残酷な描写あり
第五幕 6 『歓待』
身支度を整え晩餐会場へと向う。
最終的にメイドさんたちが選んでくれたのは、濃紺のドレスだ。
私の髪の色を星の光に見立て、それを引き立たせるためのチョイスだそうだ。
ミーティアも同系統の色で、お揃いな感じ。
なお、このドレスはレティシアさんのものらしい。
多少調節してるが殆どピッタリと言っていいだろう。
私とピッタリ。
つまりレティシアさんは…
ふむ…彼女とは親友になれそうな気がするよ。
パーシャさんに案内されてやって来た晩餐の会場には、既に私以外の全員が揃っていた。
「す、すみません、お待たせしてしまったようで…」
「いえ、皆さんも丁度いま揃ったところですよ。それにしても…ドレスがよくお似合いです。うちの者たちは良い仕事をした様ですね」
「ええ本当に。でも、それもカティア様の輝きがあってこそでしょうね」
「あ、ありがとうございます…」
やっぱりストレートに褒められるのは嬉しいけど凄く照れる。
「おう、馬子にも衣装だな」
「…失礼な」
「カイト様、ここはすかさず褒めるところですわよ。…カイト様?」
「…」
「あら…?惚けてらっしゃいますわね」
ルシェーラがカイトに話しかけてるが、カイトは上の空の様子。
「カイト?大丈夫?」
「!…ああ、すまない。見惚れていた。綺麗だ、カティア」
「!?…あ…あぅあぅ…」
は、はずかしーっ!!
でも嬉しい…
これは頑張ってくれたメイドさんたちに感謝しないと。
「あらあら、お熱いことで…」
「その…お二人はお付き合いされてるのですか?」
レティシアさんにそう聞かれるが…
「え~と、付き合ってるというか…」
「ラブラブですわよ」
「バカップルだな」
「パパとママなの~」
「「…」」
え?
私たち、節度あるお付き合いだよね?
バカップルって何さ!?
「…ま、まあ、とにかく仲がよろしいという事ですね」
「え、ええ、そうですね」
「さあ、そろそろ料理が運ばれてくる頃合いです。カティア様もどうぞおかけください」
「はい。…ありがとうございます」
パーシャさんが椅子を引いてくれたので、お礼を言ってから座る。
私が席についたところで料理が運びこまれ、各人の前に丁寧に置かれていく。
「お飲み物はいかがいたしましょうか?酒類は各種ご用意できます。酒精が苦手のようでしたらジュースもございます」
「あ、じゃあ…」
「酒は駄目だぞ」
「わ、分かってるよ!…大体、酒精が少なければ大丈夫なんだよ。以前は飲んでたんだし」
殆どジュースだったけどね!
「それでしたら、シードルはいかがでしょうか?」
え~と、確かリンゴからつくられる発泡酒だっけ?
確かにアルコール度数は低かったと思うけど…
でも、そう思ってたビールは駄目だったしなぁ…
前世ではビールのアルコール度数って5~10くらいだと思ったけど、この世界のものはもっと高かったみたいなんだよね。
でもでも、それよりは相当低いよね?
う~ん…どうしようかな…
お酒飲みたいな…
…よしっ!
「じゃ、じゃあ、それで…」
「畏まりました」
「…どうなっても知らねぇぞ」
父さんが何か言ってるけど、私だってお酒飲みたい!
「お待たせしました」
と、既にグラスに注がれたそれをテーブルに置いてくれる。
他の人たちも飲み物の用意が出来たので、公爵様が乾杯の挨拶をする事に。
「本日は皆様を当家にお迎えできた事、誠に嬉しく思います。ささやかではありますが、当家のシェフが腕をふるった料理の数々をお楽しみ頂ければ幸いです。…それでは、この出会いを祝しまして。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
公爵様の乾杯の音頭に合わせて私達も唱和する。
席は広く間が空いてるので、グラスは打ち鳴らさずに掲げるだけだ。
乾杯のあと、私はグラスに口を付けて一口、二口とシードルを飲む。
爽やかな酸味と甘味、それに強すぎない炭酸の刺激が口の中に広がり喉を潤す。
…うん、美味しい!
