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作者: 金星タヌキ
R-15
part Kon 5/16 pm 5:03


 
 あたしが サッサと 食べ終わっちゃったあとも あきちゃんは 小さなお好み焼を ゆっくりゆっくり 食べていた。
 可憐な 小ぶりな口で ちょっとずつ 上品に食べる姿は ホントに お姫様って感じで 可愛いんだけど 明らかに お好み焼は 似合って無かった。
 …今度 食べに行くときは ケーキか パフェにしよう……。
 ……。
 …。


 結局 あきちゃんが 食べ終わったときには 5時を回っていた。

 
「あきちゃん もう5時回っちゃったけど まだ帰らなくて大丈夫?」

「あー アタシですか? あの うち 門限とか 特に無いんで 大丈夫です。晩ご飯までに帰れたら 問題なしです」

「よかった~。あのさ 時間あるんだったら 部屋 上がっていかない?」

 
 今日 あきちゃんを 家に呼んだのは おやつ代を浮かしたかったってゆーのもあるけど ちょっと見て欲しいものが あったんだ。

 
「えっ? お部屋 行っても いいんですか?」

「うん。狭くて ゴチャゴチャしてて 悪いんだけど あきちゃんに 見て欲しいものがあるんだ」

「え? なんだろう? ちょっと楽しみです」

 
 あんまり期待されても困るけど…。
 いや ホント 大したもんじゃ無いし…。
 でも あきちゃんに見て欲しいな。
 できれば あきちゃんの意見を 聞いてみたいんだよね。

 あきちゃんを あたしの部屋に 案内する。
 まずは 厨房の横の階段を上がる。
 2階は 台所と リビング兼パパとママの寝室。
 リビングの横の急な階段を上がると踊場がある。
 踊場の右側の8畳が兄貴と啓吾の部屋。
 踊場の奥の4畳半が あたしの部屋だ。

 家族のみんなは 2人部屋だけど あたしは 女の子ってことで 1人部屋にしてもらってる。
 スゴく優遇してもらってるから 贅沢言ったら ダメなんだけど……。

 まず 狭い。
 そして 防音は 最悪。
 国道に面してて 夜うるさい。
 その上 窓 開けられないからホント暑い。
 
 かなり不満だらけの部屋だ。
 あたしが 大学に行きたい理由の1つは この部屋から出たいってゆーのもある。
 まあ 大学 行かせてもらうだけでもキビシイのに 下宿させて欲しいとか いよいよムリだとは 思うんだけど…。
 
 いや 寮なら安く入れるハズ。
 なんなら2人部屋とか 4人部屋でもいい。
 あたしが出ていけば 兄貴と啓吾も 1人部屋にしてもらえると思うし。

 
「あきちゃん 入って。ここが あたしの部屋。ホント狭いから ゴメンね」

「お邪魔しま~す。わぁ HAL&TELLの大きなポスター。こっちのポスターは Vリーガーさんですか?」

 
 あたしの部屋の右側の壁ってゆーか側面には 大きなポスターが2枚貼ってある。
 
 1枚は TELLくんのポスター。
 
 でも あきちゃんは アイドルに ほとんど興味が無いみたい。
 どうやらHAL&TELLの2人の区別がついていないらしい。
 ……ぜんぜん キャラ違うのに。
 
 まあ いいや。
 HAL&TELLの話は やめておこう。
 

 Vリーグは 最近 あきちゃん 少し興味持ってくれたみたいで こないだは 休みの日に TV中継見てたらしい。

 
「そうそう。星光フェニックスの児嶋こじま 悠花ゆうかさん。悠花さん 桜橋出身だし 応援してんのよね。たま~に うちのお店にも 来てくれるんだよ。レジのところに 色紙もあるし」

「桜橋の人なんですか?」

「そうなの! あたしと同じ 桜橋二中。高校は 清瀧の清栄女子。だから あたしも清栄 行きたかったんだけど あそこ私学だからさ…」

 
 中3のとき あたしは 清栄女子の推薦をもらった。
 だけど 私立に行かす お金が無いって両親に反対されて ホント 悔しかったけど 諦めた経験がある。
 そのとき 家が貧しいってことの意味が分かったし 両親を 説得するには バレーにしろ 勉強にしろ あたしが本気だって わからせるだけの実績がいるってことも分かった。

 まあ 今は 藤工にして よかったって思うけどね。
 インターハイの出場実績は 似たようなもんだし。
 いい監督とコーチに出会えたし。
 いいチームだし。
 先輩たちも優しいしさ。
 イジられるけど…。
 
 それに藤工は 近い。
 清瀧だったら 片道2時間くらいかかる。
 悠花さん よく3年間も通ったよなぁ…。
 それだけでもリスペクトだ。

 もう1つ 藤工にして よかったこと。
 それは 服飾デザイン科に 入ったこと。
 あたしは カワイイ服を考えたり 絵に描いたりするのが 小さいころから大好きで 毎日 自由帳にいろんなドレスを描いていた。
 小3でバレー始めてからは 毎日ってことは さすがになくなったけど それでも 年に1~2冊は ノートを描きつぶしてきた。
 
 中3までは ノートに 妄想を描き殴ってただけだったけど 高校に入ってからのノートは いつか実現させる夢を描き込むものに変わった。
 授業でミシンの使い方を実習したり 型紙の描き方を教わったりしたことで 考えたことを 形にする方法が分かってきたんだ。
 お店や雑誌で カワイイ服 見かけても 作り方を想像できるようになってきたし。
 自分が考えたことが 形になるって メッチャ楽しい。
 
 藤工にして大正解!
 清栄の普通科だったら 妄想は 妄想のままだったと思うんだよね…。
 ………。
 ……。
 …。



                          to be continued in “part Aki 5/16 pm 5:03”




 
 
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