第57話 ここら辺で少し考えをまとめて…
俺の存在が米ソの艦隊に大公開された。そんでもって今回のパフォーマンスで幽炉開放を行った為に、最終的に俺の幽炉残量は現在33%となっている。
仔細はパイロットの鈴代ちゃん次第ではあるが、激戦が予想される中、俺に許された出撃回数はもう片手で数えられる程だろう。
お誂え向きな事に、俺達の次の目的地はラスボスの城であるS&B社の本社衛星だ。
ここを早期のうちに攻略出来れば、虚空現象を大量破壊兵器として使用する物騒な連中の企てを防ぐ事が出来る。
俺としては『鎌付き』の言う『幽炉にも人権を認め自治権を与えよ』と言う、一見まともそうな意見にもニワカに賛同できないでいる。俺自身がその世界で恩恵を受けるであろう幽炉人間なのにも関わらず、だ。
奴は幽炉の生産も幽炉の判断に任せるべき、と言っていた。これは『覚醒した幽炉の自治』を謳っている様に見せて、裏を読めばあらゆる防御手段を無効化して目標を破壊する、強力無比な虚空爆弾を独占したい、とも受け取れる。
自分だけ強大な力を手に入れた奴がどの様な行為に及ぶのか? 考えるまでも無いよな。
俺はシマノだかしまむらだかいう人物の人となりは知らないが、かつて『鎌付き』から溢れ出た悪意の奔流の洗礼を受けた事がある。たとえ無意識下であっても、あんな怨念の塊みたいな奴の言葉を額面通りに受け取れる訳がない。
などと格好良く思索に戯れている最中に、気がついたら俺は青い服を着たオッサンの群れに取り囲まれていた。
この青い服は高橋が着ていた物と同じ服だな。て事はこいつらは縞原重工の奴らなのかな?
なに? なんなの? 寄ってたかってアタイを一体どうするつもりなのさ?!
…なんてボケる間もなく何やら俺の体に細工をしている様子。なにこれコワイ。
俺の周りは輝甲兵のパイロットやら整備員やらが取り巻くように囲んでいる。みんなこれから起こるであろうイベントに興味津々な感じだ。
怖いので鈴代ちゃんの端末にヘルプコールを入れる。あ、そうそう、端末で思い出した。文字の出力しかできなかった鈴代ちゃんの端末に、初めからインストールされていた読み上げ機能を使って、俺の声を擬似出力するアイデアを考えたのは長谷川さんだ。
て言うかそんな事が出来るなら最初からやっとけ、と言う話でもある。まぁ当初は俺の存在は秘匿するって話だからそれで良かったのかも知れんけどな。
やがて作業を終えたのかオッサン達が俺から離れる。入れ替わる様に鈴代ちゃんと長谷川さんが俺の前にやって来た。
「やぁ71くん、君には『鎌付き』同様に喋る為の外部スピーカーが取り付けられたのだよ。良かったじゃないか、今後は普通に喋れるぞ?」
長谷川さんが楽しそうに言ってくる。でも俺が今まで喋れなかったのはアンタの差し金でもあるんだぞ? まぁ別に怒ってないけど。
「私も何だか肩の荷が降りた気分。これからは田宮さんや竹本さんが話し相手になってくれるそうよ」
鈴代ちゃんも年寄り臭く右の肩を揉みながら腕を回している。なんだよぉ? ずいぶん冷たくないか? 俺達の絆はそんなモンじゃ無いだろう?
《2人してそんな『良かったね』みたいなリアクションやめてくんない? むしろアンタらのせいで俺が不自由してたんだからね?》
何か言い返してやらないと気が済まない、と思って出た言葉が先程取り付けられたスピーカーを通して、『すざく』格納庫内に響いた。
周りにいた奴らが一斉にどよめく。そうか、謀られた、今のは俺から何らかの言葉を引き出すための誘いの罠か。
俺の周りの野次馬の中から細身で初老、坊主頭でメガネをかけ、左足を不自由そうに引き摺ったオッサンが代表として歩み出てきた。この人、さっきの会議中継で涙の懺悔をしていた人だ。確か田宮さんだっけ?
