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作者: 月兎 咲花
残酷な描写あり
魔女と残影
 ベッドの上で何度目かの剣を出現させる。
 初めて剣を顕現させてから、毎日どうしたら出るのかそれを試し続けている。
 最初は運が良ければ出るかなってくらいの頻度だったのが、最近は想えば出る程度にまで安定している。
 出したり、消したり何度も試す。
 あとはこれを部屋以外の状況下で、でも出来るようにならないと自分やりたいことは出来ない。
 僕の想像が正しければ、彼女を殺すにはあの箱の外でするしかない。
 そのためには様々な状況下で安定して顕現させる必要がある。
 剣を顕現させると時折、右手がこわばる。
 少しだけどこかぞわぞわした感覚が付きまとう。
 彼が僕の体を蝕み、少しでも乗っ取ろうとしているのを理解する。
 右手を少し眺めると、なんとなく肌の色素が落ちている気さえする。
「なぁ、あなたは本当に彼女を殺したいのか?」
 どこでもなく中空に向かって、言葉を投げかけるが当然返事はない。
 はぁとため息を吐き剣を消すと、日課の深夜徘徊をする。
 最近は夜はなかなか眠れず、真夜中に家を抜け出しブラブラと歩くことが増えた。
 箱の中での出来事は夢だったのかとも毎回思うけれど、あの血の匂いやぬめりの記憶が蘇ると、決して夢ではなかったんだと思い知らされる。

 近くの河原へ行き誰も居ないのを確認すると、そこでもう一度剣を顕現させる。
 部屋で出すときと違って粒子が少し小さく、剣の形を保つのが難しい。
 その剣は発光するから、真夜中に水面をカラーライトで照らしているかの様。
 剣を顕現させると、素振りをする。
 箱の中での自分の醜態を、思い出しては悶えそうになるのを耐える。
 どうしたらちゃんと斬ることが出来るのか。
 それを想像の中の自分を動かしながら考える。
 何度も剣舞になるように、体の余計な力みで野暮ったい動きとなり振り回される。
「剣に使われてるな……」
 僕の意志ではない、言葉が口からでる。
「僕も同感だよっっっ」
 言葉を口にしながら剣を振る。
 素振りが終わると剣を消し、家に帰る。
「私に使われれば、お前もすぐに開放されるのに……。めんどくさいやつだな……」
 めんどくさいやつで悪かったな。
 それでも決着は自分の意志でつけたいんだ。
 自分の人生で一番大切な行動を誰かに委ねたくはない。
 だから地面をいつも以上に踏みしめながら、帰路につく。
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