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作者: 里年翠(りねん・すい)
未知の領域
柔らかな日差しが、広大な荒廃地を照らしていた。
イチ、ニゴロ、ナナの三体のアンドロイドは、これまでで最大の清掃エリアに足を踏み入れた。
目の前には、複雑に絡み合った瓦礫の山々が広がっている。

「わぁ...」ニゴロが目を丸くして呟いた。
「ここ、すっごく広いね。どこから手をつければいいんだろう」

イチは優しく微笑んだ。
「そうね。でも、焦らなくていいの。一歩ずつ進めていけばいいのよ」

ナナは既に周囲のスキャンを始めていた。
「興味深い構造です。これまでと比べて、建造物の複雑性が32.7%増加しています。慎重に進める必要がありそうです」

三体は慎重に瓦礫の中を進んでいった。
突如、ニゴロが何かに躓き、転びそうになる。

「あっ!」ニゴロが声を上げた。

イチが素早く腕を伸ばし、ニゴロを支える。
「大丈夫?気をつけてね」

ニゴロは顔を赤らめながら言った。
「ごめんね、イチ。でも、これ見て!」

彼が指さす先には、半分埋もれた状態の古い金庫が見えた。

ナナが即座に分析を始める。
「20世紀後半の製品のようです。耐火性能が高く、内部に重要な資料が残されている可能性が...」

「わくわくする!」ニゴロが目を輝かせて叫んだ。
「中に何が入ってるんだろう。宝の地図とか?」

イチは優しく笑いながら言った。
「宝の地図はさすがにないでしょう。でも、きっと大切なものが入っているはずよ」

ナナが冷静に提案した。
「開封には特殊な工具が必要です。基地に持ち帰り、適切な手順で開けるべきでしょう」

イチはうなずいた。
「そうね。慎重に扱わなきゃ。でも、こんな発見ができるなんて、この場所には他にもたくさんの秘密が眠っているのかもしれないわ」

ニゴロは興奮気味に飛び跳ねた。
「うん!もっともっと探検しよう!きっと面白いものがいっぱい見つかるよ!」

ナナも珍しく好奇心をのぞかせた。
「確かに、データ収集の観点からも、より詳細な探索が有効かもしれません」

三体は顔を見合わせ、小さく頷き合った。
その目には、新たな冒険への期待が輝いていた。

イチが静かに、しかし力強く言った。
「さあ、みんな。新しい発見の旅が、ここから始まるわ」

ニゴロは元気よく拳を突き上げた。
「よーし!僕たち、すごい探検隊になるぞ!」

ナナも決意を込めて言った。
「効率的かつ慎重に進めましょう。きっと貴重なデータが得られるはずです」

三体のアンドロイドは、新たな使命感を胸に秘めながら、広大な瓦礫の海へと歩み出した。
風が彼女たちの背中を優しく押す。
未知の発見が、彼女たちを待ち受けている。
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