「71君と言ったね? 君は本当に人間の魂なのかね…?」
と俺に近づきながら恐る恐る聞いてきた。幽炉に魂が込められている事は理解しつつも実感していなかったのだろう。
《…俺がAIとかその辺を疑われているのなら、それを否定できるソースは無いっすね。俺も気がついたらこの状態だったんで。ただ、この体になる前の記憶は割とはっきりしていますよ?》
再びどよめく野次馬たち。何だろう? この感じは有名人ではなく『珍獣』の扱いだな。もっと普通にチヤホヤして欲しいんだが。それも出来ればオッサンじゃなくて可愛い女の子に。
第一ロボが喋るのがそんなに珍しいかよ?! …って珍しいわな。以前高橋は俺の事を「ノーベル賞ものの大発見」って言ってたもんな。喋る為に造られたロボじゃないから尚更だよな。
まぁしょうがない、ここは玩具に徹してやろう。辛い戦場、俺ちゃんの軽妙な話術で皆を楽しませてやるのも一興だ。
俺が青服のオッサン達(よく見ると白人が多い。米連艦隊の奴らだろう)にもみくちゃにされて質問責めにあっている頃、いつの間にか『すざく』に来ていた米軍の隊長格の人らと鈴代ちゃん達パイロット連中は、別室に集まってブリーフィングをしているようだった。
ついさっき殺人事件が起きたばかりの部屋をよく再利用できるよなぁ、とは感心するが狭い艦の中、他に使える場所も無いだろうから仕方ない。
その程度でビビってたら軍人なんて出来ないもんな。
どの様に『鎌付き』やまどかの攻撃を防いで砦を攻略するか? が目下の議題と思われる。ある程度相手の出方が分かっているのだから、そろそろ効果的な対処法も構築できるはずだ。
そうだ、この先には『まどか』がいる… アイツをどうするのか? は俺の中でも未だ結論が出ていない。
まどかが脅迫的な状況で心神喪失となり凶行に及んだのは想像に難くない。俺もその場にいて正常な判断を失い、あろう事か鈴代ちゃんを殺そうとまで考えた。
…でもアイツはまだ『鎌付き』の側にいて、既に全米連合や欧州帝国の艦隊数万人の命を奪っている。
確かにまどかは『頭の足りない女』だという印象だ。だからといって喜んで虐殺を行う様な性格の女じゃ無いのは保証できる。
まどかとは一度ガッツリ話し合ってみる必要がある。良い様に弄ばれた米軍はメンツにかけて絶対にまどかを許さないだろうし、鈴代ちゃんだって香奈さんの仇であるまどかに対する殺意は保留されているだけで、解消されたとは考え難い。
その上で彼らより先に多数の無人輝甲兵に守られたまどかを確保して説教しなければならない。うん、無理ゲー。
「…それであの高橋の嬢ちゃんのやってた奇行が繋がってきたよ」
…おぉ、そう言えば俺はまだオッサンらに囲まれて質問大会してたんだったな。様々な質問は日本語、英語、ロシア語が混ざる。ソ大連艦隊は司令官を生贄にして尻尾巻いて逃げ出したらしいから、グラコロ隊付きとして以前から『すざく』に乗っていた人なのだろう。
それらの各種言語を巧みに使い分け問答する俺。知的で素敵、カッコイイ! …いやまぁ機体の電算のおかげなんだけどね。
オッサン達には色々な事を聞かれた。召喚された経緯、召喚される前の人生、この世界に来てからの思い、高橋やまどかとの出会い、『鎌付き』との戦い、そしてこれからの展望……。
ついでに偏向フィルターをハッキングして解除したのは鈴代ちゃんじゃなくて俺だと言う事もしっかりアピールしておいた。
しかし「どの様にしてやったのか?」との質問にはうまく答えられなくて少し悲しい思いをした。
