第41話 吸血鬼
〜シナモン視点
『鎌付き』の幽炉は間違いなく『話す人』だ。今現在、全世界に何人のトーカーが居るのか知る由も無いけれど、研究者として3人ものトーカーと接触出来た人間は、世界中でもボクだけだと断言できる。
71くん、まどかちゃん、そしてこの『鎌付き』さん……。
いずれも癖のある人達だけど、純粋な1人足り得る魂を持つ人ってやっぱり何か常人らしからぬ『モノ』を感じるよね。
今となっては71くんや香奈ちゃん達と遊んでいた時が一番幸せだったな、と思えるよ……。
『鎌付き』に関しては、その口調から知能レベルの高い成人男性だと予想されるけど、初対面で「生身で宇宙遊泳したくなかったら私の命令に従え」なんて言って脅してくる人とは、本当はあまりお近づきになりたくは無いものだよね。
そんなボクがここ輸送船『はまゆり』に捕らえられてからやらされてきた仕事は、主に幽炉の交換だ。
『鎌付き』にはご存知の通り2基の幽炉が搭載されている。そのうちの1基、いや1人が『鎌付き』氏なんだけど、彼は『幽炉の残量回復手段の構築』をライフワークとしているボクの目の前で、信じられない行為を行った。
とりあえず『鎌付き』の幽炉をA、もう一基の幽炉をBとさせて頂く。
ボクが最初に幽炉交換作業を行った時に確認した幽炉残量は、Aが32%、Bが0%だった。
Bを新品(100%)の幽炉に交換する。するとBの残量が見る見る減っていき、その分のエネルギーがAの幽炉に流れ込んで行った。
最終的にBの残量が0で尽きた時に、Aは82%まで回復していた。
つまり『鎌付き』の幽炉は1:2とかなり非効率ながらも、他の幽炉のエネルギーを吸い取る事で、残量を回復させる事が出来たのだ。
驚いたよね。まさかそんな手段で幽炉の残量回復が可能だなんて想像すらしていなかったからね。
言うまでも無く幽炉ってのは人の魂だ。『おいコラ、他人の命を何だと思っているんだ?』と義憤を抱く自分と、『幽炉回復にこんな手段があったのか!』といたく感心している自分が居た。
『複数の幽炉の残量をチャンポンする』というアイデアこそ以前から持ってはいたものの、具体的な手段については構想すら出来ていなかった。
…様々な悪い点に目を瞑れば、この『鎌付き』氏はボクの研究に於いて、今後途轍もなく有用な存在になるはずだ。
このシステムを解明して改良出来れば、71くんやまどかちゃんも幽炉を回復させる事が出来る……。
少し前までのボクならこの状況に手放しで飛びついて、大喜びで彼に指導を求め、研究を始めただろう。
でも今は少し考えが変わった。71くん達と過ごす時間は確かに楽しい。でもこの世界に彼らを縛り付ける事が、正義だとは思えなくなってきているのも確かだ。
以前71くんには『残量が10%を切れば幽炉を取り外して元の世界に戻している』と説明した。
その行為自体は間違いなく行われている。実際に戻す現場に立ち会った事が無いので、語尾に『はずだ』と付けざるを得ないのがもどかしい所だが。
しかし、戻された精神がどうなったのかまでは追跡しきれない、いや『追跡しても意味が無いからやっていない』のが実情だ。
言葉は悪いが『魂の絞りカス』の行方など、縞原重工にしてみれば考慮の対象にもならないのだろう。
仮に2人の魂が入った幽炉を戻すとする。これが元の世界に帰った時にきちんと2人に分離されているかどうかまでは保証されないのだ。
理論的には1人の体に2人分の魂が入って錯乱してしまう事もあり得るし、どちらか片方だけが戻って、もう片方の魂は因果地平に霧散してしまうパターンもあるだろう。
3人の魂で構成されている幽炉なら言わずもがなだ。
