残酷な描写あり
第四幕 6 『レジスタンス』
私達を助けてくれた彼女…ケイトリンさんは、この街に潜伏してこの状況をなんとか打破すべく活動しているレジスタンスの一員だと言う。
どうやら不当に家や土地を奪われた人達から有志が集まって組織されたらしい。
そりゃあ、黙って言いなりになるような人ばかりじゃないよね。
だけど、官憲に逆らってまで立ち上がるような気概を持った者がそれほどいるはずも無く、人数的にはせいぜい十数人程度で、到底領主側を打倒できるようなものでも無いらしい。
「何とかしたくても圧倒的に人がいない状況で、あんたたちがこの街に来たって情報が入ったのよ。ダードレイ一座と言えば高ランクの冒険者揃いで知られてるからね。義に厚いことでも」
「…買ってくれるのは嬉しいが、あくまで一座の安全が優先だがな。ウチには非戦闘員だって大勢いる。そいつらを危険に晒すわけにはいかん」
「だけど、今この状況はどうするつもり?」
「いったん撒いちまえば、あとはどうとでもなる」
「あら?助けてもらった恩も返さずにさっさと逃げちゃうわけ?」
「…痛えとこ突いてくるな」
「父さん、受けた恩を返さないなんて、それこそ一座の名折れだよ!」
ふんすっ!
「お前えも随分と男前になりやがって…。ああ、もう、分かったよ!協力すりゃいいんだろ?…だが、大っぴらには動けねぇぞ?」
「もちろん、私達だって真正面から戦おうなんて思っちゃいないよ。まあ、まずはとにかくアジトに行ってウチのリーダーに会ってほしい」
「分かった。だが、ウチの連中にどうにか知らせられねぇもんか…」
多分、待ち合わせ場所でまだ待ってるはずだと思うんだよね。
まだそれ程時間が経ってないけど、何れ異変に気付くはずだけど、このまま何も連絡が出来ないとなると心配かけちゃうよなぁ…
「あ~、それだったら、多分ウチのメンバーが接触してると思うけどね。あの場には私以外のメンバーもいたし、私があんた達に接触したのも確認してるはず。少なくとも状況は伝わっているんじゃないかな。それも、アジトに行けば分かると思うよ」
「そうか。じゃあ早速案内頼む…と言いてえところなんだが、まだ追手がいるかもしれねぇ。今すぐ外に出るのは不味いか…」
そうだよ。
まだ諦めてないかもしれないしいま外に出るのは得策じゃないと思う。
しばらく様子を見ないと…
「ふふ、大丈夫よ。こっちに来てちょうだい」
そう言ってケイトリンさんは部屋の奥に行き、床にしゃがみこんで…
あ!
隠し階段!?
床板をずらすと、そこには地下へ通じると思しき階段が現れたのだった。
これって、ゲームでもあった秘密の地下通路だよね…
まさかここで登場することになろうとは。
「何で民家にこんな物が…」
「ここは唯の民家じゃないのよ。昔、盗賊ギルドの隠れ家の一つになってたみたいでね。最近は先代様の管理下にあったもので、それを利用させてもらってるの」
なるほど。
ゲームの時はまさにその盗賊ギルドを壊滅させるイベントで登場したんだけど、もう既に壊滅してるんだね。
「先代の?それは大丈夫なのか?」
そう、カイトが懸念を口にする。
確かに、黒幕のマクガレンに筒抜けだと困るよ。
「大丈夫。この辺の詳細はもともとは先代様の子飼いの者が管理してて、その人は今レジスタンスに協力してくれてるの」
それは、つまり…
「…つまり。やはり先代の領主様は病気療養などでは無い、と言うことですわね」
「そうよ。まだ幼いご子息様を傀儡にして無理矢理後見の座について好き放題しているのよ。多分、先代様は領主邸で監禁状態にあると思うわ。まあ、そのへんの経緯はアジトについてから話すわ」
そうして、ケイトリンさんに先導されて私達は地下道に入っていくのだった。
「こりゃあ、凄えな…」
「本当に…こんな物が街の地下にあるとは、驚きですわ」
「ママ~、すごいの!」
階段を降りたその先には、3人並んで歩いても余裕があるほどの地下通路。
天井の高さも2メートル程あり、壁面には照明の魔道具と思われる灯りも灯されているので歩くのに何の支障もない。
通路は一本道ではなく、所々に十字路や分岐があって案内がなければ迷ってしまいそうだ。
「ミーティア、迷子になったら大変だからな。しっかり手をつないでるんだぞ」
「うん!」
今は、私とカイトでミーティアの手をつないで、並んで歩いてる。
こんなところで迷子になったら大変だからね。
「あんたたちは夫婦なのかしら?奥さんは若い割に随分子供が大きいみたいだけど」
「おおお奥さん!?ち、違います!私達は…ええと…」
む?