アルコールも少ないみたいだし、これなら大丈夫じゃないかな!?
気分上々で料理に手を付け始める。
こっちも凄く美味しそうだ。
そうして私達は楽しく会話も交えながら食事を開始した。
「それれれすね~、カイトはやさしくわらしをだきよせて~…きゃ~!」
「まあ、とても素敵ですわね。カティア様は本当にカイト様がお好きなのですね」
あはは~、何だか気分いい~。
今は、奥様に私達の事を聞いてもらってるところだよ。
もっともっとお話せねば!
「…言わんこっちゃない。いくら酒精が少ないたって、量を飲んだら同じだろうが。初対面の貴族様に招待された席でリスクを犯すたぁ、状況判断がまだまだだな…」
「おじさま、冷静に分析してる場合ではありませんわ。このままでは…またカティアさんの黒歴史が刻まれてしまいますわ。…ああ、いえ、それは別に良いのですが…毎回カイト様が巻き込まれるのが不憫で」
「…」
「…何か悟ったような表情になってるな。しかしなぁ…アネッサのやつがいねぇと[解毒]も使えんしな…」
「あ、[解毒]なら私使えますよ。…そっか、酔ってるのも毒扱いなのか…」
「ええ~い、なにをごちゃごちゃいっれるんれすか!?わらしのはなしをききなさい!」
「とうとう絡み酒も入ってきたな。鬱陶しいことこの上ねぇ…」
「レティシアさん、お願いしますわ」
「うん、分かったよ。それ、[解毒]!」
…
……
………はっ!?
私は一体…?
ま、まさか…?
「えっと…やっちゃいました?」
「あら、カイト様とのアツアツぶりを聞かせていただきまして、とても楽しかったですよ。ねえ、あなた」
「そうですな。私も若い頃を思い出して、懐かしい気持ちになりましたよ」
……みぎゃあ!?
やっちゃったようだよ!?
「…お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
「ほんと、懲りねえよな…お前」
だって!
お酒飲みたいんだもん!
ちょっとした(?)トラブルはあったが、その後は和やかに会話を楽しみながら食事をすすめた。
そして、食後のお茶を楽しんでいるときに、気になってる事を訊ねてみた。
「神託…ですか?」
「はい。ディザール様が聖剣をお貸し下さると言うことで…ディザール神殿の総本山に神託を降ろすと仰っていたので、何かご存知ないかと思いまして」
「…確かにここ数日神殿の方で騒ぎが起こってるようでしたが…なるほど、そういうことですか」
「領主様には伝わらないのですか?」
「ああ、政教分離が徹底してますからな…よほどのことでもない限り、基本的にお互い不干渉なのです」
ふ~ん、王族がそれぞれの神から力を託されてるのに、その辺は近代的なんだね。
…いや、だからこそ、なのかな?
それぞれの国が自分の王族に由来する神様しか信奉しなくなったら、いまごろ世界情勢はややこしい事になってそうだもんね。
「分かりました。とにかく、明日神殿に伺ってみれば分かることです」
「しかし…少し心配ですな」
「心配?」
「はい。聖剣を託されるほどの人間を、果たして神殿が放っておくかどうか…」
あ~、以前侯爵様にも言われたやつか…
ディザール様のことだから、きっと上手いこと言ってくれてるとは思うんだけど。
…リル姉さんと違ってしっかりしてるみたいだし!