それでも71くんやまどかちゃんの様なピュアワンならば、魂は元の世界に無事に戻れる可能性が高い。
もし今からでも叶う事ならば、71くんやまどかちゃんの幽炉を補充してから元の世界へ返してあげたい。
幽炉残量1%=寿命1年、とかいう単純な話では無いだろうけど、一般的な天寿を全うできるだけの命は戻して上げたいと思う。
ここはその為にも、この『鎌付き』の元で幽炉を回復させる方法(他の幽炉を『食らう』のは最終手段として)を探るのは悪い環境では無いかも知れない。
幽炉同士を融合させた場合の精神の混在具合とかも調べられれば言う事なしだ。
もちろん問題もある。『鎌付き』は強烈な催眠だか暗示だかの力で他人を操れる、とアンジェラちゃんが言っていた。そんな『鎌付き』に近付きすぎず離れすぎずの距離感を持って対応していかなければならないだろう。
出会った初日は強引すぎる幽炉の補充方法にショックを受けて何も出来なかったけど、一晩考える時間を得て、どうにか上の結論に辿り着いた次第だよ。
となれば、『鎌付き』の人となりを少しでも調査しておく必要も出てくる。ボクの得た情報が、後々71くん達の武器になりうるかも知れないからね。彼らと連絡が取れれば、の話だけどさ……。
まずは相手の事を少しでも探ってみる。昨日取り替えた幽炉Bが残量ゼロになっていたので、その交換作業の際に談笑タイムを設けてみた。
「そう言えば自己紹介もまだだったよね。ボクは縞原重工の技術士の高橋逸美。一応『幽炉理論』の学位も持っているよ」
《ほぉ、若いのにそれは素晴らしい。私の名はウプィーリだ。幽炉は私も専門だぞ? と言うより私無くして幽炉も人形飛行戦車も有り得ない訳だがな》
ウプィーリ……。
今アンジェラちゃんが画面で補足翻訳してくれたけど、ロシア語で『吸血鬼』って意味なんだね。
確かに他の幽炉の命を吸い取っているようにも見えるから、『吸血鬼』と言うのはこの上ない呼称だろうと思うよ。
それともう1つ。
『吸血鬼を自称する幽炉技術の専門家』……。
ボクには1人心当たりがある。とっくの昔に亡くなっていたと思っていた伝説の人だ。
「…ねぇ、キミってもしかしてニコライ・シマノビッチ博士だったりするの…?」
問いかける声に畏れが孕む。ボクら幽炉関係者にとってシマノビッチ博士は希望であり、憧れであり、師であり、そして唾棄すべき犯罪者だ……。
☆
ニコライ・ヨセフ・シマノビッチは、約60年前のソ大連の科学者で幽炉技術の発案者だ。
『人間の魂』を触媒に膨大なエネルギーを生み出す『幽炉』、その基本形はこの男の頭の中から生み出された。
宇宙時代になって、どの国家でも人口は厳しく規制され簡単に子供を産めなくなっていった。
しかし、逆に考えれば国家によって制御できる人口とは、生活を保証できる人口とも言い変えられる。
つまり、極端に貧窮する住民や人知れず孤独死する住民もほぼゼロにできた訳だ。
そんな世界にあって、制限されながらも生まれてくる子供は、いずれも国の宝であって、精神を含む健康状態なども十分にケアされていた。
そんなかつて無いほど人間が保護された世界で、シマノビッチは「人の魂を動力に使え」と説いたのだ。彼は白眼視され、当然ながら倫理的な面で学会からの支持を得る事は叶わなかった。
ある日、ニコライ・シマノビッチは逮捕される。罪状は『連続未成年略取、暴行、殺人』だった。
7〜12歳の12人もの少年少女を言葉巧みに拐かし、自宅の研究室で頭脳に電極を差し込むなどの実験を繰り返していた。拐われ、殺された子供達の半数には、男女問わず性暴行を受けた痕跡もあったという……。