私達は…?
何なんだろう?
「う~ん?その、恋人じゃないんですけど、ほぼ恋人といいますか、友人以上恋人未満というか、もはや九割方恋人と言っても過言はないというか…いやそれは言い過ぎ?でもでも、お互い好きなんだから別にいいんじゃないかな…でもやっぱり…」
「恋人ですわ」
「パパとママなの~」
「なるほど…分からないわ」
「ところでお嬢様、ブレゼンタムにもこう言う秘密の地下通路があったりするんですかね?」
ふと気になったのでお嬢様に聞いてみる。
「いえ、少なくとも私は聞いたことはありませんわ。もしかしたら、お父様なら知ってるかもしれませんが。ブレゼンタムも古い街ですから、このような地下道があっても不思議ではないですわね」
神代の頃から存在するという事だからね。
確かその頃はミュルグレイヒって名前だったか。
リーゼさんではないけど、そういう秘密があるかも、と思うとワクワクするね。
「…ねえ、あんた。ルシェーラさんだっけ?もしかしてブレゼンタムの偉い人かなんかなの?喋り方もお嬢様っぽいし」
「わ、私は唯の冒険者のルシェーラですわ…だよ」
お嬢様、どもってますよ?
口調もおかしいです。
それに…せめて偽名とかじゃ無いと、いつかバレるんじゃないかなぁ?
「…ま、いいか。もうすぐ着くよ」
「相当歩いてきたが、今どの辺りだ?感覚的には既に街の外に出てると思うんだが…」
「お、なかなか鋭いじゃない。ほら、もう出口よ」
彼女の言う通り、突き当りが階段になっていて、どうやら地下通路はここまでの様だ。
そして、階段を昇っていくと石段が途中から木の階段に変わって、丸太を組んだログハウスの様な部屋に出た。
部屋に窓はなく、扉が一つあるだけだ。
ケイトリンさんは床を軋ませながらその扉に近付いてノックする。
すると、扉の向こうから声がかかる。
「誰だ」
「ケイトリンよ」
「合言葉は?」
「『その手に自由を』」
おお…
秘密組織っぽいぞ!
「よし、入って良いぞ」
と、向こうから扉を開けてもらい、ケイトリンさんを先頭にして扉をくぐる。
そこは、ログハウスのリビングのようなところだったが、かなり広々としている。
部屋の一辺はテラスになっていてレジスタンスのアジトと言う割には随分と開放的だ。
そして、部屋の中にはレジスタンスのメンバーと思われる人が数人。
その中の一人、灰色の髪で柔和そうな顔立ちの男が、立ち上がって話しかけてきた。
「ご苦労だったね、ケイトリン。それに…ようこそ、ダードレイ一座の皆さん。私はヨルバルトと言います。どうぞよろしくお願いします」
とうやら彼がレジスタンスのリーダーのようだ。
歳は思いのほか若いようで、二十歳前後くらいだろうか?