「まあ、ディザール様が上手いこと言ってくれてると思いますよ。多分」
「…そうですな。現在の大司教猊下はご立派な方ですし、そうそうおかしな事にはならないとは思います」
…『現在の』ってところに含みがあるんだけど、まあ大丈夫でしょう。
そうして、その後も終始和やかに歓談しながら、晩餐を終えたのであった。
最終的にメイドさんたちが選んでくれたのは、濃紺のドレスだ。
私の髪の色を星の光に見立て、それを引き立たせるためのチョイスだそうだ。
ミーティアも同系統の色で、お揃いな感じ。
なお、このドレスはレティシアさんのものらしい。
多少調節してるが殆どピッタリと言っていいだろう。
私とピッタリ。
つまりレティシアさんは…
ふむ…彼女とは親友になれそうな気がするよ。
パーシャさんに案内されてやって来た晩餐の会場には、既に私以外の全員が揃っていた。
「す、すみません、お待たせしてしまったようで…」
「いえ、皆さんも丁度いま揃ったところですよ。それにしても…ドレスがよくお似合いです。うちの者たちは良い仕事をした様ですね」
「ええ本当に。でも、それもカティア様の輝きがあってこそでしょうね」
「あ、ありがとうございます…」
やっぱりストレートに褒められるのは嬉しいけど凄く照れる。
「おう、馬子にも衣装だな」
「…失礼な」
「カイト様、ここはすかさず褒めるところですわよ。…カイト様?」
「…」
「あら…?惚けてらっしゃいますわね」
ルシェーラがカイトに話しかけてるが、カイトは上の空の様子。
「カイト?大丈夫?」
「!…ああ、すまない。見惚れていた。綺麗だ、カティア」
「!?…あ…あぅあぅ…」
は、はずかしーっ!!
でも嬉しい…
これは頑張ってくれたメイドさんたちに感謝しないと。
「あらあら、お熱いことで…」
「その…お二人はお付き合いされてるのですか?」
レティシアさんにそう聞かれるが…
「え~と、付き合ってるというか…」
「ラブラブですわよ」
「バカップルだな」
「パパとママなの~」
「「…」」
え?
私たち、節度あるお付き合いだよね?
バカップルって何さ!?
「…ま、まあ、とにかく仲がよろしいという事ですね」
「え、ええ、そうですね」
「さあ、そろそろ料理が運ばれてくる頃合いです。カティア様もどうぞおかけください」
「はい。…ありがとうございます」
パーシャさんが椅子を引いてくれたので、お礼を言ってから座る。
私が席についたところで料理が運びこまれ、各人の前に丁寧に置かれていく。
「お飲み物はいかがいたしましょうか?酒類は各種ご用意できます。酒精が苦手のようでしたらジュースもございます」
「あ、じゃあ…」
「酒は駄目だぞ」
「わ、分かってるよ!…大体、酒精が少なければ大丈夫なんだよ。以前は飲んでたんだし」
殆どジュースだったけどね!
「それでしたら、シードルはいかがでしょうか?」
え~と、確かリンゴからつくられる発泡酒だっけ?
確かにアルコール度数は低かったと思うけど…
でも、そう思ってたビールは駄目だったしなぁ…
前世ではビールのアルコール度数って5~10くらいだと思ったけど、この世界のものはもっと高かったみたいなんだよね。
でもでも、それよりは相当低いよね?
う~ん…どうしようかな…
お酒飲みたいな…
…よしっ!
「じゃ、じゃあ、それで…」
「畏まりました」
「…どうなっても知らねぇぞ」
父さんが何か言ってるけど、私だってお酒飲みたい!
「お待たせしました」
と、既にグラスに注がれたそれをテーブルに置いてくれる。
他の人たちも飲み物の用意が出来たので、公爵様が乾杯の挨拶をする事に。
「本日は皆様を当家にお迎えできた事、誠に嬉しく思います。ささやかではありますが、当家のシェフが腕をふるった料理の数々をお楽しみ頂ければ幸いです。…それでは、この出会いを祝しまして。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
公爵様の乾杯の音頭に合わせて私達も唱和する。
席は広く間が空いてるので、グラスは打ち鳴らさずに掲げるだけだ。
乾杯のあと、私はグラスに口を付けて一口、二口とシードルを飲む。
爽やかな酸味と甘味、それに強すぎない炭酸の刺激が口の中に広がり喉を潤す。
…うん、美味しい!
