第三九話 アーケード街
三人は太宰府天満宮の帰り道、不快なバイクの集団に遭遇する。
天満宮で参拝を済ませた三人は、アーケード街を下った。午後五時という早い時間ながら、ほとんどの店が閉店していた。唯一開いていたのは、世界中で人気があるカフェチェーン店だった。巳代は見慣れた名前に心が踊ったが、外観は東京で見慣れたものとは異なっていた。木製で、どこかアーティスティックな見た目をしていた。どうやら日本で唯一、ここ太宰府でのみは外観が統一されていないらしい。
そんなことを思いながら下った時、耳を劈(つんざ)くような轟音が轟いた。
すると目の前に数台の大型バイクが現れた。何度も手首を捻り、空ぶかしをしては、ノロノロと信号で止まった。そして信号が青へ変わると、心臓が止まりそうな程の音を一斉にならし、爆音で走り去っていった。
こういう、疑いようのないほどの害悪に、今更腹を立てる様な巳代ではなかった。ただ、心底ウザったいと感じ、チッと舌打ちをした。
隣を見れば、渋川は不快そうな顔をして、胸に手を当てていた。穏やかで神聖な空間から、耳にしたこともない轟音に晒されたのだからそれは仕方がないだろうと、巳代は思った。
歩き出そうとして前を向いた時、巳代は初めて、弥勒が立ち止まってこちらを見ていることに気づいた。
弥勒はその轟音を聞いてはいない。だが、巳代と渋川が覚えた不快感を直接、波長として知覚した。そして振り返ったのだった。
弥勒は、不安を感じていた。
「どうしたの? 今のカラフルなバイクの集団と関係ある?」
弥勒の問に、巳代は「ある」とだけ答えた。そして弥勒の前へと進んでいった。
弥勒は渋川のストレスが減らないまま絶えず波長として現れることから、弥勒は、音が人を不快にさせたのだと悟った。
福岡は犯罪が多い街だと聞いていた。つまりそこには、モラルが低い人が溢れている。その小さな一つ一つを潰していけば、大友修造へと繋がるものがあるのだ。弥勒は観光気分を払拭し、こう強く思った。
「見つけてやる、巨悪の大元を……!」
それから数日して、三人は太宰府分校へ転校した。
弥勒は、日向分校でも行った様な挨拶をこなし、それから一日を過ごした。かなり都会に近いが、流石は太宰府というべきか、この分校にも怪異がそこら辺を平然と歩いていた。
この太宰府に来た理由は、九州北部を縦横無尽に駆け巡り、諸問題に触れ、犯罪が起きれば独自にその組織を辿って大友修造の居場所と目的を突き止めることである。
きっと、目まぐるしい旅になると、弥勒は思った。
巳代は放課後、弥勒と会って、今後の方向を決める為の話し合いを始めた。
「テロを行わず政府転覆を図るって、一体どんな方法なのかな」
「なぁ弥勒、考えたんだが。東京侵攻というのは俺達はテロだとばかり想像していたが、もしかしたらそうでは無いだけで、武力行使を用いることを視野に入れるべきではないか。もっと正確にいえば、武力行使をチラつかせて、政府に政権交代をさせる脅しをかけるということだ。その為には……政府が自分達では抗い切れないという程の圧倒的な武力を揃える必要がある」
「それは……難しいんじゃないかな。そんなものどこで揃えるのか分からないし、それだけの武力が必要なら、それこそ陰陽部の仲間を募るはずだよ」
「そうだ……だから、学園内に味方は必要ないのではないか。一度は大友修造が第九感全能の使い手なのではないかと思ったが……もしそうであれば、そもそも仲間など必要ではないのではないかとも思う。だから俺が思うのは……自衛団の掌握と、軍事クーデターだ」
そんなことを思いながら下った時、耳を劈(つんざ)くような轟音が轟いた。
すると目の前に数台の大型バイクが現れた。何度も手首を捻り、空ぶかしをしては、ノロノロと信号で止まった。そして信号が青へ変わると、心臓が止まりそうな程の音を一斉にならし、爆音で走り去っていった。
こういう、疑いようのないほどの害悪に、今更腹を立てる様な巳代ではなかった。ただ、心底ウザったいと感じ、チッと舌打ちをした。
隣を見れば、渋川は不快そうな顔をして、胸に手を当てていた。穏やかで神聖な空間から、耳にしたこともない轟音に晒されたのだからそれは仕方がないだろうと、巳代は思った。
歩き出そうとして前を向いた時、巳代は初めて、弥勒が立ち止まってこちらを見ていることに気づいた。
弥勒はその轟音を聞いてはいない。だが、巳代と渋川が覚えた不快感を直接、波長として知覚した。そして振り返ったのだった。
弥勒は、不安を感じていた。
「どうしたの? 今のカラフルなバイクの集団と関係ある?」
弥勒の問に、巳代は「ある」とだけ答えた。そして弥勒の前へと進んでいった。
弥勒は渋川のストレスが減らないまま絶えず波長として現れることから、弥勒は、音が人を不快にさせたのだと悟った。
福岡は犯罪が多い街だと聞いていた。つまりそこには、モラルが低い人が溢れている。その小さな一つ一つを潰していけば、大友修造へと繋がるものがあるのだ。弥勒は観光気分を払拭し、こう強く思った。
「見つけてやる、巨悪の大元を……!」
それから数日して、三人は太宰府分校へ転校した。
弥勒は、日向分校でも行った様な挨拶をこなし、それから一日を過ごした。かなり都会に近いが、流石は太宰府というべきか、この分校にも怪異がそこら辺を平然と歩いていた。
この太宰府に来た理由は、九州北部を縦横無尽に駆け巡り、諸問題に触れ、犯罪が起きれば独自にその組織を辿って大友修造の居場所と目的を突き止めることである。
きっと、目まぐるしい旅になると、弥勒は思った。
巳代は放課後、弥勒と会って、今後の方向を決める為の話し合いを始めた。
「テロを行わず政府転覆を図るって、一体どんな方法なのかな」
「なぁ弥勒、考えたんだが。東京侵攻というのは俺達はテロだとばかり想像していたが、もしかしたらそうでは無いだけで、武力行使を用いることを視野に入れるべきではないか。もっと正確にいえば、武力行使をチラつかせて、政府に政権交代をさせる脅しをかけるということだ。その為には……政府が自分達では抗い切れないという程の圧倒的な武力を揃える必要がある」
「それは……難しいんじゃないかな。そんなものどこで揃えるのか分からないし、それだけの武力が必要なら、それこそ陰陽部の仲間を募るはずだよ」
「そうだ……だから、学園内に味方は必要ないのではないか。一度は大友修造が第九感全能の使い手なのではないかと思ったが……もしそうであれば、そもそも仲間など必要ではないのではないかとも思う。だから俺が思うのは……自衛団の掌握と、軍事クーデターだ」