第1話 大木の中へ 13 ―勇気は使命感のある男だ―
13
勇気は立ち上がると、希望の方を向いて頭を下げた。
「希望くん、申し訳ない……怖がらせてしまったね」
勇気は自分の失態が、情けなくて、愚かに思えて、恥ずかしくて仕方がなかった。
でも、
「ううん……」
希望は首を振った。
「僕、大丈夫ですよ! だから、謝らないで!」
しかも希望の顔には笑顔が浮かんでいる。
勇気が我を失いそうになっていた時、希望がどんな顔をしていたのかは勇気には分からない。しかし、今は特大の笑顔を希望は見せてくれていた。
「希望くん……」
勇気にはその笑顔に感謝しかなかった。『情けない自分に嫌悪の眼差しを向けるならまだしも、笑顔を見せてくれるなんて……』と。
希望の笑顔が本当の笑顔なのか、それとも"作ってくれた笑顔"なのか、まだ希望との関係が浅い勇気には分からない。でも、『笑顔を見せてくれる』その気持ちだけで、勇気は涙が出そうになる程嬉しかった。
そしてもう一つ、希望が勇気に贈った言葉がある。それは、
「あのね、勇気さん! 僕、あのね、僕、尊敬します!!」
希望は特大の笑顔から、少し恥ずかしそうな笑顔になってそう言った。
「え? 尊敬……? 誰を?」
予想外過ぎる言葉に、勇気はその意味を理解する事が出来ない。
「勇気さんをですよ!!」
「お、俺……を?」
そう言われても『そっか!』とはならず、勇気は驚きで口をポカーンと開けるしかなかった。
その姿に、愛が
「ぷっ……!!!」
と吹き出した。
「アハハハッ!! 勇気くん、今変な顔になってるよ!」
「え……そ、そんな事言われても、だって俺には意味が」
勇気は『軽蔑されるなら分かるが、尊敬されるだなんて……』と思っていた。
「へへっ! ほら、希望、勇気の奴困ってるぞ。尊敬してるんなら、ちゃんと言葉にして伝えてやれよ!」
戸惑う勇気を見て、正義が助け船を出した。因みに正義は今、両手いっぱいに《魔法の果物》を持ってガリガリ、ガリガリと頬張っている。食べても、食べても、飽きない味だから。
「うん!!」
正義に促された希望は大きく頷くと、「ワハッ!!」と一声笑って、ダダダッ!! と勇気の目の前まで走った。
そして、勇気の前に立つと、
「あのね、僕! 勇気さんは本っっっ当に、使命感の強い方だなぁって思ったんです!! だから、尊敬します!!!」
またまた特大の笑顔を浮かべてそう言った。
「え……し、使命感? 俺が……か?」
と言われても勇気の困惑の表情は消えない。
「うん!! だって、僕だったら悪い奴等と戦うの怖いもん!! それなのに勇気さんは、変身出来ない事を悩んで……僕なら『戦わないで済むならそれで良いや』って思って、逃げちゃうかも!! ワハッ!!」
「い……いや……」
それでも勇気の困惑は消えない。
「そんな……俺は、ただ自分勝手にキレただけで」
「そうなんだよなぁ~~」
正義だ。正義はニカッとした笑顔を勇気に向けながら、果物をガリっと齧った。
「そうなんだよ! 勇気は逃げないんだ! どんな時でもさ! な、勇気!!」
「な……なぁと言われても」
勇気は首を傾げた。
でも、正義はもう勇気の方を見ていなかった。言い逃げだ。
「ふぅ……さて! んじゃ、そろそろ上に戻るか!! 果物もいっぱい喰ったことだし、もう大丈夫だろ! 希望、お前もそろそろ家に帰らないとな! 送ってくぜぇ~~!!」
正義は希望の頭をワッシワッシと撫でた。
「えっ! 本当!! 僕、ボッズーで帰りたい! またボッズーと飛びたいよ!!」
