残酷な描写あり
第四幕 プロローグ 『黄金街道』
ブレゼンタムから古都イスパルナを経て王都アクサレナに至る街道は通称『黄金街道』と呼ばれている。
ブレーゼン領の豊かな麦畑を黄金になぞらえたものだ。
さて、私達ダードレイ一座の一行は、その街道を王都に向けて進んでいるのだが、私はその道すがら思いもよらなかった同行者と話をしていた。
「…あの~、どうしてウチの一行にお嬢様がいらっしゃるんです?」
「私だけではありませんわ。リーゼさんもいらしてよ」
「あはは~。私はアスティカントに向かうのですが…せっかくなのでご一緒させてもらおうと思いまして」
「ああ、『学院』に向かわれるんですね。じゃあ王都までは一緒ですか」
「はい、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!…で、お嬢様はなんでなんです?」
「私は『学園』に入学するんですの」
「『学園』?『学院』ではなく?」
「ええ。王都にある国立のアクサレナ高等学園ですわ」
「えっと、イスパル王国内で最も優秀なものが集まると言われている高等教育機関ですよね。貴族の子弟のみならず、広く一般からも優秀な人材を集めているという…」
「ええ。アスティカントほどではありませんけど」
「単純に比較できるものでは無いんじゃないですか?アスティカントは専門分野に特化した人材が集まるところ。アクサレナの学園は幅広い知識と教養が求められると言いますし」
「いや、どっちにしろ凄いですよ!…ところで、失礼ですけどお嬢様っておいくつなんですか?」
「私ですか?この春で13歳になりましたわ」
「えっ!?私より年下だったんですか!?」
意外だ…
同じくらいか、ちょっと上かと思ってたよ。
落ち着いてるし、背も私より高いし、大人っぽいし。
…身体の一部が私より立派だし…
カイトさんの時も思ったけど、この世界の人って早熟なのかな…?
「…どこを見てるんですの?」
「え?い、いや~、あははは…何を食べたらそんなに大きくなるのかな~と」
胸部装甲の大きさは
ルシェーラ様 ≧ リーゼさん >(超えられない壁)> 私、だ!
ちくせう…
「…カティアさんは、カイト様に揉んで貰えば良いのですわ」
「もむ!?な、ななななななにを言ってるんですか!?」
貴族のお嬢様が何てこと言うんですか!
破廉恥な!
大体ね、揉むほど無いんだよ!(怒)
「あら?あれだけ盛大に告白したのですから、別に恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」
「はうっ!?み、見てらしたので…?」
「もちろんですわ。あんな素晴らしい告白の場面、見逃せるものですか。あ、お母様もバッチリご覧になってますわよ」
ひぃ~~!?
そういえば奥様も見送りに来ていらっしゃった!
せっかく忘れていたのに、思い出しちゃったじゃないか…!
「しかし、せっかくカティアさんが勇気を出して告白したっていうのに。カイト様ったら、真面目というか、堅物というか、ヘタレと言うか」
「…ヘタレじゃないもん」
「ヘタレです!…全く、問題を抱えてるのは分かりますけど、『俺がお前を守る!』くらいの気概は見せて欲しかったですわ」
…確かに、そんな事言われたら嬉しいかも。
と言うか。
「お嬢様はカイトさんの悩み事を知ってるんですか?」
「…詳しくは存じませんけど、ある程度の予想は付きます。ですが、私の口からは言えませんわ」
「あ、それは大丈夫ですよ。カイトさんが自分で話してくれるって約束してくれましたから」
「ほんと、健気でいじらしいですわ…」
そんな大層なものじゃないと思うけど…
「ところでお嬢様…何で侯爵家の馬車じゃないんです?と言うか、お付きの人は…」
そう、お嬢様は私達と一緒に歩いている。
服装もドレスなんかではなく、動きやすい冒険者の格好だ。
流石に槍戦斧は持ってないけど。
そして、貴族のご令嬢の移動ともなれば護衛なり侍女なりが付いているのが当たり前だと思うのだが…
「まあ、良いではないですか。今の私は冒険者のルシェーラですわ。あ!私、冒険者登録したんですのよ、ほら!」
と言って、ルシェーラ様はギルド証を見せてくれる。
登録したてなので、当然ランクは一番下のH…と思いきや、それより4つも上のDランクだ。
戦闘技量中級もついてるね。
お嬢様の腕なら上級でも良さそうだけど。
「…確か、ランクの飛び級って無かったと思うんですけど…」
「ああ、登録したのは魔軍討伐の直前でしたから。遊撃部隊での功績が加味されたのですわ。試験もちゃんと受けましたし、不正はしてませんよ?」
「あ、いえ、そこは疑ってませんよ。確かに功績を考えればそれくらいは上がるか…」
H~Eあたりは上に上がるのも早いし、別に不思議じゃなかったね。
「と言うか、話がそれましたけど…要するにお忍びってことですか?」
「そういう事です」
いや、ブレーゼン侯爵家は自由すぎるでしょ…
「ママ~!おねえちゃんたち~!」
「あら、ミーティアちゃん、どうしたの?パパと一緒じゃなかったの?」
「あのね、とーぞく、があらわれたんだって!」
「「「盗賊?」」」
こんな主要街道で盗賊…?
