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作者: ちありや
かなさんとまどかちゃん
〜仲村渠視点

《うひゃひゃーっ! 香奈姉かなねーこの紐無しバンジーヤバいヤバい! おしっこ漏れちゃうよ!》

「あははははっ まだまだだね、まどか!」

 あたしとまどかは今日も索敵哨戒と称して、日課の「お散歩」に出ていた。

 この『紐無しバンジー』とまどかが名付けた遊びは、上空1万メートル付近より一気に頭から急降下して、どれだけ地表に近い所で停止できるか? というゲームだ。ちなみにあたしの最高記録は6.2cm、すげーだろ?
 頭から逆さまに落ちるから、万に一つでも地面にぶつけて丙型を傷付けたらメッチャ怒られるからね。そこら辺は抜かりは無いよ。

《もー、かなねーマジ怖すぎるよー。超ビビッたし。んじゃもう1回!》

「良いけど漏らさないでくれよ? 輝甲兵の体で何を漏らすのか知らないけどさ!」

 目覚めた当初は警戒してオドオドしていたまどかだったが、3日経った今ではすっかり馴染んで超仲良しになっていた。もう生まれた時から一緒にいる姉妹かと錯覚する程だ。

 輝甲兵という『兵器』を扱う仕事である為に、まどかには軍人になってもらう必要があったのだが、鈴代の所の3071サンマルナナヒトと同じ様に、現地徴用の3等兵という扱いで落ち着いた。

 まどか本人は軍人になったという自覚は無いだろうし、正直あたしにもそんな感覚は無い。どうせあたしの丙型は直接虫と戦う機会も無いだろうし、今はそれで良いと思っている。

《ね、かなねー、次アレやって! 『くねくね』!》

「ほいほい、またビビッてチビるなよ!」

『くねくね』とは、これまたまどかの名付けた森の中の木々をくねくねと避けながら低空飛行する遊びだ。
 単純ではあるが、高速で大木にぶつかれば輝甲兵とて無傷では済まない。ましてや頭の大きい丙型なら難易度は大きく上がる。

 でもこの香奈さんは名人だからね。『くねくね』と言うより『スイスイ』と木々を避けて、あっという間に森の反対際まで駆け抜けちゃうのさ!

《スゴイスゴイスゴイ! 超カンドー!》

「へへへっ、もっと褒めて良いんだぜ〜? …って、何だあれ…?」

 森の中に金属の反射光のような物を見つけた。森の中にポッカリ空いた広場に陽光が射し込んで、『そいつ』を幻想的に照らし出していたんだ。

《何アレ…? キラキラロボかな…?》

「あぁ、多分な。戦闘で墜落した輝甲兵だと思う。水上さんの機体かな…?」

 機体の残骸はまだ新しく、墜落してから数日しか経っていないだろう。だが操者槽に大きな穴が空いているのが分かる。あれでは中の操者は絶望的だろう。

《ね、あれを持って帰らなくて良いの? 中の人とかまだ生きてるかも…》

「いや、生命反応はもう確かめたよ。あそこには生き残りは居ない。それに『虚空ヴォイド現象の危険があるから落ちた虫や輝甲兵には近付くな』ってルールがあるんだ」

 そのルールも勿論だが、下手に中を覗いて腐敗が始まったばかりくらいの死体をまどかに見せたくない、という理由もある。

《そうなんだ… ん? 外側に何か書いてあるね。ロシア語かな? Хабаровскハバロフスクだって》

「お? まどか外国語読めるのか? スゲーじゃん!」
 まどかがその文字をズームしてくれたが、あたしには何語かすら分からなかった。

《うーん、あーしが読めるんじゃなくて、このロボのコンピュータが勝手に翻訳してくれた感じ》

 そうか! 一瞬置いて行かれた気がして心細くなったけど、そんな事は無かったぜ。やっぱりまどかは良い子だな!

「じゃあアレは外国の輝甲兵だったのかな? よくわかんねーけど触れないルールだから触らず帰るぞ」

《はーい。ね、かなねー、もっかい『くねくね』やって!》

「しょーがねーなー。これやって最後だからな!」

《うん!》


 あたしとまどかは良いコンビになれそうだ。鈴代達に負けないくらいに黄金コンビになって、あいつらを悔しがらせてやろう。
 なんたってあたし達『丙型シスターズ』は無敵だからね!

《あはははっ、スゴすぎてチョーヤバい! かなねー大好き! ずっと一緒に居ようね!!》
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