口調は丁寧で物腰も柔らかな感じだ。
こうして、私達は彼らに協力するべく、話し合いを始めるのだった。
どうやら不当に家や土地を奪われた人達から有志が集まって組織されたらしい。
そりゃあ、黙って言いなりになるような人ばかりじゃないよね。
だけど、官憲に逆らってまで立ち上がるような気概を持った者がそれほどいるはずも無く、人数的にはせいぜい十数人程度で、到底領主側を打倒できるようなものでも無いらしい。
「何とかしたくても圧倒的に人がいない状況で、あんたたちがこの街に来たって情報が入ったのよ。ダードレイ一座と言えば高ランクの冒険者揃いで知られてるからね。義に厚いことでも」
「…買ってくれるのは嬉しいが、あくまで一座の安全が優先だがな。ウチには非戦闘員だって大勢いる。そいつらを危険に晒すわけにはいかん」
「だけど、今この状況はどうするつもり?」
「いったん撒いちまえば、あとはどうとでもなる」
「あら?助けてもらった恩も返さずにさっさと逃げちゃうわけ?」
「…痛えとこ突いてくるな」
「父さん、受けた恩を返さないなんて、それこそ一座の名折れだよ!」
ふんすっ!
「お前えも随分と男前になりやがって…。ああ、もう、分かったよ!協力すりゃいいんだろ?…だが、大っぴらには動けねぇぞ?」
「もちろん、私達だって真正面から戦おうなんて思っちゃいないよ。まあ、まずはとにかくアジトに行ってウチのリーダーに会ってほしい」
「分かった。だが、ウチの連中にどうにか知らせられねぇもんか…」
多分、待ち合わせ場所でまだ待ってるはずだと思うんだよね。
まだそれ程時間が経ってないけど、何れ異変に気付くはずだけど、このまま何も連絡が出来ないとなると心配かけちゃうよなぁ…
「あ~、それだったら、多分ウチのメンバーが接触してると思うけどね。あの場には私以外のメンバーもいたし、私があんた達に接触したのも確認してるはず。少なくとも状況は伝わっているんじゃないかな。それも、アジトに行けば分かると思うよ」
「そうか。じゃあ早速案内頼む…と言いてえところなんだが、まだ追手がいるかもしれねぇ。今すぐ外に出るのは不味いか…」
そうだよ。
まだ諦めてないかもしれないしいま外に出るのは得策じゃないと思う。
しばらく様子を見ないと…
「ふふ、大丈夫よ。こっちに来てちょうだい」
そう言ってケイトリンさんは部屋の奥に行き、床にしゃがみこんで…
あ!
隠し階段!?
床板をずらすと、そこには地下へ通じると思しき階段が現れたのだった。
これって、ゲームでもあった秘密の地下通路だよね…
まさかここで登場することになろうとは。
「何で民家にこんな物が…」
「ここは唯の民家じゃないのよ。昔、盗賊ギルドの隠れ家の一つになってたみたいでね。最近は先代様の管理下にあったもので、それを利用させてもらってるの」
なるほど。
ゲームの時はまさにその盗賊ギルドを壊滅させるイベントで登場したんだけど、もう既に壊滅してるんだね。
「先代の?それは大丈夫なのか?」
そう、カイトが懸念を口にする。
確かに、黒幕のマクガレンに筒抜けだと困るよ。
「大丈夫。この辺の詳細はもともとは先代様の子飼いの者が管理してて、その人は今レジスタンスに協力してくれてるの」
それは、つまり…
「…つまり。やはり先代の領主様は病気療養などでは無い、と言うことですわね」
「そうよ。まだ幼いご子息様を傀儡にして無理矢理後見の座について好き放題しているのよ。多分、先代様は領主邸で監禁状態にあると思うわ。まあ、そのへんの経緯はアジトについてから話すわ」
そうして、ケイトリンさんに先導されて私達は地下道に入っていくのだった。
「こりゃあ、凄えな…」
「本当に…こんな物が街の地下にあるとは、驚きですわ」
「ママ~、すごいの!」
階段を降りたその先には、3人並んで歩いても余裕があるほどの地下通路。
天井の高さも2メートル程あり、壁面には照明の魔道具と思われる灯りも灯されているので歩くのに何の支障もない。
通路は一本道ではなく、所々に十字路や分岐があって案内がなければ迷ってしまいそうだ。
「ミーティア、迷子になったら大変だからな。しっかり手をつないでるんだぞ」
「うん!」
今は、私とカイトでミーティアの手をつないで、並んで歩いてる。
こんなところで迷子になったら大変だからね。
「あんたたちは夫婦なのかしら?奥さんは若い割に随分子供が大きいみたいだけど」
「おおお奥さん!?ち、違います!私達は…ええと…」
む?
