第111話 はいかい
さて、その大豪院であるが、前述の通り部活動等も全て断った挙句、放課後に何をしているのかと言うと、どこへ行くともなく町中を徘徊していた。
「な、なぁ、大豪院… もう2時間近く歩き回ってるけど、一体どこへ向かっているんだ?」
大豪院に従いてまわっている鍬形も、無駄に長時間歩き回る事に付き合わされてヘトヘトになっていた。
大豪院は相変わらず鍬形の存在など気にかけず、1人であちらへスタスタこちらへフラフラと歩き回っていた。
その姿はまるで何かを探している様でもあり、敢えて目立つ動きをして何処かに潜んでいるであろう刺客への挑発行為にも見て取れた。
その真意がまるで掴めない鍬形としては通常の倍程の疲労感があるのだが、『これは!』と見込んだ相手に1日すら付き合えないのでは、今後の関係にも影響する、と踏んばっている所である。
そしてそんな大豪院らを影に隠れて怪しく監視する人物が3人。
「…何してんのかしら、あいつ?」
「『俺より強い奴に会いに行く』的な索敵活動でしょうか…?」
「お家に帰れなくて困っているのかも知れませんよぉ?」
そう、睦美、久子、野々村のマジボラ組である。暇潰しに大豪院を探しに行こう、となったは良い物の、校内を探そうにもすでに彼は下校した後であった。
いつもの睦美であれば、学校外にまで相手を追いかけてわざわざ探し回るなどあり得ないのだが、大豪院のキャラクター性に何か惹かれたものがあったのか、はたまたそれほどまでにヒマだったのかは定かでは無いが、とにかく大豪院に会いに行く、というマジボラミッションが唐突に始まったのである。
まぁ、放っておいても大豪院の巨大な体躯は注目を集める為に、やれ「大通りへ向かった」だの「神社の境内にいた」だのの有力情報は簡単に手に入り、程なくして大豪院を発見するに至ったのだ。
いや正確には彼女らは1人も大豪院と面識が無いので、大豪院(と思しき人物)を発見した訳だ。尤も瓢箪岳高校の生徒で身長2mに及ぶ人物は大豪院しかいないので、間違えようもない訳であるが。
とにかく発見したはいいが、その後のアプローチの方針が定まらずに何となく後を尾けている、という状態であった。
「んもう、誰よ『こっそり後を尾けよう』なんて言った奴は?」
「睦美さまですよぉ? だってケンカしに来たんじゃないんですから…」
「そもそも何故彼を尾行する事になったんでしたっけ…?」
「野々村がネタ振ったから見物しに出て、こんな展開になったんじゃない」
「で、どうします? あの人に特に用事がある訳で無し、もう帰ります?」
久子のそんな言葉に少し顔を曇らせる睦美。
「んー、でも何だかアイツに引っ掛かる物があるのよねぇ… なんかこう、上手く言えないんだけど…」
「あ、何か分かります。私も何故だが分かりませんがこう、『懐かしい』みたいな感覚を大豪院から覚えます。一体何なんでしょう…?」
自分の気持ちが上手く言語化できずに少々苛ついた感じの睦美に久子が同調した。逆に野々村にはそんな感覚は一切無く、2人の先輩の話がよく理解出来ないでいた。
そうこうしている間に大豪院の方で動きがあったようだ。
大豪院と鍬形が人通りの少ない路地裏に足を踏み入れたのを待ち構えていたかのように、金属バットや鉄パイプを持った桜田の子分達が彼らを取り囲んだのだ。
しかもどこかで応援を呼んだのか昼休みよりも人数が増えて5人になっている。
桜田本人の影は無いが、子分らの動きの裏に桜田がいないとは考え難かった。
「よぉ一年坊。お前ちょっと目立ちすぎだよ」
「先輩に対する礼儀って物を教えてやるよ、そこの雑魚もろともな!」
武器を持って多人数で少数を囲んでおいてこの言いぐさである。
鍬形は「卑怯だぞてめえら…」と分かりやすく歯噛みしているが、大豪院からは相変わらず何の表情も読み取れないでいた。
「俺ら最近不満が溜まってるのよ。訳の分かんねぇ魔法少女や武藤に良いようにされててさぁ… だから誰か殴り甲斐のありそうな奴を探してたんだよねぇ…」
これからの自分の暴力犯罪行為に、さも正当な理由があるかの様に話す子分その1。周りのその2〜その5までが同様な考えなのか、共に悪事に臨む顔つきをしている。
「あ、なんか変なのに絡まれてますよ? どうします?」
「あ… あいつら、私や芹沢さんを襲おうとしたチンピラですよ!」
久子の質問に被せて、自分が主犯のくせにしれっと被害者ポジションで桜田の子分を非難する野々村。
「んー、せっかくだから様子見ようか? ヒザ子はいつでも乱入出来るようにスタンバイしてて」
「ハイです!」
「じゃあ私はもしもの為に記録を撮っておきますね…」
睦美の指示に姿勢を正す久子と、スマホを動画撮影モードにして待機する野々村。
勢力は2vs5。そして観客は3人の、結果は見えているが経過は気になるバトルが今始まろうとしていた。
そして我らが芹沢つばめは、無人のマジボラ部室を確認するや即座にそのまま校庭にサッカー部の応援へと向かう。
