残酷な描写あり
第61話 悪竜使い敗走
くっ四世の力を持てしても、倒れぬかユジリアの国は、
それほどに人間と人間が信頼し合っているとでもいうのか?
その信頼とて、確かなものではないというのに、
まあ、みておれ、まだ勝てる見込みはある。
目一杯、暗がりで唱えた文士としての才が定かなら今頃は、
「北に行くんですかい!? あぶねえですよ!?」
「よい、ここからは私一人で行く、お前は去れ」
金貨幾らかをばら撒くと、さっと退く馬車と馭者、
「北へ向かうのだ、北へ、足が続く限りな」
かつて唱えていた出来事のすべて、物語の全部は、
北国で起きた暗雲と関係しているに違いない、
あの大魔女めが、わたしにさんざ吐かせたすべての文脈が、
そこに集結し、形を為し始めているということだ。
「列強としての歩兵部隊、魔道士の助け、
魔人、魔術の失敗、神の柱、なにもかもだ、
なにもかもが北の伝説をモチーフとしたものだ」
「北に何かがある、そしてそこに」
悪竜の子種、まだ火は灯っている。確かな熱さで、
「悪竜の五世となるものの姿はどのようなものか想像だにしないものだが」
一等文士は足を進めて、物思いに耽りながら、北の寒さに凍えてもいた。
「とまれ」
「誰が止まるものか」
「とまれというのがわからぬか! くらえ!!」
そういうと魔法使いは炎の玉をこちらにめがけて飛ばしてきた、
四散し、爆裂したそれはあやうく一等文士を焼くところであった。
「危ないではないか、何者だ」
「おまえこそ、どこかで見覚えがあるとおもえば!!」
「悪竜使いか!!!」
「はっはっは、そんな呼び名があるのか、知らなかったな」
「文士が魔法使いに勝てると思うな!!くらえっ!!!」
炎の玉は三つに分かれて飛んで来てこれもまた足元で爆発四散し、
あやうく、一等文士のアシを焼くところだったが、足早に走って逃げる、
一等文士はすんでのところを躱し、まますすむ、
「外した!!?外法を使いおって!!」
体当たりし、魔法使いの詠唱を拒んだままに走り抜ける一等文士は、
「なにを、こいつっ!!」
手にした魔具を床に叩きつけ、まばゆい閃光をあたりに広げた!
「くそっ逃したか!!」
魔法使いが気付いた時には一等文士の姿は無く、
あとにはしずけさのみが残るのみであった。
「無事に逃げられたか、やれやれ」
足元に残る雪も少ない場所を通り、移動に移動を重ねた一等文士は、
未だ消えぬ悪竜の火種を抱えて、これをどこにやるかを探しているのだ。
北国、そこには確かなものがあるはず、何度となく行式で描いた、
その大地には未だ何人にも塗り替えられぬチカラが眠っているはずだと、
「私が一番のりとなれば悪くはないのだが、
追手の数も増えようことだしな」
さてどうしたものか、続きを描く気力は持つか、さてさて、
悪人となった悪竜使いを追うものは何者か?
おつかい、たたかい、あらそい、もめごと、
はからい、おしごと、ともだち、あくにん、
俺は悪人をえらんだ、なんでも賞金首って奴らしい、
悪人をとらえろってクエストで、そのクエストの悪人っていうのが、
悪竜使い、指名手配所の絵柄とそっくりな顔と風貌のヤツを探せってなで、
皆に訊き込みまでした、ただそれだけじゃうまくいかないのは、
わかりきってたんで、とりあえずおしごとをついでに引き受けたんだ。
なんでも北国の様子を見に行ってくれ、そんで帰ってこいというのが、
今回のお仕事の内容で、悪人なんざはなかなか出くわさないのだけど、
とりあえず北に進んで怪しげなおっさんを一人見つけた。
「おっさん、北の方に行くのかい?」
「なんだきさまは?」
「おれも北の方に行くんだよ、ついてってもいいかい?」
「遠慮しておく、わたしは急ぐのでな」
いかにもって感じだった、たしかに手配書と顔も似てるし、
今すぐトッ捕まえてとも思ったが、先にお仕事を済ませなけりゃならないから、
とりあえず探りだけ入れることに決めた。
「つかぬことをきくようだけど、おっさんお仕事なにしてんの?」
「きさまよりはましな仕事だきさまにこそ訊き返すが、何のようだ?」
「丁度、北に行く仕事が入っていてさ、それでおっさんがいるから丁度いいなって、
そうおもっただけだよ、北は危険だっていうだろう? だから一人よか二人の方が」
「きさまが安全な輩だという保証はわたしには何一つとして無いがな」
「まあ、それもそうか、急ぎなら、おれもそうだしついてくぜ」
「まったく、物好きな奴だ」
うまくすれば、帰り道で、手柄上げれるかもしれねえし、
コイツの足取りだけつかんでおければともおもったけど、
おもいのほか足が速かったんで、けっこう苦労したね。
「あ、宿があるぜ、一泊していこうな」
「宿か、悪くないな」
宿取りで揉めることもないまま、一晩したら、
雲隠れって奴、ドロンだよ、「宿主さん、あいつ何処へ行ったかな?」
「知らんよ、どうやら北へ向かってるみたいだがかなりの急ぎのようだな」
「あらら、逃しちまったか、まあ、同じ北に向かってるなら、また出会えるわな」
やっとこさ八つ目のクエストこなして名乗りでも上げれるかってところなわけで、
でもまあ、悪人が今捕まらなくても、もうちょい楽なほう選べばいいだけの話だしな。 そんなこんなで、奴ってばいい逃げ足だけは持ってるって話さ。
それほどに人間と人間が信頼し合っているとでもいうのか?