と言うのも俺のハッキングは知識で数学を解くような感じの行いでは無く、『立ち塞がる壁に見えない穴がいくつか空いていて、それを手探りで探し出して、その奥にあるスイッチを切り替える』と言うイメージだったから、それをそのまま言うと凄くバカっぽいじゃないか。
まぁ《フィーリングっすかね》とかスカして誤魔化したけど、俺の地頭の悪さが見透かされてしまった気がしないでもない。
オッサンらの話を聞いているうちに、言外に彼らの疑念もうっすらと伝わってきた。「俺が幽炉同盟に寝返るんじゃないか?」と言う物だ。そうなる前に俺に何らかの予防措置、或いは破壊をしてしまった方が良いのではないか? と言う意思。
気持ちは分かる。立場が逆なら俺もそう思うだろう。外部スピーカーの取り付け作業に乗じて、こっそり自爆装置が組み込まれていても何ら不思議はない。
『気味が悪いから消してしまえ』と言う気持ちが伝わる一方、『歴史的に類を見ない貴重なサンプルだ』と言う気持ちも窺える。よく高橋が口にしていたような利己的で打算的な考えだ。
俺の敵は後ろにも居るかも知れない……。
新たな懸念が湧き上がる。だって縞原重工の人って『知り過ぎた奴は消せ』ってのをマジでやってた人達らしいじゃん。彼らの本来の仕事で言うなら俺や鈴代ちゃんは抹殺対象だ。
まぁ長谷川さんによってここまでぶっちゃけられた状況で、そこまで思い切った忠勤ぶりを示せる人はそうそう居ないとは思うけどさ。
気にしても仕方ない事なのではあるが、どうせ俺の生命の持ち時間は長くない。『鎌付き』事件を解決する、と言う本懐くらいは遂げさせて欲しい所存だ。
むう、考えをまとめるつもりが一層グチャグチャになってしまった気もする……。
どのみち俺の気持ちに関わらず作戦は実行され、俺達か幽炉同盟のどちらかは死滅する。ここは腹を括ってデンと構えておこう。
まどかに会えたらどうするか? は今あれこれ考えるよりも、その時が来てからその時の俺の偽らない思いをまどかにぶつけてやろうと思う。
さて、パイロット連中が格納庫に戻ってきた。どんな作戦で行くのか知らないが、鈴代ちゃんは自信ありげに薄く笑みを浮かべている。
「お待たせ71、決戦に向かうわよ」
《了解だ、相棒!》
仔細はパイロットの鈴代ちゃん次第ではあるが、激戦が予想される中、俺に許された出撃回数はもう片手で数えられる程だろう。
お誂え向きな事に、俺達の次の目的地はラスボスの城であるS&B社の本社衛星だ。
ここを早期のうちに攻略出来れば、虚空現象を大量破壊兵器として使用する物騒な連中の企てを防ぐ事が出来る。
俺としては『鎌付き』の言う『幽炉にも人権を認め自治権を与えよ』と言う、一見まともそうな意見にもニワカに賛同できないでいる。俺自身がその世界で恩恵を受けるであろう幽炉人間なのにも関わらず、だ。
奴は幽炉の生産も幽炉の判断に任せるべき、と言っていた。これは『覚醒した幽炉の自治』を謳っている様に見せて、裏を読めばあらゆる防御手段を無効化して目標を破壊する、強力無比な虚空爆弾を独占したい、とも受け取れる。
自分だけ強大な力を手に入れた奴がどの様な行為に及ぶのか? 考えるまでも無いよな。
俺はシマノだかしまむらだかいう人物の人となりは知らないが、かつて『鎌付き』から溢れ出た悪意の奔流の洗礼を受けた事がある。たとえ無意識下であっても、あんな怨念の塊みたいな奴の言葉を額面通りに受け取れる訳がない。
などと格好良く思索に戯れている最中に、気がついたら俺は青い服を着たオッサンの群れに取り囲まれていた。
この青い服は高橋が着ていた物と同じ服だな。て事はこいつらは縞原重工の奴らなのかな?
なに? なんなの? 寄ってたかってアタイを一体どうするつもりなのさ?!
