的になりやすいのです。なので優羽汰さんと共に行ってください!」
……そう、そうだよね。私がここで殺されるのは大蛇君が一番望んでいない。私も大蛇君がここで死ぬだなんて想像もしたくない。
「……分かったわ。でも無理はしないでね!」
それだけを蒼乃さんに言い残し、エレイナは優羽汰と共に2階へと向かった。蒼乃さんは笑みを浮かべながら二人を見届ける。その最中にそれぞれ剣と銃を構える二人の男が蒼乃さんに襲いかかる。
「Je ne vous donnerai pas de prime sur vous ah !(お前らに懸賞金を渡すものかああ!!)」
「Désolé, ...... vous n'avez plus rien à faire ici !(悪いけど……お前達はここでご退場だ!!)」
気持ちを切り替え、両手に二丁の銃を携えて二人を待ち受ける。
「エレイナさんがあそこまで私の事を心配してくださったのです……」
右手の銃から冷気が放たれる。それは徐々に氷の結晶へと姿を変え、蒼乃さんの足元には既に霜が付いていた。
「――ここで死ぬのは一生の恥です!!」
蒼乃さんは右手の銃を大上段から剣を振り下ろす男に向けてすぐ氷の弾丸を放った。
「――遅いです!」
咄嗟に背後の男の腹を右足で蹴り、右手の銃で凍らせる。
……何か嫌な予感がします。亜玲澄さんと正義さんがここまで苦戦を強いられている……。
だが、この抗争のお陰で人が確実に減ってきているのは確かだ。無論、中には死んでいる者がいるのも事実だ。
「厄介なのはパンサーだけでは無いという事ですね」
「その通りよ、氷のお嬢さん」
「っ――!?」
突然背後から妖しげな声が聞こえ、ふと振り向いて距離をとる。目の前にはあの『海の魔女』を思わせる黒い影を纏った女性が立っていた。
「貴方は一度大蛇さんに殺されたはず……」
「えぇ、殺されたわ。でも生まれ変わったの。あの子と同じようにね」
「え……」
……あの子? 生まれ変わった? どういう事なのでしょう。
「ほんとはあの子を殺すためにわざわざ騒がしいこのパーティーに来てるのに、会えないだなんてがっかりだわ……。まぁいいわ、貴方も十分殺しがいがありそうね!」
女性は足元から海藻のような黒い帯を精製し、蒼乃さんに襲いかかる。
「くっ……!」
『海の魔女』のタコ足の如く蒼乃さんだけでなく、乱闘をしている貴族達をも巻き込んだ。
「なっ――、おいおい何だこれ!!」
「あやつ……我らの剣舞の邪魔をしようとは……」
正義と爺は黒い帯を避けながら正面に来た帯を刀で斬る。
「あの子、僕達にまで攻撃してくるなんて大胆なものだね!」
「んな事言ってねぇで何とかするぞ!」
亜玲澄とゼラートも帯を避けながら交戦を続ける。
「あはははは!! さぁ、再開しようじゃないか! 『裁き』のパレードをね!!」
アースラを思わせる女性は高笑いをしながら宮殿中に無数の帯の柱を生み出す。
「くっ――!」
回避しきれず、何ヶ所か帯が掠って出血する。痛い。痛いと共に恐怖が襲ってくる。
「あいつ、前に見た事が……」
「よそ見は厳禁だよ、アレス!」
「黙っとけナルシストが!!」
海の惑星での既視感を覚えた亜玲澄だが、ゼラートの銃撃にせき止められる。
「くそっ! 蒼乃パイセンがやべぇぞ!」
「次は刎ねるぞ……お主の首!!」
「へっ、やれるもんならやってみろジジイ!!」
……いち早く蒼乃さんを助けるべく、正義はこの一手で勝負をつけるが如く左腰の刀に右手を置いた。
「終わりかいお嬢ちゃん! 少なくともあの子はこの程度で終わる奴じゃ無かったよ!!」
「私だって……!」
……そう、私はずっと臆病な人間でした。何かに挑戦するのが怖くて、失敗するのが怖くて、結局何もしなかった。そんな自分が嫌になった。
「うっ……!」
「あははっ! さっきまでの威勢を見せてくれよお!!」
そんな時に凪沙さんに出会って、失敗の大切さ……成功する事の達成感をこの身に感じる事が出来ました。今までの任務も、ネフティス副総長になれたのも全部凪沙さんがいてくれたからこそです。
「あぐっ……!」
だから私はこんな所で諦めたくないです。たとえどれほど血を流そうとも……運命に打ちひしがれても、皆との約束を破るわけにはいかないんです!
「もう満身創痍だねぇ? そろそろ終わりにしてあげるよっ!!『影剣血殺』!!」
……皆さん、お願いします。私に力を貸してください。今だけで構いません……
――私に、約束を果たす力をください!!
「『氷星之血晶』!!」
蒼乃は頭上目掛けて右手に持つ神器『絶氷銃』の引き金を引いた。絶氷の弾丸が天井に当たった刹那、シンデレラ宮殿が一瞬にして氷漬けとなった。
「くっ、動けない……!」
蒼乃はゆっくりと氷漬けの女性へと歩み寄る。そしてそのおでこに銃口を向ける。
「へぇ……まさかお嬢さんも使えるのね、『禁忌魔法』」
「……生憎ですが、今習得したばかりのもので」
バシュッと女性のおでこに一発。そこから一気に全身へと氷が侵食する。
「がっ……ぁぁああああ!!」
「今私には貴方と遊んでる暇は無いので、早いうちに息の根、止めますね」
「ま……待て――」
言いかけた途端、蒼乃さんは何発か氷の弾丸を放った。誰よりも冷たく、無慈悲に女性の頭を撃っては全身を氷漬けにする。
「……チェックメイトです、アースラ」
そして、左手の銃で女性の心臓を撃ち抜いた――