私達は…?
何なんだろう?
「う~ん?その、恋人じゃないんですけど、ほぼ恋人といいますか、友人以上恋人未満というか、もはや九割方恋人と言っても過言はないというか…いやそれは言い過ぎ?でもでも、お互い好きなんだから別にいいんじゃないかな…でもやっぱり…」
「恋人ですわ」
「パパとママなの~」
「なるほど…分からないわ」
「ところでお嬢様、ブレゼンタムにもこう言う秘密の地下通路があったりするんですかね?」
ふと気になったのでお嬢様に聞いてみる。
「いえ、少なくとも私は聞いたことはありませんわ。もしかしたら、お父様なら知ってるかもしれませんが。ブレゼンタムも古い街ですから、このような地下道があっても不思議ではないですわね」
神代の頃から存在するという事だからね。
確かその頃はミュルグレイヒって名前だったか。
リーゼさんではないけど、そういう秘密があるかも、と思うとワクワクするね。
「…ねえ、あんた。ルシェーラさんだっけ?もしかしてブレゼンタムの偉い人かなんかなの?喋り方もお嬢様っぽいし」
「わ、私は唯の冒険者のルシェーラですわ…だよ」
お嬢様、どもってますよ?
口調もおかしいです。
それに…せめて偽名とかじゃ無いと、いつかバレるんじゃないかなぁ?
「…ま、いいか。もうすぐ着くよ」
「相当歩いてきたが、今どの辺りだ?感覚的には既に街の外に出てると思うんだが…」
「お、なかなか鋭いじゃない。ほら、もう出口よ」
彼女の言う通り、突き当りが階段になっていて、どうやら地下通路はここまでの様だ。
そして、階段を昇っていくと石段が途中から木の階段に変わって、丸太を組んだログハウスの様な部屋に出た。
部屋に窓はなく、扉が一つあるだけだ。
ケイトリンさんは床を軋ませながらその扉に近付いてノックする。
すると、扉の向こうから声がかかる。
「誰だ」
「ケイトリンよ」
「合言葉は?」
「『その手に自由を』」
おお…
秘密組織っぽいぞ!
「よし、入って良いぞ」
と、向こうから扉を開けてもらい、ケイトリンさんを先頭にして扉をくぐる。
そこは、ログハウスのリビングのようなところだったが、かなり広々としている。
部屋の一辺はテラスになっていてレジスタンスのアジトと言う割には随分と開放的だ。
そして、部屋の中にはレジスタンスのメンバーと思われる人が数人。
その中の一人、灰色の髪で柔和そうな顔立ちの男が、立ち上がって話しかけてきた。
「ご苦労だったね、ケイトリン。それに…ようこそ、ダードレイ一座の皆さん。私はヨルバルトと言います。どうぞよろしくお願いします」
とうやら彼がレジスタンスのリーダーのようだ。
歳は思いのほか若いようで、二十歳前後くらいだろうか?
口調は丁寧で物腰も柔らかな感じだ。
こうして、私達は彼らに協力するべく、話し合いを始めるのだった。