第4話 王に選ばれし民 4 ―こんにちは。ニュースの時間です。―
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突然、火の粉がガキセイギとボッズーの顔に降り注いだ。
「うわっ! なんだ!!」
「わわっ!!」
周りを見ると、火の粉以外何も見えない。白くも見える火の粉が、光の粒の様にキラキラと光って二人に降り注ぐ。
「あっつ!!」
セイギとボッズーは混乱した。何が起こったのか全然分からなかったのだ。攻撃をくらったにしてはダメージが軽すぎる。セイギは『あっつ!!』と口にしたが、それは火の粉を見た事で『熱い』というイメージが先行しているだけで、実際は『熱い』というよりも『チクチクと痛い』という方が近かった。
特に強化スーツを着たセイギは全身を摘ままれる様な感覚で、身体的ダメージをくらうというよりか、どちらかと言うと精神的なダメージをくらっていた。火の粉がウザくて鬱陶しくて仕方がない。
だからこそ二人は混乱した。
これが敵の攻撃だとして、敵が何を仕掛けてきたのかが全然分からなかったからだ。
「ボッズー、脱出だ! 脱出!! 何なんだよコレ!!」
「分かってるボズ! 脱出だ! 脱出!!」
ボッズーはセイギの言葉を自然と真似ると、急いで火の粉の中から逃げ出した。
「うわっとッッ!! クッソ、何だよコレ! チクチクチクチクよぉ!!」
火の粉の中から逃げ出したセイギは、五月蝿い蝿を振り払うように腕を振りながら『何をされたのか見てやろう!』と後ろを振り返った。
そして、彼の目に映った物は、
「えっ………なにこれ? はな……び??」
そう。二人の頭上で爆発したもの、それは花火だった。
真夏の夜空に咲く様な打ち上げ花火が、真昼の輝ヶ丘の空に打ち上がっていた。
さっきまでの二人はその火中にいたんだ。花火の中に紛れ込む体験なんてした事が無い二人は、全くその事に気が付かなかった。
― 何だよ……これ……?
セイギは思った。花火自体にもそうだが、それと共にその色にも。だって、花火といえば色とりどりできらびやかな物だ。だが、セイギとボッズーの目の前に咲く花火は色を持っていなかった。
真っ白……まるで白黒テレビに映される様な、色の無い花火だった。
「………」
「………」
セイギとボッズーは唖然とした表情になってその真っ白な花火を見詰めた。
パチパチと花火は何度も何度も咲いていく、消えることなく咲いていく……
たった一個の花火玉でこんなに連続して何発もの花火が咲くものなのだろうか。『まるで手品を見ているみたいだ……』とセイギもボッズーも思った。
「な……何だボズ、なんで花火……? 花火がなんで……」
「白い……薔薇と一緒だ……つか、花火って何でだよ……」
『何故、どうして花火が?』『白い花火、何故花火が白いんだ?』とセイギとボッズーの頭には二つの疑問が。でも、その答えを見つけ出そうとする前に
ポンッ!
花火が突然弾けるような音を立てた。
「うわっ! 今度はなんだよ……」
唖然とした表情だったセイギが眉間に皺を寄せたその時、花火は雲に似た厚い白い煙へと変わった。
「………」
ボッズーはくちばしをパクパクと動かした。彼はもう言葉を見失ってしまった。
そして、セイギとボッズーの頭の中に浮かぶ疑問符はより大きくなる。
新たに現れた白い煙はモクモクと天に向かって消えた。すると、その跡地に巨大な緞帳が現れたんだ。
いや、錯覚じゃない。本当に緞帳が現れたんだ。花火の時と同じ、まるで手品だ。これもまた白黒テレビに映された様に、白とそして黒……
異様な光景にセイギとボッズーは目を見開いた。
空に開いた紅色の穴、現れた光体、禍々しく白い薔薇、空に浮く白黒の緞帳……
奇々怪々の連続にそろそろ慣れても良い頃だが、流石のセイギ達もそうはいかない。人間の思考回路では追い付かないのだ。二人の思考はもうオーバーヒートを起こして停止寸前だった。
そして、緞帳の奥から……
「パンパカパーン♪ パンパンパン♪ パンパカパーン♪」
場違いな程に陽気な声が聞こえてきた……
「えっ…………」
「なんだボズ???」
セイギとボッズーの疑問に答える様に、緞帳はゆっくりと開いた。
緞帳の奥には古びたスクリーンが……
ジーーッ……ジーーッ……
と、何処かで映写機の回る音がする。
「アッアー! 只今マイクのテスト中。只今マイクのテスト中」
スクリーンから不愉快に甲高い声が古いスピーカーを通したような雑味のある音で響いてきた。それと同時に、炙り出しの絵の様にスクリーンに映像が映し出される。
やはり映るのは白黒の映像、映像の中の明るさのせいかそれとも真昼の明るさのせいか、白飛びと黒潰れが酷くとても見難い。
「な……何だよこれ……」
セイギは『スクリーンに何が映っているのか見逃してはならない』と、目を細めてスクリーンを睨んだ。
「え……アナ? ……ウンサー?」
ぼやけた映像に映ったのは、髪を七三に分けた大きな黒縁の眼鏡をかけたスーツ姿の男だった。その男はテーブルを前にして座っているのか、胸から下を見せず、テーブルの上で指を組み合わせてこちらに視線を真っ直ぐに向けていた。組み合わせた手の前には何やらマイクの様なものがあった。