アルコールも少ないみたいだし、これなら大丈夫じゃないかな!?
気分上々で料理に手を付け始める。
こっちも凄く美味しそうだ。
そうして私達は楽しく会話も交えながら食事を開始した。
「それれれすね~、カイトはやさしくわらしをだきよせて~…きゃ~!」
「まあ、とても素敵ですわね。カティア様は本当にカイト様がお好きなのですね」
あはは~、何だか気分いい~。
今は、奥様に私達の事を聞いてもらってるところだよ。
もっともっとお話せねば!
「…言わんこっちゃない。いくら酒精が少ないたって、量を飲んだら同じだろうが。初対面の貴族様に招待された席でリスクを犯すたぁ、状況判断がまだまだだな…」
「おじさま、冷静に分析してる場合ではありませんわ。このままでは…またカティアさんの黒歴史が刻まれてしまいますわ。…ああ、いえ、それは別に良いのですが…毎回カイト様が巻き込まれるのが不憫で」
「…」
「…何か悟ったような表情になってるな。しかしなぁ…アネッサのやつがいねぇと[解毒]も使えんしな…」
「あ、[解毒]なら私使えますよ。…そっか、酔ってるのも毒扱いなのか…」
「ええ~い、なにをごちゃごちゃいっれるんれすか!?わらしのはなしをききなさい!」
「とうとう絡み酒も入ってきたな。鬱陶しいことこの上ねぇ…」
「レティシアさん、お願いしますわ」
「うん、分かったよ。それ、[解毒]!」
…
……
………はっ!?
私は一体…?
ま、まさか…?
「えっと…やっちゃいました?」
「あら、カイト様とのアツアツぶりを聞かせていただきまして、とても楽しかったですよ。ねえ、あなた」
「そうですな。私も若い頃を思い出して、懐かしい気持ちになりましたよ」
……みぎゃあ!?
やっちゃったようだよ!?
「…お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」
「ほんと、懲りねえよな…お前」
だって!
お酒飲みたいんだもん!
ちょっとした(?)トラブルはあったが、その後は和やかに会話を楽しみながら食事をすすめた。
そして、食後のお茶を楽しんでいるときに、気になってる事を訊ねてみた。
「神託…ですか?」
「はい。ディザール様が聖剣をお貸し下さると言うことで…ディザール神殿の総本山に神託を降ろすと仰っていたので、何かご存知ないかと思いまして」
「…確かにここ数日神殿の方で騒ぎが起こってるようでしたが…なるほど、そういうことですか」
「領主様には伝わらないのですか?」
「ああ、政教分離が徹底してますからな…よほどのことでもない限り、基本的にお互い不干渉なのです」
ふ~ん、王族がそれぞれの神から力を託されてるのに、その辺は近代的なんだね。
…いや、だからこそ、なのかな?
それぞれの国が自分の王族に由来する神様しか信奉しなくなったら、いまごろ世界情勢はややこしい事になってそうだもんね。
「分かりました。とにかく、明日神殿に伺ってみれば分かることです」
「しかし…少し心配ですな」
「心配?」
「はい。聖剣を託されるほどの人間を、果たして神殿が放っておくかどうか…」
あ~、以前侯爵様にも言われたやつか…
ディザール様のことだから、きっと上手いこと言ってくれてるとは思うんだけど。
…リル姉さんと違ってしっかりしてるみたいだし!
「まあ、ディザール様が上手いこと言ってくれてると思いますよ。多分」
「…そうですな。現在の大司教猊下はご立派な方ですし、そうそうおかしな事にはならないとは思います」
…『現在の』ってところに含みがあるんだけど、まあ大丈夫でしょう。
そうして、その後も終始和やかに歓談しながら、晩餐を終えたのであった。