逮捕された時には殺した子供達の血液を溜め込んで、毎朝飲んでいた。と言うから筋金入りの殺人狂だったのだろう。
そこで付いたあだ名が吸血鬼と言う訳だ。
裁判で無期懲役の判決を受けた彼は、鉱山衛星に併設された刑務所に移送される予定であったが、彼を乗せた連絡艇は突如進路を変え全米連合に逃げ込んだ。
そのまま米連に亡命して、再び科学者として返り咲き、数年後には幽炉理論を完成させ実用化に至った。と言う訳だ。
米連でまだ大人しくしていれば良かったのに、また悪い癖が出たんだろうね。ソ大連に居た時と同様に子供を狙った犯罪を繰り返した。
前回はまだ幽炉の実験と言い訳できたけど、今回は幽炉の完成後だったから何も言い訳が出来なかった。
単純にこの変態がド変態だったって事が露呈しただけだった。
結局米連当局に逮捕されて以前と同様に無期懲役の判決を受け、そのまま二度と世に出る事も無く刑死した。
…その様にボクは伝え聞いていた。
幽炉理論の勉強において、シマノビッチ博士の論文を無視する事は不可能だ。彼無しには幽炉の基礎研究さえ覚束なかったと断言できる。
シマノビッチ博士は本当に天才だったと思う。ボクは学者としての彼は、この上なく尊敬している。
個人としては許せないけどね……。
もしボクの目の前に居る『鎌付き』の幽炉の中の人が伝説のシマノビッチ博士であるならば、彼にどれだけ数奇な運命が降り掛かったのだろうと慮られる。
自分の発明した幽炉に自分自身がなってしまうなんて、まさに想像を絶する運命じゃないか……。
『鎌付き』の彼は、そんなボクの微妙に移り変わる反応を楽しむかの様に、数秒の間を置いて語り始めた。
「私を知っているのか娘よ、なかなか感心だな。ご想像の通り、如何にも私が世紀の大天才、ニコライ・シマノビッチその人だよ…」
『鎌付き』の幽炉は間違いなく『話す人』だ。今現在、全世界に何人のトーカーが居るのか知る由も無いけれど、研究者として3人ものトーカーと接触出来た人間は、世界中でもボクだけだと断言できる。
71くん、まどかちゃん、そしてこの『鎌付き』さん……。
いずれも癖のある人達だけど、純粋な1人足り得る魂を持つ人ってやっぱり何か常人らしからぬ『モノ』を感じるよね。
今となっては71くんや香奈ちゃん達と遊んでいた時が一番幸せだったな、と思えるよ……。
『鎌付き』に関しては、その口調から知能レベルの高い成人男性だと予想されるけど、初対面で「生身で宇宙遊泳したくなかったら私の命令に従え」なんて言って脅してくる人とは、本当はあまりお近づきになりたくは無いものだよね。
そんなボクがここ輸送船『はまゆり』に捕らえられてからやらされてきた仕事は、主に幽炉の交換だ。
『鎌付き』にはご存知の通り2基の幽炉が搭載されている。そのうちの1基、いや1人が『鎌付き』氏なんだけど、彼は『幽炉の残量回復手段の構築』をライフワークとしているボクの目の前で、信じられない行為を行った。
とりあえず『鎌付き』の幽炉をA、もう一基の幽炉をBとさせて頂く。
ボクが最初に幽炉交換作業を行った時に確認した幽炉残量は、Aが32%、Bが0%だった。
Bを新品(100%)の幽炉に交換する。するとBの残量が見る見る減っていき、その分のエネルギーがAの幽炉に流れ込んで行った。
最終的にBの残量が0で尽きた時に、Aは82%まで回復していた。
つまり『鎌付き』の幽炉は1:2とかなり非効率ながらも、他の幽炉のエネルギーを吸い取る事で、残量を回復させる事が出来たのだ。
驚いたよね。まさかそんな手段で幽炉の残量回復が可能だなんて想像すらしていなかったからね。
