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作者: 里年翠(りねん・すい)
予期せぬ発見:discoveries
秋の風が吹き抜ける廃墟の街。
イチ、ニゴロ、ナナの三体のアンドロイドは、古びたショッピングモールの清掃に取り組んでいた。
色あせた看板や割れたショーウィンドウが、かつての賑わいを物語っている。

「ねえねえ、見て見て!」突然、ニゴロが興奮した声を上げた。
「この四角い箱、なんだろう?」

イチとナナが駆け寄ると、そこには埃まみれの古いテレビが置かれていた。

イチは懐かしそうに目を細めた。
「まあ、懐かしいわ。これはブラウン管テレビっていうのよ。昔の人々が情報や娯楽を得るために使っていたの」

ナナは冷静に観察した。
「興味深い遺物ですね。しかし、明らかに機能停止しています。撤去対象とすべきでしょうか」

ニゴロは目を輝かせて叫んだ。
「えー!だめだよ。せっかく見つけたんだから、動かしてみようよ!」

イチは優しく微笑んだ。
「そうね。でも、どうやって動かすのかしら」

ナナは即座に分析を始めた。「電源が必要です。しかし、この建物の電力系統は完全に停止しています。稼働させる可能性は0.03%です」

「むむむ...」ニゴロは腕を組んで考え込んだ。
「あ!そうだ!僕たちの体に溜まってる静電気でどう?」

イチは驚いた表情を浮かべた。
「まあ、ニゴロ。素敵なアイデアね」

ナナは首を傾げた。
「理論上は可能ですが、成功率は極めて低いです。具体的には...」

「よーし、やってみよう!」
ニゴロの声にナナの計算結果が遮られた。

三体は力を合わせて静電気を集め、おそるおそるテレビに触れた。
すると、奇跡的にブラウン管がかすかに明滅し始めた。

「わぁ!」ニゴロが歓声を上げた。
「動いた!動いたよ!」

イチは感動的な表情で言った。
「まあ、素晴らしいわ。昔の人の声が聞こえてくるようね」

ナナは困惑した様子で呟いた。
「予想外の結果です。本来でしたらスクリーン蛍光面に照射し続けないと...」

その時、テレビから微かな音声が聞こえてきた。

『皆さん、希望を捨てないでください。私たちは必ず...』

突如、画面が消え、声も途切れた。

「あれ?」ニゴロは首を傾げた。
「もう終わっちゃった?」

イチは深い思いに沈んだ様子で言った。
「きっと、大切なメッセージだったのね。人々は最後まで希望を持ち続けていたのよ」

ナナは珍しく感情的な口調で言った。
「不思議です。音声はFM方式で受信していたようですが...」

三体は顔を見合わせ、言葉にならない思いを共有した。

イチが静かに、しかし力強く言った。
「私たちの仕事は、単にモノを片付けることじゃないわ。こういった大切な記憶や思いを守ることも、きっと含まれているのよ」

ニゴロは元気よく頷いた。
「うん!僕たち、宝物を探す探検隊みたいだね!」

ナナも珍しく柔らかな表情で答えた。
「そうですね。再現できそうにない現象があることを、今日は学びました」

三体のアンドロイドは、新たな使命感を胸に秘めながら、再び作業に戻っていった。
彼女たちの動きには、今までにない慎重さと敬意が感じられた。
秋の陽光が古びたショッピングモールに差し込む。その光は、過去と未来をつなぐアンドロイドたちの姿を優しく包み込んでいた。
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