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作者: 星埜銀杏
レベル09 耐久度MAXでタンクソウルな俺様の巻
 俺は勇者だ。最強の勇者だ。

 と言ってしまえば、モブキングどころか、ゲーハーモブスターズにもなれない。

 むしろジジイラップ。糸森慎三。岡山弁でのソレだ。

 糸森慎三。二度と言わんぞ。いや、もう何度でも言うぞ。前言撤回、全然、ええから、何度も何度も海馬さえ超えて刻みつけちゃるわ、このワシの魂。……ああ、ええ。意味が分からんヤツはググれ。ジジイラップでな。全ては自己責任でだ。

 えへっ!

 遺影ッ!

 とにかく、俺は生き返った。

「ククク。茶番は終わったか」

 魔王だ。この言葉は。むむ。

 さね魔人が言ったように思えるソレなのだが、実はDOTAMAだったりして。

 それともアレか呂布カルマか。もしくはKTちゃん。

 胡桃そらはどっちかというと、わりと好きじゃない。

 そんな事はどうでもいい。それよりも眼前には魔王がいる。そして、茶番は終わったか、と言った。どういう事か。状況を整理する必要があるな。まず竜巻旋風脚は存在したという事。次に昇竜拳も、また在ったという事。だったら……。

 波動拳は、どうなのかという話にもなる。もちろんルークの波動拳ぢゃないぞ?

 はぁどぅけん、なんて小馬鹿にした感じで言うアレ。

 阿呆の阿呆なりの煽りなんだろうけど子供かっての。

「いや、ビチの方が阿呆さね。どうして、そんな、いらない事を考えるのかね。状況を整理するんだろ。で、また茶番を繰り広げるなんて……、阿呆の中の阿呆」

 はぁどぅけん、はぁどぅけん、はぁどぅけん。トウ。

「やっぱり、お猿の脳さね。ビチの味噌漬け茶漬けは」

 クソう。

 この発言は、紛う事なき、さね魔人だ。ムキムキ言語が静かなのが不気味だが。

 兎に角。

 茶番は終わったか、と言った魔王は、さね魔人ぢゃない。もちろん、さね魔人の姿は今まで拝んだ事はない。それでも性別というか、見た目で分かる。まるで往年のブルース・リーを思わせるような細マッチョなホワチャな野郎なのだ。

 目の前にいる魔王、ドリルでポチョムキンな野郎は。

 少なくとも女の子だと思われるさね魔人とは似ても似つかない。多分だけどな。

「さあ、勇者。かかってこい」

 右手のひらを自分側に向けて指先を自分へと仰ぎ、戻し、また仰ぐを繰り返す。

 カモンってか。家紋達磨とか言うぞ、このゲーハーモブスターズ野郎。ああん?

 というか、生き返って直ぐに、それこそステータス画面を開く間もなく、今、目の前で余裕をこいてる魔王が現われた。もちろん、例によって例の勇者が育つ前に殺してしまえというアレなんだろうが、今回は、魔王が直々に手を下すらしい。

 まあ、こうなってしまえば戦うしかない。嫌でもな。

 もちろんモブキングを目指す俺は魔王などという人種とは一生関わりたくもなかった。だが、ドッカンと現われたならば、ダムダムと拳を握り、ポルポルと戦うしかない。いわゆる、やるっきゃない状態なわけだ。はあ、スッポン、スッポン。

 大体、一番、始めの始めから魔王の差し金で手下どもが俺様を殺しにきたしな。

 クソう。

 ジョン。

 だわよ。

「来ないならば、こちらからいくぞ? ……よいか?」

 良くないけど、まあ、仕方がないよね。それこそ博打だが、必殺技を出そうか。

 と俺は自分の必殺技である、奇面フラッシュを焚く。

 きめえ。

 と、きめぇ丸が空笑っただけで、なにも起こらない。

 まあ、そうだよね。必殺技なんて、そもそも無いし。

 だって、俺はモブキングになる男だぜ。察してくれ。

 てか、思った。一生、童貞と、一生、独身、どっちが嫌なんだろ。

 なんて、現実逃避してしまう俺のお猿の脳。まさに0と1の無駄遣いで阿呆な事を考えた瞬間、目の前にいる謎の魔王が左拳を突き出した。そうして、何らかの呪文を唱えた後、七鍵守護神〔イーロン〕仮面〔マスク〕と叫んだ。うそ。

 マジで?

 シリアス路線でいくの? 逝くの? 今回の俺はさ。

 途端、膨大なエネルギーが、まるで、かめはめ波の如くも溢れる。

 真っ赤なソレは太陽とも見紛うほどの、パワー全開、元気玉だぜ?

 むしろ、元気玉、そのもの。というか、霊丸か。いやいや、どっちでもいい。むしろ、一天、にわかに、かき曇る、なのだ。そして、エネルギー体はエーテル体も巻き込み、大黒摩季とどぐろを巻き、俺に、お歳暮とお中元の挨拶を届ける。

 ちわーっす。三河屋ですと。サブちゃん。北島さん。

 俺は、思わず、両二の腕で顔をかばい、かばい婆ちゃんにもなる。

 この際、チームバチスタの栄光は、がばい婆ちゃんと交換して、やってしまう。

 遺影ッ!

 まあ、そのあとで妹に怒られたのは言うまでもない。

 ジョン。

 兎に角。

 似非肉のカーテンで防御した俺の体が謎の魔王から放たれたエネルギー体に包まれて熱を持つ。もちろん量子力学の世界でのトンネル効果で電子がワープして俺の体は電子レンジの中状態になる。チーン。ウラシマ効果は校歌斉唱だがな。

 SoCoolとエレファントカシマシが歌ったよう、カシマさんは笑う。嗤う。

 今、あなたの後ろにいるよ、と後ろ百太郎もビックリの萬國驚天掌だ。遺影ッ!

 辺り一面はまばゆい光に包まれて静寂が降りてくる。

 待てッ!

 待てよ。

 待って!

 何か嫌いかより何が好きかで自分を語れよと天から声が降りてくる。天声人語。

 そうだ。

 そうよ。

 そうなのよ。耐えきった。耐えきったのだ。現実逃避しないとやってられない状況で適当な事を適当に考えていたらヤツからの攻撃を、しのぎきったのだ。今の俺は、俺、TUEEE、だぞ。チートな耐久力を持っている。少なくともな。

 タンクは俺に任せろ的な俺は最高にハイってヤツだ。

 だが、このあと思い知る事になる。今の俺の弱点を。

 今は、そんな事など微塵も頭に浮かぶ事もなく無邪気に自分の耐久度を喜んだ。

 くるくると妖精が舞うよう要請された雑賀衆の如く。

 遺影ッ!
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