言うまでも無く幽炉ってのは人の魂だ。『おいコラ、他人の命を何だと思っているんだ?』と義憤を抱く自分と、『幽炉回復にこんな手段があったのか!』といたく感心している自分が居た。
『複数の幽炉の残量をチャンポンする』というアイデアこそ以前から持ってはいたものの、具体的な手段については構想すら出来ていなかった。
…様々な悪い点に目を瞑れば、この『鎌付き』氏はボクの研究に於いて、今後途轍もなく有用な存在になるはずだ。
このシステムを解明して改良出来れば、71くんやまどかちゃんも幽炉を回復させる事が出来る……。
少し前までのボクならこの状況に手放しで飛びついて、大喜びで彼に指導を求め、研究を始めただろう。
でも今は少し考えが変わった。71くん達と過ごす時間は確かに楽しい。でもこの世界に彼らを縛り付ける事が、正義だとは思えなくなってきているのも確かだ。
以前71くんには『残量が10%を切れば幽炉を取り外して元の世界に戻している』と説明した。
その行為自体は間違いなく行われている。実際に戻す現場に立ち会った事が無いので、語尾に『はずだ』と付けざるを得ないのがもどかしい所だが。
しかし、戻された精神がどうなったのかまでは追跡しきれない、いや『追跡しても意味が無いからやっていない』のが実情だ。
言葉は悪いが『魂の絞りカス』の行方など、縞原重工にしてみれば考慮の対象にもならないのだろう。
仮に2人の魂が入った幽炉を戻すとする。これが元の世界に帰った時にきちんと2人に分離されているかどうかまでは保証されないのだ。
理論的には1人の体に2人分の魂が入って錯乱してしまう事もあり得るし、どちらか片方だけが戻って、もう片方の魂は因果地平に霧散してしまうパターンもあるだろう。
3人の魂で構成されている幽炉なら言わずもがなだ。
それでも71くんやまどかちゃんの様なピュアワンならば、魂は元の世界に無事に戻れる可能性が高い。
もし今からでも叶う事ならば、71くんやまどかちゃんの幽炉を補充してから元の世界へ返してあげたい。
幽炉残量1%=寿命1年、とかいう単純な話では無いだろうけど、一般的な天寿を全うできるだけの命は戻して上げたいと思う。
ここはその為にも、この『鎌付き』の元で幽炉を回復させる方法(他の幽炉を『食らう』のは最終手段として)を探るのは悪い環境では無いかも知れない。
幽炉同士を融合させた場合の精神の混在具合とかも調べられれば言う事なしだ。
もちろん問題もある。『鎌付き』は強烈な催眠だか暗示だかの力で他人を操れる、とアンジェラちゃんが言っていた。そんな『鎌付き』に近付きすぎず離れすぎずの距離感を持って対応していかなければならないだろう。
出会った初日は強引すぎる幽炉の補充方法にショックを受けて何も出来なかったけど、一晩考える時間を得て、どうにか上の結論に辿り着いた次第だよ。
となれば、『鎌付き』の人となりを少しでも調査しておく必要も出てくる。ボクの得た情報が、後々71くん達の武器になりうるかも知れないからね。彼らと連絡が取れれば、の話だけどさ……。
まずは相手の事を少しでも探ってみる。昨日取り替えた幽炉Bが残量ゼロになっていたので、その交換作業の際に談笑タイムを設けてみた。
「そう言えば自己紹介もまだだったよね。ボクは縞原重工の技術士の高橋逸美。一応『幽炉理論』の学位も持っているよ」
《ほぉ、若いのにそれは素晴らしい。私の名はウプィーリだ。幽炉は私も専門だぞ? と言うより私無くして幽炉も人形飛行戦車も有り得ない訳だがな》
ウプィーリ……。
今アンジェラちゃんが画面で補足翻訳してくれたけど、ロシア語で『吸血鬼』って意味なんだね。