男はそのマイクに向かってこう言った……
「こんにちは。ニュースの時間です」
突然、火の粉がガキセイギとボッズーの顔に降り注いだ。
「うわっ! なんだ!!」
「わわっ!!」
周りを見ると、火の粉以外何も見えない。白くも見える火の粉が、光の粒の様にキラキラと光って二人に降り注ぐ。
「あっつ!!」
セイギとボッズーは混乱した。何が起こったのか全然分からなかったのだ。攻撃をくらったにしてはダメージが軽すぎる。セイギは『あっつ!!』と口にしたが、それは火の粉を見た事で『熱い』というイメージが先行しているだけで、実際は『熱い』というよりも『チクチクと痛い』という方が近かった。
特に強化スーツを着たセイギは全身を摘ままれる様な感覚で、身体的ダメージをくらうというよりか、どちらかと言うと精神的なダメージをくらっていた。火の粉がウザくて鬱陶しくて仕方がない。
だからこそ二人は混乱した。
これが敵の攻撃だとして、敵が何を仕掛けてきたのかが全然分からなかったからだ。
「ボッズー、脱出だ! 脱出!! 何なんだよコレ!!」
「分かってるボズ! 脱出だ! 脱出!!」
ボッズーはセイギの言葉を自然と真似ると、急いで火の粉の中から逃げ出した。
「うわっとッッ!! クッソ、何だよコレ! チクチクチクチクよぉ!!」
火の粉の中から逃げ出したセイギは、五月蝿い蝿を振り払うように腕を振りながら『何をされたのか見てやろう!』と後ろを振り返った。
そして、彼の目に映った物は、
「えっ………なにこれ? はな……び??」
そう。二人の頭上で爆発したもの、それは花火だった。
真夏の夜空に咲く様な打ち上げ花火が、真昼の輝ヶ丘の空に打ち上がっていた。
さっきまでの二人はその火中にいたんだ。花火の中に紛れ込む体験なんてした事が無い二人は、全くその事に気が付かなかった。
― 何だよ……これ……?
セイギは思った。花火自体にもそうだが、それと共にその色にも。だって、花火といえば色とりどりできらびやかな物だ。だが、セイギとボッズーの目の前に咲く花火は色を持っていなかった。
真っ白……まるで白黒テレビに映される様な、色の無い花火だった。
「………」
「………」
セイギとボッズーは唖然とした表情になってその真っ白な花火を見詰めた。
パチパチと花火は何度も何度も咲いていく、消えることなく咲いていく……
たった一個の花火玉でこんなに連続して何発もの花火が咲くものなのだろうか。『まるで手品を見ているみたいだ……』とセイギもボッズーも思った。
「な……何だボズ、なんで花火……? 花火がなんで……」
「白い……薔薇と一緒だ……つか、花火って何でだよ……」
『何故、どうして花火が?』『白い花火、何故花火が白いんだ?』とセイギとボッズーの頭には二つの疑問が。でも、その答えを見つけ出そうとする前に
ポンッ!
花火が突然弾けるような音を立てた。
「うわっ! 今度はなんだよ……」
唖然とした表情だったセイギが眉間に皺を寄せたその時、花火は雲に似た厚い白い煙へと変わった。
「………」
ボッズーはくちばしをパクパクと動かした。彼はもう言葉を見失ってしまった。
そして、セイギとボッズーの頭の中に浮かぶ疑問符はより大きくなる。
新たに現れた白い煙はモクモクと天に向かって消えた。すると、その跡地に巨大な緞帳が現れたんだ。
いや、錯覚じゃない。本当に緞帳が現れたんだ。花火の時と同じ、まるで手品だ。これもまた白黒テレビに映された様に、白とそして黒……
異様な光景にセイギとボッズーは目を見開いた。
空に開いた紅色の穴、現れた光体、禍々しく白い薔薇、空に浮く白黒の緞帳……
奇々怪々の連続にそろそろ慣れても良い頃だが、流石のセイギ達もそうはいかない。人間の思考回路では追い付かないのだ。二人の思考はもうオーバーヒートを起こして停止寸前だった。
そして、緞帳の奥から……
「パンパカパーン♪ パンパンパン♪ パンパカパーン♪」
場違いな程に陽気な声が聞こえてきた……
「えっ…………」
「なんだボズ???」
セイギとボッズーの疑問に答える様に、緞帳はゆっくりと開いた。
緞帳の奥には古びたスクリーンが……
ジーーッ……ジーーッ……
と、何処かで映写機の回る音がする。
「アッアー! 只今マイクのテスト中。只今マイクのテスト中」
スクリーンから不愉快に甲高い声が古いスピーカーを通したような雑味のある音で響いてきた。それと同時に、炙り出しの絵の様にスクリーンに映像が映し出される。
やはり映るのは白黒の映像、映像の中の明るさのせいかそれとも真昼の明るさのせいか、白飛びと黒潰れが酷くとても見難い。
「な……何だよこれ……」
セイギは『スクリーンに何が映っているのか見逃してはならない』と、目を細めてスクリーンを睨んだ。
「え……アナ? ……ウンサー?」
ぼやけた映像に映ったのは、髪を七三に分けた大きな黒縁の眼鏡をかけたスーツ姿の男だった。その男はテーブルを前にして座っているのか、胸から下を見せず、テーブルの上で指を組み合わせてこちらに視線を真っ直ぐに向けていた。組み合わせた手の前には何やらマイクの様なものがあった。
男はそのマイクに向かってこう言った……
「こんにちは。ニュースの時間です」