そして彼の練習を眺めながら『どんなお弁当を作ろうかな…?』と、1人脳内に花を咲かせていた。
「な、なぁ、大豪院… もう2時間近く歩き回ってるけど、一体どこへ向かっているんだ?」
大豪院に従いてまわっている鍬形も、無駄に長時間歩き回る事に付き合わされてヘトヘトになっていた。
大豪院は相変わらず鍬形の存在など気にかけず、1人であちらへスタスタこちらへフラフラと歩き回っていた。
その姿はまるで何かを探している様でもあり、敢えて目立つ動きをして何処かに潜んでいるであろう刺客への挑発行為にも見て取れた。
その真意がまるで掴めない鍬形としては通常の倍程の疲労感があるのだが、『これは!』と見込んだ相手に1日すら付き合えないのでは、今後の関係にも影響する、と踏んばっている所である。
そしてそんな大豪院らを影に隠れて怪しく監視する人物が3人。
「…何してんのかしら、あいつ?」
「『俺より強い奴に会いに行く』的な索敵活動でしょうか…?」
「お家に帰れなくて困っているのかも知れませんよぉ?」
そう、睦美、久子、野々村のマジボラ組である。暇潰しに大豪院を探しに行こう、となったは良い物の、校内を探そうにもすでに彼は下校した後であった。
いつもの睦美であれば、学校外にまで相手を追いかけてわざわざ探し回るなどあり得ないのだが、大豪院のキャラクター性に何か惹かれたものがあったのか、はたまたそれほどまでにヒマだったのかは定かでは無いが、とにかく大豪院に会いに行く、というマジボラミッションが唐突に始まったのである。
まぁ、放っておいても大豪院の巨大な体躯は注目を集める為に、やれ「大通りへ向かった」だの「神社の境内にいた」だのの有力情報は簡単に手に入り、程なくして大豪院を発見するに至ったのだ。
いや正確には彼女らは1人も大豪院と面識が無いので、大豪院(と思しき人物)を発見した訳だ。尤も瓢箪岳高校の生徒で身長2mに及ぶ人物は大豪院しかいないので、間違えようもない訳であるが。
とにかく発見したはいいが、その後のアプローチの方針が定まらずに何となく後を尾けている、という状態であった。
「んもう、誰よ『こっそり後を尾けよう』なんて言った奴は?」
「睦美さまですよぉ? だってケンカしに来たんじゃないんですから…」
「そもそも何故彼を尾行する事になったんでしたっけ…?」
「野々村がネタ振ったから見物しに出て、こんな展開になったんじゃない」
「で、どうします? あの人に特に用事がある訳で無し、もう帰ります?」
久子のそんな言葉に少し顔を曇らせる睦美。
「んー、でも何だかアイツに引っ掛かる物があるのよねぇ… なんかこう、上手く言えないんだけど…」
「あ、何か分かります。私も何故だが分かりませんがこう、『懐かしい』みたいな感覚を大豪院から覚えます。一体何なんでしょう…?」
自分の気持ちが上手く言語化できずに少々苛ついた感じの睦美に久子が同調した。逆に野々村にはそんな感覚は一切無く、2人の先輩の話がよく理解出来ないでいた。
そうこうしている間に大豪院の方で動きがあったようだ。
大豪院と鍬形が人通りの少ない路地裏に足を踏み入れたのを待ち構えていたかのように、金属バットや鉄パイプを持った桜田の子分達が彼らを取り囲んだのだ。
しかもどこかで応援を呼んだのか昼休みよりも人数が増えて5人になっている。
桜田本人の影は無いが、子分らの動きの裏に桜田がいないとは考え難かった。
「よぉ一年坊。お前ちょっと目立ちすぎだよ」
「先輩に対する礼儀って物を教えてやるよ、そこの雑魚もろともな!」
武器を持って多人数で少数を囲んでおいてこの言いぐさである。
鍬形は「卑怯だぞてめえら…」と分かりやすく歯噛みしているが、大豪院からは相変わらず何の表情も読み取れないでいた。
「俺ら最近不満が溜まってるのよ。訳の分かんねぇ魔法少女や武藤に良いようにされててさぁ… だから誰か殴り甲斐のありそうな奴を探してたんだよねぇ…」
これからの自分の暴力犯罪行為に、さも正当な理由があるかの様に話す子分その1。周りのその2〜その5までが同様な考えなのか、共に悪事に臨む顔つきをしている。
「あ、なんか変なのに絡まれてますよ? どうします?」
「あ… あいつら、私や芹沢さんを襲おうとしたチンピラですよ!」
久子の質問に被せて、自分が主犯のくせにしれっと被害者ポジションで桜田の子分を非難する野々村。
「んー、せっかくだから様子見ようか? ヒザ子はいつでも乱入出来るようにスタンバイしてて」
「ハイです!」
「じゃあ私はもしもの為に記録を撮っておきますね…」
睦美の指示に姿勢を正す久子と、スマホを動画撮影モードにして待機する野々村。
勢力は2vs5。そして観客は3人の、結果は見えているが経過は気になるバトルが今始まろうとしていた。
そして我らが芹沢つばめは、無人のマジボラ部室を確認するや即座にそのまま校庭にサッカー部の応援へと向かう。
そして彼の練習を眺めながら『どんなお弁当を作ろうかな…?』と、1人脳内に花を咲かせていた。