序章 ―始まりの日― 3
男の子が俺の手を離した時、俺は流れた涙を拭いながら決意したんだ。
世界は俺が救う……って。
俺だけじゃない。勇気も、愛も、夢も、優も……五人が五人共、決意していた。
俺達は男の子に選ばれ、そして自分自身で選んだんだ。《英雄》になる道を。
「6年後の2月15日の17時……君達はこの腕時計を持って再びこの輝ヶ丘の大木に集まって下さい。敵の名は《王に選ばれし民》、強大な存在です。五人でなければ立ち向かえない相手です。戦う時はこれを使って下さい。君達に英雄としての力を与えてくれる物です」
最後に男の子はそう言って、俺たちに大きな文字盤の付いた腕時計をくれた。
「それから、あなたにはこれも」
男の子は俺が左腕につけた腕時計の文字盤を叩いた。すると、文字盤がパカリと開いてその中から小さなタマゴが出てきた。
「このタマゴが孵化すれば、私の代わりにあなた達を導いてくれる存在が生まれる。きっと役立つ筈です」
受け取ったタマゴはとても暖かく、力強い存在だと俺は察した。
「約束して下さい。6年後に……」
「うん、分かってるよ! 愛、勇気、夢、優、絶対に忘れるんじゃねぇぞ! 6年後の2月15日の17時、俺たち五人はまたこの場所に集まるんだ! この、輝ヶ丘の大木に! そして、絶対に倒すんだ! 《王に選ばれし民》を!」」
こうして、俺達は約束を交わした。
それから数ヶ月後、俺は親の都合で輝ヶ丘を離れる事になってしまったのだが、この日交わした約束を忘れる事はなかった。
固い決意を胸にずっとずっと生きてきた。英雄として戦う準備をしながら。
それは俺だけじゃない。きっと、勇気も、愛も、夢も、優も……みんなそうだ。
そうだよな? みんな?