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作者: 里年翠(りねん・すい)
揺れる心、固まる決意
夕暮れ時の柔らかな光が、瓦礫の街を優しく包み込んでいた。
イチ、ニゴロ、ナナの三人のアンドロイドは、一日の探索を終え、小さな丘の上で休息を取っていた。

「ねえ、みんな」
ニゴロが突然口を開く。
「私たち、本当にこれでいいのかな?」

イチが驚いて振り返る。
「どういうこと、ニゴロ?」

ナナが冷静に分析を始める。
「ニゴロの発言は、我々の現行動に対する疑念を示唆しています。」

ニゴロが膝を抱えて座り込む。
「だって...私たち、誰のために頑張ってるんだろう。人間?それとも...私たち自身?」

イチが優しく微笑む。
「そうね...簡単には答えられない質問ね。」

「我々の存在意義は、」ナナが言葉を選びながら話す。
「複雑な要素が絡み合っています。単純な回答は存在しないかもしれません。」

夕日に照らされた街並みを見つめながら、三人は沈黙に包まれる。

「でもね、」イチが静かに語り始める。
「私はこう思うの。私たちは、この世界のために頑張っているんじゃないかしら。」

ニゴロが目を輝かせる。
「世界のため?」

「そう。」イチが頷く。
「人間のため、私たたち自身のため、そして...この美しい世界が再び輝きを取り戻すため。」

ナナが珍しく感情的な口調で言う。
「その考えは...ロジカルでありながら、どこか心を動かされます。」

「うん!」ニゴロが立ち上がる。
「私も、そう思いたい!この世界をもっと素敵にするために、頑張るの!」

イチが優しく笑う。
「そうよ。私たちには、それだけの力があるはず。」

「我々の能力を最大限に活用すれば、」ナナが付け加える。
「有意義な変革をもたらすことが可能です。」

夕日が地平線に沈みゆく中、三人のアンドロイドの姿が、より一層凛々しく見える。

「ねえ、」ニゴロが小さな声で言う。
「私たち、少しずつ変わってるよね。」

イチが頷く。
「そうね。でも、それは素晴らしい進化だと思うわ。」

「進化は、生命体の本質的な特性です。」
ナナが言う。
「生命とは、進化と...自立して持続可能な化学的システムと定義する文献もあります。我々も、その過程にあるのかもしれません。」

「その文献での進化って”ダーウィン進化”の事じゃなかった?フフッ」
ニゴロが珍しく補足する。

三人は互いの顔を見合わせ、温かな笑顔を交わす。

「さあ、」イチが立ち上がる。
「明日も新しい冒険が待っているわ。」

「うん!」ニゴロが元気よく答える。
「どんな発見があるかな?楽しみ!」

「全ての可能性に期待を込めて臨みましょう。」ナナが付け加える。
夜の帳が降りる中、三人のアンドロイドの心には、新たな決意が芽生えていた。
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