第五一話 第六感で見た景色
マスターの眼光が鷲頭へと向く。第六感の感応者である鷲頭と渋川は、マスターが只者ではないと気付く。
マスターは微笑みながら、テーブルの奥、壁側に座る五条へと豚骨ラーメンのバリ硬を渡した。二人は微笑みあっていて、日常の空気感であった。それからマスターが、豚骨ラーメンを五条の隣に座る鷲頭に渡そうとした時、急にマスターの顔から笑みが消えた。
再び鋭い眼光を取り戻し、マスターは鷲頭を凝視した。
それに気付いた鷲頭もまた、度々渋川へ向けていた猛禽類の様な尖った目を、マスターへと向けた。
「五条のお嬢さん。今日は学友を連れてきたのかい。その気品の高さ、君が鷲頭杏奈ちゃんか。五条ちゃんから聞いているよ。そうか……人の魂を鷲掴みにする様なその眼力の鋭さ、君は第六感の使い手だね」
弥勒は、このマスターがなに者なのか分からず、心底不気味さを感じた。なぜ一般人が感覚感応について知っているのか。いやそもそも、マスターが一般人だとなぜそう思ったのか。弥勒は、ラーメン屋のマスターが惟神学園について知っている筈がないという自身の先入観で、勝手にマスターを無知な一般人だと思ってしまっていたことを恥じた。
「そちらの爽やかなレディも、第六感の使い手だね。失礼、お名前は?」
「渋川葉月と申します……日向分校から来ました」
「そうか、始まりの帝都から来たのか。ここで会えた事も、八百万のお導きかもしれんな」
マスターはそういうと、向かい合う様に座る鷲頭と渋川の双方へ目をやり、それから言葉を続けた。
「五感を超えた感覚で、物体や時間を寸分の狂いなく理解出来るという感覚、第六感。鷲頭杏奈、渋川葉月の両少女は、私の側に流れる時間を理解することで、私のこれまでの歩みやそうして築かれた魂というべき、人間性。そしてそこから導き出される今後のおおよその行く末を、ぼんやりと眺めているのだろう? 素晴らしいな。私も全ての過去や未来、そこから導き出されるこの世の理の真実を悟りたいと願う、神通力の求道者の一人だ。その感覚に憧れたものだ。教えてくれないか、私の未来にはどんな景色が広がっているのかな」
その言葉に、鷲頭と渋川の二人は見合った。そして同時に、弥勒の方を見た。
「どうやら渋川さん、あなたと同じ景色を見ている様ね」
「そうみたいだわ鷲頭ちゃん……こんなにもハッキリと未来が見えたのは……初めてだわ」
困惑する二人をよそに、五条はズルズルと音を立てながらラーメンを啜(すす)っていた。
しかし余りに平然とするその姿に、巳代はなにかを悟った。弥勒は、巳代がなにかに気付いた時、ニヤリとする癖があることを知っていた。
「五条衣世梨、お前がここへ俺達を連れてきた理由がわかった」
「勘が鋭いやん有馬君」
「初めから知っていたのか」
「いいや〜さっきゴマサバを食べてる時に、ふとこの景色を見たっちゃん。今杏奈と渋川ちゃんが見てる景色をね。二人私も第六感の感応者やけん」
五条は水を飲み、それからいった。
「マスターと弥勒君が剣を交えて鍛錬してる姿をさっ」
再び鋭い眼光を取り戻し、マスターは鷲頭を凝視した。
それに気付いた鷲頭もまた、度々渋川へ向けていた猛禽類の様な尖った目を、マスターへと向けた。
「五条のお嬢さん。今日は学友を連れてきたのかい。その気品の高さ、君が鷲頭杏奈ちゃんか。五条ちゃんから聞いているよ。そうか……人の魂を鷲掴みにする様なその眼力の鋭さ、君は第六感の使い手だね」
弥勒は、このマスターがなに者なのか分からず、心底不気味さを感じた。なぜ一般人が感覚感応について知っているのか。いやそもそも、マスターが一般人だとなぜそう思ったのか。弥勒は、ラーメン屋のマスターが惟神学園について知っている筈がないという自身の先入観で、勝手にマスターを無知な一般人だと思ってしまっていたことを恥じた。
「そちらの爽やかなレディも、第六感の使い手だね。失礼、お名前は?」
「渋川葉月と申します……日向分校から来ました」
「そうか、始まりの帝都から来たのか。ここで会えた事も、八百万のお導きかもしれんな」
マスターはそういうと、向かい合う様に座る鷲頭と渋川の双方へ目をやり、それから言葉を続けた。
「五感を超えた感覚で、物体や時間を寸分の狂いなく理解出来るという感覚、第六感。鷲頭杏奈、渋川葉月の両少女は、私の側に流れる時間を理解することで、私のこれまでの歩みやそうして築かれた魂というべき、人間性。そしてそこから導き出される今後のおおよその行く末を、ぼんやりと眺めているのだろう? 素晴らしいな。私も全ての過去や未来、そこから導き出されるこの世の理の真実を悟りたいと願う、神通力の求道者の一人だ。その感覚に憧れたものだ。教えてくれないか、私の未来にはどんな景色が広がっているのかな」
その言葉に、鷲頭と渋川の二人は見合った。そして同時に、弥勒の方を見た。
「どうやら渋川さん、あなたと同じ景色を見ている様ね」
「そうみたいだわ鷲頭ちゃん……こんなにもハッキリと未来が見えたのは……初めてだわ」
困惑する二人をよそに、五条はズルズルと音を立てながらラーメンを啜(すす)っていた。
しかし余りに平然とするその姿に、巳代はなにかを悟った。弥勒は、巳代がなにかに気付いた時、ニヤリとする癖があることを知っていた。
「五条衣世梨、お前がここへ俺達を連れてきた理由がわかった」
「勘が鋭いやん有馬君」
「初めから知っていたのか」
「いいや〜さっきゴマサバを食べてる時に、ふとこの景色を見たっちゃん。今杏奈と渋川ちゃんが見てる景色をね。二人私も第六感の感応者やけん」
五条は水を飲み、それからいった。
「マスターと弥勒君が剣を交えて鍛錬してる姿をさっ」