「へへっ! 仕方ねぇな、そうすっか!! あっ、でも警察と病院には必ず行くんだぜ! あ……でも病院はこの果物食ったしもう良いか。希望も元気になっただろ?」
「うん!」
「へへっ! じゃあ病院は無し! でも警察には……ってヤバ! 俺、警察に電話すんの忘れてたよ……って俺スマホ壊されちまったんだった!! どうしよ!!」
「ワハッ!!」
まるで、一人芝居をする様にオーバーリアクションで頭を抱えた正義を見て希望は笑った。
「ワハハハっ! 正義さん面白い! でもね、慌てないで、大丈夫だから、安心して! 僕ね《王に選ばれし民》が消えた後ちゃんと通報しといたから!!」
「へ……? 希望が? そうなの??」
「うん!」
希望は大きく頷いた。
「あの人達逃がしたら、絶対また悪い事するもん! そんなの許せない! 言ったでしょ? あの人達には警察にぎゅ~って首締めてもらうんだって!!」
希望は自分の首をぎゅ~っと掴む真似をして笑った。
「へへっ! そっかぁ!!」
それを見て、正義もニカッと笑う。
「希望はスゲー奴だな!! な、勇気!愛!」
正義はニカッと笑ったまま、勇気と愛に問い掛けた。
「あぁ、そうだな」
「うん!」
二人は希望を褒める正義に同意した。
「へへへっ! じゃあそろそろ戻ろっか! なぁボッズー、ここからはどうやって戻れば良いんだ?」
と正義がボッズーに問い掛けた瞬間、
「ん………あれ? なんだ……あれ?あれれ……何だか……なん……ね、ねむ……」
正義は急に強烈な睡魔に襲われた。
「あ……あれ? ダ、ダメだ……たえ……堪えられない」
「正義!!」
「正義さん!!」
「せっちゃん!!」
「大丈夫かボッズー!!」
人の体を癒すには、やはり睡眠も必要なのだろう。正義はバタン……とクローバーの絨毯の上に倒れてしまった。
勇気は立ち上がると、希望の方を向いて頭を下げた。
「希望くん、申し訳ない……怖がらせてしまったね」
勇気は自分の失態が、情けなくて、愚かに思えて、恥ずかしくて仕方がなかった。
でも、
「ううん……」
希望は首を振った。
「僕、大丈夫ですよ! だから、謝らないで!」
しかも希望の顔には笑顔が浮かんでいる。
勇気が我を失いそうになっていた時、希望がどんな顔をしていたのかは勇気には分からない。しかし、今は特大の笑顔を希望は見せてくれていた。
「希望くん……」
勇気にはその笑顔に感謝しかなかった。『情けない自分に嫌悪の眼差しを向けるならまだしも、笑顔を見せてくれるなんて……』と。
希望の笑顔が本当の笑顔なのか、それとも"作ってくれた笑顔"なのか、まだ希望との関係が浅い勇気には分からない。でも、『笑顔を見せてくれる』その気持ちだけで、勇気は涙が出そうになる程嬉しかった。
そしてもう一つ、希望が勇気に贈った言葉がある。それは、
「あのね、勇気さん! 僕、あのね、僕、尊敬します!!」
希望は特大の笑顔から、少し恥ずかしそうな笑顔になってそう言った。
「え? 尊敬……? 誰を?」
予想外過ぎる言葉に、勇気はその意味を理解する事が出来ない。
「勇気さんをですよ!!」
「お、俺……を?」
そう言われても『そっか!』とはならず、勇気は驚きで口をポカーンと開けるしかなかった。
その姿に、愛が
「ぷっ……!!!」
と吹き出した。
「アハハハッ!! 勇気くん、今変な顔になってるよ!」
「え……そ、そんな事言われても、だって俺には意味が」
勇気は『軽蔑されるなら分かるが、尊敬されるだなんて……』と思っていた。
「へへっ! ほら、希望、勇気の奴困ってるぞ。尊敬してるんなら、ちゃんと言葉にして伝えてやれよ!」