「…まだこの辺り一帯はブレーゼン領軍の管轄ですわね」
既に数時間は歩いているが、まだブレーゼン領は出ていない。
領境まではまだしばらくかかるはずだ。
「ブレーゼン領は豊かですし、盗賊に身をやつす人なんて聞いたことなかったですけど」
「そうですわね…セーフティネットも結構充実してる方だと思いますし…あるいは余所から流れてきたのかもしれませんわね」
まあ、自らの欲望のために外道に堕ちる人もいるから、いくら政治がしっかりしていても、その手の人間が全くいなくなるわけではない。
しかし、やはり盗賊が蔓延る最大の要因は貧困によるものだろう。
「ブレーゼン領の東隣は…リッフェル伯爵領でしたか」
「ええ、このまま街道を進んでいけば、そうですわね」
「ん~…何かあるんですかねぇ?…とにかく、盗賊を何とかしないとですね」
そうして、私達は盗賊を迎え撃つべく戦闘態勢を取るのだった。
ブレーゼン領の豊かな麦畑を黄金になぞらえたものだ。
さて、私達ダードレイ一座の一行は、その街道を王都に向けて進んでいるのだが、私はその道すがら思いもよらなかった同行者と話をしていた。
「…あの~、どうしてウチの一行にお嬢様がいらっしゃるんです?」
「私だけではありませんわ。リーゼさんもいらしてよ」
「あはは~。私はアスティカントに向かうのですが…せっかくなのでご一緒させてもらおうと思いまして」
「ああ、『学院』に向かわれるんですね。じゃあ王都までは一緒ですか」
「はい、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!…で、お嬢様はなんでなんです?」
「私は『学園』に入学するんですの」
「『学園』?『学院』ではなく?」
「ええ。王都にある国立のアクサレナ高等学園ですわ」
「えっと、イスパル王国内で最も優秀なものが集まると言われている高等教育機関ですよね。貴族の子弟のみならず、広く一般からも優秀な人材を集めているという…」
「ええ。アスティカントほどではありませんけど」
「単純に比較できるものでは無いんじゃないですか?アスティカントは専門分野に特化した人材が集まるところ。アクサレナの学園は幅広い知識と教養が求められると言いますし」
「いや、どっちにしろ凄いですよ!…ところで、失礼ですけどお嬢様っておいくつなんですか?」
「私ですか?この春で13歳になりましたわ」
「えっ!?私より年下だったんですか!?」
意外だ…
同じくらいか、ちょっと上かと思ってたよ。
落ち着いてるし、背も私より高いし、大人っぽいし。
…身体の一部が私より立派だし…
カイトさんの時も思ったけど、この世界の人って早熟なのかな…?
「…どこを見てるんですの?」
「え?い、いや~、あははは…何を食べたらそんなに大きくなるのかな~と」
胸部装甲の大きさは
ルシェーラ様 ≧ リーゼさん >(超えられない壁)> 私、だ!