確かに他の幽炉の命を吸い取っているようにも見えるから、『吸血鬼』と言うのはこの上ない呼称だろうと思うよ。
それともう1つ。
『吸血鬼を自称する幽炉技術の専門家』……。
ボクには1人心当たりがある。とっくの昔に亡くなっていたと思っていた伝説の人だ。
「…ねぇ、キミってもしかしてニコライ・シマノビッチ博士だったりするの…?」
問いかける声に畏れが孕む。ボクら幽炉関係者にとってシマノビッチ博士は希望であり、憧れであり、師であり、そして唾棄すべき犯罪者だ……。
☆
ニコライ・ヨセフ・シマノビッチは、約60年前のソ大連の科学者で幽炉技術の発案者だ。
『人間の魂』を触媒に膨大なエネルギーを生み出す『幽炉』、その基本形はこの男の頭の中から生み出された。
宇宙時代になって、どの国家でも人口は厳しく規制され簡単に子供を産めなくなっていった。
しかし、逆に考えれば国家によって制御できる人口とは、生活を保証できる人口とも言い変えられる。
つまり、極端に貧窮する住民や人知れず孤独死する住民もほぼゼロにできた訳だ。
そんな世界にあって、制限されながらも生まれてくる子供は、いずれも国の宝であって、精神を含む健康状態なども十分にケアされていた。
そんなかつて無いほど人間が保護された世界で、シマノビッチは「人の魂を動力に使え」と説いたのだ。彼は白眼視され、当然ながら倫理的な面で学会からの支持を得る事は叶わなかった。
ある日、ニコライ・シマノビッチは逮捕される。罪状は『連続未成年略取、暴行、殺人』だった。
7〜12歳の12人もの少年少女を言葉巧みに拐かし、自宅の研究室で頭脳に電極を差し込むなどの実験を繰り返していた。拐われ、殺された子供達の半数には、男女問わず性暴行を受けた痕跡もあったという……。
逮捕された時には殺した子供達の血液を溜め込んで、毎朝飲んでいた。と言うから筋金入りの殺人狂だったのだろう。
そこで付いたあだ名が吸血鬼と言う訳だ。
裁判で無期懲役の判決を受けた彼は、鉱山衛星に併設された刑務所に移送される予定であったが、彼を乗せた連絡艇は突如進路を変え全米連合に逃げ込んだ。
そのまま米連に亡命して、再び科学者として返り咲き、数年後には幽炉理論を完成させ実用化に至った。と言う訳だ。
米連でまだ大人しくしていれば良かったのに、また悪い癖が出たんだろうね。ソ大連に居た時と同様に子供を狙った犯罪を繰り返した。
前回はまだ幽炉の実験と言い訳できたけど、今回は幽炉の完成後だったから何も言い訳が出来なかった。
単純にこの変態がド変態だったって事が露呈しただけだった。
結局米連当局に逮捕されて以前と同様に無期懲役の判決を受け、そのまま二度と世に出る事も無く刑死した。
…その様にボクは伝え聞いていた。
幽炉理論の勉強において、シマノビッチ博士の論文を無視する事は不可能だ。彼無しには幽炉の基礎研究さえ覚束なかったと断言できる。
シマノビッチ博士は本当に天才だったと思う。ボクは学者としての彼は、この上なく尊敬している。
個人としては許せないけどね……。
もしボクの目の前に居る『鎌付き』の幽炉の中の人が伝説のシマノビッチ博士であるならば、彼にどれだけ数奇な運命が降り掛かったのだろうと慮られる。
自分の発明した幽炉に自分自身がなってしまうなんて、まさに想像を絶する運命じゃないか……。
『鎌付き』の彼は、そんなボクの微妙に移り変わる反応を楽しむかの様に、数秒の間を置いて語り始めた。
「私を知っているのか娘よ、なかなか感心だな。ご想像の通り、如何にも私が世紀の大天才、ニコライ・シマノビッチその人だよ…」