…なんてボケる間もなく何やら俺の体に細工をしている様子。なにこれコワイ。
俺の周りは輝甲兵のパイロットやら整備員やらが取り巻くように囲んでいる。みんなこれから起こるであろうイベントに興味津々な感じだ。
怖いので鈴代ちゃんの端末にヘルプコールを入れる。あ、そうそう、端末で思い出した。文字の出力しかできなかった鈴代ちゃんの端末に、初めからインストールされていた読み上げ機能を使って、俺の声を擬似出力するアイデアを考えたのは長谷川さんだ。
て言うかそんな事が出来るなら最初からやっとけ、と言う話でもある。まぁ当初は俺の存在は秘匿するって話だからそれで良かったのかも知れんけどな。
やがて作業を終えたのかオッサン達が俺から離れる。入れ替わる様に鈴代ちゃんと長谷川さんが俺の前にやって来た。
「やぁ71くん、君には『鎌付き』同様に喋る為の外部スピーカーが取り付けられたのだよ。良かったじゃないか、今後は普通に喋れるぞ?」
長谷川さんが楽しそうに言ってくる。でも俺が今まで喋れなかったのはアンタの差し金でもあるんだぞ? まぁ別に怒ってないけど。
「私も何だか肩の荷が降りた気分。これからは田宮さんや竹本さんが話し相手になってくれるそうよ」
鈴代ちゃんも年寄り臭く右の肩を揉みながら腕を回している。なんだよぉ? ずいぶん冷たくないか? 俺達の絆はそんなモンじゃ無いだろう?
《2人してそんな『良かったね』みたいなリアクションやめてくんない? むしろアンタらのせいで俺が不自由してたんだからね?》
何か言い返してやらないと気が済まない、と思って出た言葉が先程取り付けられたスピーカーを通して、『すざく』格納庫内に響いた。
周りにいた奴らが一斉にどよめく。そうか、謀られた、今のは俺から何らかの言葉を引き出すための誘いの罠か。
俺の周りの野次馬の中から細身で初老、坊主頭でメガネをかけ、左足を不自由そうに引き摺ったオッサンが代表として歩み出てきた。この人、さっきの会議中継で涙の懺悔をしていた人だ。確か田宮さんだっけ?
「71君と言ったね? 君は本当に人間の魂なのかね…?」
と俺に近づきながら恐る恐る聞いてきた。幽炉に魂が込められている事は理解しつつも実感していなかったのだろう。
《…俺がAIとかその辺を疑われているのなら、それを否定できるソースは無いっすね。俺も気がついたらこの状態だったんで。ただ、この体になる前の記憶は割とはっきりしていますよ?》
再びどよめく野次馬たち。何だろう? この感じは有名人ではなく『珍獣』の扱いだな。もっと普通にチヤホヤして欲しいんだが。それも出来ればオッサンじゃなくて可愛い女の子に。
第一ロボが喋るのがそんなに珍しいかよ?! …って珍しいわな。以前高橋は俺の事を「ノーベル賞ものの大発見」って言ってたもんな。喋る為に造られたロボじゃないから尚更だよな。
まぁしょうがない、ここは玩具に徹してやろう。辛い戦場、俺ちゃんの軽妙な話術で皆を楽しませてやるのも一興だ。
俺が青服のオッサン達(よく見ると白人が多い。米連艦隊の奴らだろう)にもみくちゃにされて質問責めにあっている頃、いつの間にか『すざく』に来ていた米軍の隊長格の人らと鈴代ちゃん達パイロット連中は、別室に集まってブリーフィングをしているようだった。
ついさっき殺人事件が起きたばかりの部屋をよく再利用できるよなぁ、とは感心するが狭い艦の中、他に使える場所も無いだろうから仕方ない。
その程度でビビってたら軍人なんて出来ないもんな。
どの様に『鎌付き』やまどかの攻撃を防いで砦を攻略するか? が目下の議題と思われる。ある程度相手の出方が分かっているのだから、そろそろ効果的な対処法も構築できるはずだ。
そうだ、この先には『まどか』がいる… アイツをどうするのか? は俺の中でも未だ結論が出ていない。
まどかが脅迫的な状況で心神喪失となり凶行に及んだのは想像に難くない。俺もその場にいて正常な判断を失い、あろう事か鈴代ちゃんを殺そうとまで考えた。