戸惑う勇気を見て、正義が助け船を出した。因みに正義は今、両手いっぱいに《魔法の果物》を持ってガリガリ、ガリガリと頬張っている。食べても、食べても、飽きない味だから。
「うん!!」
正義に促された希望は大きく頷くと、「ワハッ!!」と一声笑って、ダダダッ!! と勇気の目の前まで走った。
そして、勇気の前に立つと、
「あのね、僕! 勇気さんは本っっっ当に、使命感の強い方だなぁって思ったんです!! だから、尊敬します!!!」
またまた特大の笑顔を浮かべてそう言った。
「え……し、使命感? 俺が……か?」
と言われても勇気の困惑の表情は消えない。
「うん!! だって、僕だったら悪い奴等と戦うの怖いもん!! それなのに勇気さんは、変身出来ない事を悩んで……僕なら『戦わないで済むならそれで良いや』って思って、逃げちゃうかも!! ワハッ!!」
「い……いや……」
それでも勇気の困惑は消えない。
「そんな……俺は、ただ自分勝手にキレただけで」
「そうなんだよなぁ~~」
正義だ。正義はニカッとした笑顔を勇気に向けながら、果物をガリっと齧った。
「そうなんだよ! 勇気は逃げないんだ! どんな時でもさ! な、勇気!!」
「な……なぁと言われても」
勇気は首を傾げた。
でも、正義はもう勇気の方を見ていなかった。言い逃げだ。
「ふぅ……さて! んじゃ、そろそろ上に戻るか!! 果物もいっぱい喰ったことだし、もう大丈夫だろ! 希望、お前もそろそろ家に帰らないとな! 送ってくぜぇ~~!!」
正義は希望の頭をワッシワッシと撫でた。
「えっ! 本当!! 僕、ボッズーで帰りたい! またボッズーと飛びたいよ!!」
「へへっ! 仕方ねぇな、そうすっか!! あっ、でも警察と病院には必ず行くんだぜ! あ……でも病院はこの果物食ったしもう良いか。希望も元気になっただろ?」
「うん!」
「へへっ! じゃあ病院は無し! でも警察には……ってヤバ! 俺、警察に電話すんの忘れてたよ……って俺スマホ壊されちまったんだった!! どうしよ!!」
「ワハッ!!」
まるで、一人芝居をする様にオーバーリアクションで頭を抱えた正義を見て希望は笑った。
「ワハハハっ! 正義さん面白い! でもね、慌てないで、大丈夫だから、安心して! 僕ね《王に選ばれし民》が消えた後ちゃんと通報しといたから!!」
「へ……? 希望が? そうなの??」
「うん!」
希望は大きく頷いた。
「あの人達逃がしたら、絶対また悪い事するもん! そんなの許せない! 言ったでしょ? あの人達には警察にぎゅ~って首締めてもらうんだって!!」
希望は自分の首をぎゅ~っと掴む真似をして笑った。
「へへっ! そっかぁ!!」
それを見て、正義もニカッと笑う。
「希望はスゲー奴だな!! な、勇気!愛!」
正義はニカッと笑ったまま、勇気と愛に問い掛けた。
「あぁ、そうだな」
「うん!」
二人は希望を褒める正義に同意した。
「へへへっ! じゃあそろそろ戻ろっか! なぁボッズー、ここからはどうやって戻れば良いんだ?」
と正義がボッズーに問い掛けた瞬間、
「ん………あれ? なんだ……あれ?あれれ……何だか……なん……ね、ねむ……」
正義は急に強烈な睡魔に襲われた。
「あ……あれ? ダ、ダメだ……たえ……堪えられない」
「正義!!」
「正義さん!!」
「せっちゃん!!」
「大丈夫かボッズー!!」
人の体を癒すには、やはり睡眠も必要なのだろう。正義はバタン……とクローバーの絨毯の上に倒れてしまった。