その信頼とて、確かなものではないというのに、
まあ、みておれ、まだ勝てる見込みはある。
目一杯、暗がりで唱えた文士としての才が定かなら今頃は、
「北に行くんですかい!? あぶねえですよ!?」
「よい、ここからは私一人で行く、お前は去れ」
金貨幾らかをばら撒くと、さっと退く馬車と馭者、
「北へ向かうのだ、北へ、足が続く限りな」
かつて唱えていた出来事のすべて、物語の全部は、
北国で起きた暗雲と関係しているに違いない、
あの大魔女めが、わたしにさんざ吐かせたすべての文脈が、
そこに集結し、形を為し始めているということだ。
「列強としての歩兵部隊、魔道士の助け、
魔人、魔術の失敗、神の柱、なにもかもだ、
なにもかもが北の伝説をモチーフとしたものだ」
「北に何かがある、そしてそこに」
悪竜の子種、まだ火は灯っている。確かな熱さで、
「悪竜の五世となるものの姿はどのようなものか想像だにしないものだが」
一等文士は足を進めて、物思いに耽りながら、北の寒さに凍えてもいた。
「とまれ」
「誰が止まるものか」
「とまれというのがわからぬか! くらえ!!」
そういうと魔法使いは炎の玉をこちらにめがけて飛ばしてきた、
四散し、爆裂したそれはあやうく一等文士を焼くところであった。
「危ないではないか、何者だ」
「おまえこそ、どこかで見覚えがあるとおもえば!!」
「悪竜使いか!!!」
「はっはっは、そんな呼び名があるのか、知らなかったな」
「文士が魔法使いに勝てると思うな!!くらえっ!!!」
炎の玉は三つに分かれて飛んで来てこれもまた足元で爆発四散し、
あやうく、一等文士のアシを焼くところだったが、足早に走って逃げる、
一等文士はすんでのところを躱し、まますすむ、
「外した!!?外法を使いおって!!」
体当たりし、魔法使いの詠唱を拒んだままに走り抜ける一等文士は、
「なにを、こいつっ!!」
手にした魔具を床に叩きつけ、まばゆい閃光をあたりに広げた!
「くそっ逃したか!!」
魔法使いが気付いた時には一等文士の姿は無く、
あとにはしずけさのみが残るのみであった。
「無事に逃げられたか、やれやれ」
足元に残る雪も少ない場所を通り、移動に移動を重ねた一等文士は、
未だ消えぬ悪竜の火種を抱えて、これをどこにやるかを探しているのだ。
北国、そこには確かなものがあるはず、何度となく行式で描いた、
その大地には未だ何人にも塗り替えられぬチカラが眠っているはずだと、
「私が一番のりとなれば悪くはないのだが、
追手の数も増えようことだしな」
さてどうしたものか、続きを描く気力は持つか、さてさて、
悪人となった悪竜使いを追うものは何者か?
おつかい、たたかい、あらそい、もめごと、
はからい、おしごと、ともだち、あくにん、
俺は悪人をえらんだ、なんでも賞金首って奴らしい、
悪人をとらえろってクエストで、そのクエストの悪人っていうのが、
悪竜使い、指名手配所の絵柄とそっくりな顔と風貌のヤツを探せってなで、
皆に訊き込みまでした、ただそれだけじゃうまくいかないのは、
わかりきってたんで、とりあえずおしごとをついでに引き受けたんだ。
なんでも北国の様子を見に行ってくれ、そんで帰ってこいというのが、
今回のお仕事の内容で、悪人なんざはなかなか出くわさないのだけど、
とりあえず北に進んで怪しげなおっさんを一人見つけた。
「おっさん、北の方に行くのかい?」
「なんだきさまは?」
「おれも北の方に行くんだよ、ついてってもいいかい?」
「遠慮しておく、わたしは急ぐのでな」
いかにもって感じだった、たしかに手配書と顔も似てるし、
今すぐトッ捕まえてとも思ったが、先にお仕事を済ませなけりゃならないから、
とりあえず探りだけ入れることに決めた。
「つかぬことをきくようだけど、おっさんお仕事なにしてんの?」
「きさまよりはましな仕事だきさまにこそ訊き返すが、何のようだ?」
「丁度、北に行く仕事が入っていてさ、それでおっさんがいるから丁度いいなって、
そうおもっただけだよ、北は危険だっていうだろう? だから一人よか二人の方が」
「きさまが安全な輩だという保証はわたしには何一つとして無いがな」
「まあ、それもそうか、急ぎなら、おれもそうだしついてくぜ」
「まったく、物好きな奴だ」
うまくすれば、帰り道で、手柄上げれるかもしれねえし、
コイツの足取りだけつかんでおければともおもったけど、
おもいのほか足が速かったんで、けっこう苦労したね。
「あ、宿があるぜ、一泊していこうな」
「宿か、悪くないな」
宿取りで揉めることもないまま、一晩したら、
雲隠れって奴、ドロンだよ、「宿主さん、あいつ何処へ行ったかな?」
「知らんよ、どうやら北へ向かってるみたいだがかなりの急ぎのようだな」
「あらら、逃しちまったか、まあ、同じ北に向かってるなら、また出会えるわな」
やっとこさ八つ目のクエストこなして名乗りでも上げれるかってところなわけで、
でもまあ、悪人が今捕まらなくても、もうちょい楽なほう選べばいいだけの話だしな。 そんなこんなで、奴ってばいい逃げ足だけは持ってるって話さ。