…でもアイツはまだ『鎌付き』の側にいて、既に全米連合や欧州帝国の艦隊数万人の命を奪っている。
確かにまどかは『頭の足りない女』だという印象だ。だからといって喜んで虐殺を行う様な性格の女じゃ無いのは保証できる。
まどかとは一度ガッツリ話し合ってみる必要がある。良い様に弄ばれた米軍はメンツにかけて絶対にまどかを許さないだろうし、鈴代ちゃんだって香奈さんの仇であるまどかに対する殺意は保留されているだけで、解消されたとは考え難い。
その上で彼らより先に多数の無人輝甲兵に守られたまどかを確保して説教しなければならない。うん、無理ゲー。
「…それであの高橋の嬢ちゃんのやってた奇行が繋がってきたよ」
…おぉ、そう言えば俺はまだオッサンらに囲まれて質問大会してたんだったな。様々な質問は日本語、英語、ロシア語が混ざる。ソ大連艦隊は司令官を生贄にして尻尾巻いて逃げ出したらしいから、グラコロ隊付きとして以前から『すざく』に乗っていた人なのだろう。
それらの各種言語を巧みに使い分け問答する俺。知的で素敵、カッコイイ! …いやまぁ機体の電算のおかげなんだけどね。
オッサン達には色々な事を聞かれた。召喚された経緯、召喚される前の人生、この世界に来てからの思い、高橋やまどかとの出会い、『鎌付き』との戦い、そしてこれからの展望……。
ついでに偏向フィルターをハッキングして解除したのは鈴代ちゃんじゃなくて俺だと言う事もしっかりアピールしておいた。
しかし「どの様にしてやったのか?」との質問にはうまく答えられなくて少し悲しい思いをした。
と言うのも俺のハッキングは知識で数学を解くような感じの行いでは無く、『立ち塞がる壁に見えない穴がいくつか空いていて、それを手探りで探し出して、その奥にあるスイッチを切り替える』と言うイメージだったから、それをそのまま言うと凄くバカっぽいじゃないか。
まぁ《フィーリングっすかね》とかスカして誤魔化したけど、俺の地頭の悪さが見透かされてしまった気がしないでもない。
オッサンらの話を聞いているうちに、言外に彼らの疑念もうっすらと伝わってきた。「俺が幽炉同盟に寝返るんじゃないか?」と言う物だ。そうなる前に俺に何らかの予防措置、或いは破壊をしてしまった方が良いのではないか? と言う意思。
気持ちは分かる。立場が逆なら俺もそう思うだろう。外部スピーカーの取り付け作業に乗じて、こっそり自爆装置が組み込まれていても何ら不思議はない。
『気味が悪いから消してしまえ』と言う気持ちが伝わる一方、『歴史的に類を見ない貴重なサンプルだ』と言う気持ちも窺える。よく高橋が口にしていたような利己的で打算的な考えだ。
俺の敵は後ろにも居るかも知れない……。
新たな懸念が湧き上がる。だって縞原重工の人って『知り過ぎた奴は消せ』ってのをマジでやってた人達らしいじゃん。彼らの本来の仕事で言うなら俺や鈴代ちゃんは抹殺対象だ。
まぁ長谷川さんによってここまでぶっちゃけられた状況で、そこまで思い切った忠勤ぶりを示せる人はそうそう居ないとは思うけどさ。
気にしても仕方ない事なのではあるが、どうせ俺の生命の持ち時間は長くない。『鎌付き』事件を解決する、と言う本懐くらいは遂げさせて欲しい所存だ。
むう、考えをまとめるつもりが一層グチャグチャになってしまった気もする……。
どのみち俺の気持ちに関わらず作戦は実行され、俺達か幽炉同盟のどちらかは死滅する。ここは腹を括ってデンと構えておこう。
まどかに会えたらどうするか? は今あれこれ考えるよりも、その時が来てからその時の俺の偽らない思いをまどかにぶつけてやろうと思う。
さて、パイロット連中が格納庫に戻ってきた。どんな作戦で行くのか知らないが、鈴代ちゃんは自信ありげに薄く笑みを浮かべている。
「お待たせ71、決戦に向かうわよ」
《了解だ、相棒!》