ちくせう…
「…カティアさんは、カイト様に揉んで貰えば良いのですわ」
「もむ!?な、ななななななにを言ってるんですか!?」
貴族のお嬢様が何てこと言うんですか!
破廉恥な!
大体ね、揉むほど無いんだよ!(怒)
「あら?あれだけ盛大に告白したのですから、別に恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」
「はうっ!?み、見てらしたので…?」
「もちろんですわ。あんな素晴らしい告白の場面、見逃せるものですか。あ、お母様もバッチリご覧になってますわよ」
ひぃ~~!?
そういえば奥様も見送りに来ていらっしゃった!
せっかく忘れていたのに、思い出しちゃったじゃないか…!
「しかし、せっかくカティアさんが勇気を出して告白したっていうのに。カイト様ったら、真面目というか、堅物というか、ヘタレと言うか」
「…ヘタレじゃないもん」
「ヘタレです!…全く、問題を抱えてるのは分かりますけど、『俺がお前を守る!』くらいの気概は見せて欲しかったですわ」
…確かに、そんな事言われたら嬉しいかも。
と言うか。
「お嬢様はカイトさんの悩み事を知ってるんですか?」
「…詳しくは存じませんけど、ある程度の予想は付きます。ですが、私の口からは言えませんわ」
「あ、それは大丈夫ですよ。カイトさんが自分で話してくれるって約束してくれましたから」
「ほんと、健気でいじらしいですわ…」
そんな大層なものじゃないと思うけど…
「ところでお嬢様…何で侯爵家の馬車じゃないんです?と言うか、お付きの人は…」
そう、お嬢様は私達と一緒に歩いている。
服装もドレスなんかではなく、動きやすい冒険者の格好だ。
流石に槍戦斧は持ってないけど。
そして、貴族のご令嬢の移動ともなれば護衛なり侍女なりが付いているのが当たり前だと思うのだが…
「まあ、良いではないですか。今の私は冒険者のルシェーラですわ。あ!私、冒険者登録したんですのよ、ほら!」
と言って、ルシェーラ様はギルド証を見せてくれる。
登録したてなので、当然ランクは一番下のH…と思いきや、それより4つも上のDランクだ。
戦闘技量中級もついてるね。
お嬢様の腕なら上級でも良さそうだけど。
「…確か、ランクの飛び級って無かったと思うんですけど…」
「ああ、登録したのは魔軍討伐の直前でしたから。遊撃部隊での功績が加味されたのですわ。試験もちゃんと受けましたし、不正はしてませんよ?」
「あ、いえ、そこは疑ってませんよ。確かに功績を考えればそれくらいは上がるか…」
H~Eあたりは上に上がるのも早いし、別に不思議じゃなかったね。
「と言うか、話がそれましたけど…要するにお忍びってことですか?」
「そういう事です」
いや、ブレーゼン侯爵家は自由すぎるでしょ…
「ママ~!おねえちゃんたち~!」
「あら、ミーティアちゃん、どうしたの?パパと一緒じゃなかったの?」
「あのね、とーぞく、があらわれたんだって!」
「「「盗賊?」」」
こんな主要街道で盗賊…?
「…まだこの辺り一帯はブレーゼン領軍の管轄ですわね」
既に数時間は歩いているが、まだブレーゼン領は出ていない。
領境まではまだしばらくかかるはずだ。
「ブレーゼン領は豊かですし、盗賊に身をやつす人なんて聞いたことなかったですけど」
「そうですわね…セーフティネットも結構充実してる方だと思いますし…あるいは余所から流れてきたのかもしれませんわね」
まあ、自らの欲望のために外道に堕ちる人もいるから、いくら政治がしっかりしていても、その手の人間が全くいなくなるわけではない。
しかし、やはり盗賊が蔓延る最大の要因は貧困によるものだろう。
「ブレーゼン領の東隣は…リッフェル伯爵領でしたか」
「ええ、このまま街道を進んでいけば、そうですわね」
「ん~…何かあるんですかねぇ?…とにかく、盗賊を何とかしないとですね」
そうして、私達は盗賊を迎え撃つべく戦闘態勢を取るのだった。