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作者: 甲斐てつろう
#4
『ヒーローに、ならなきゃ。』
TWELVEが合流してもまだ焦りを見せているゼノメサイア。

「(何を焦っているんだ、単純な話ではないのか……?)」

ただルシフェルに勝てるか不安だという訳ではないのが伝わって来る。
しかしゼノメサイアの詳細が分からないので真実に辿り着けない。

『デヤァッ!!』

ただ先ほど蘭子から指示された"連携"という言葉を無視して突っ込んで行ってしまうほど焦っているのは伝わる。

「ちょ、連携だって!!」

キャリー・マザーの中からゼノメサイアの行動を見て驚く蘭子。
他の隊員たちも慌てている。

「くっ、とりあえず俺らだけでも……!」

「あぁっ!!」

竜司のライド・スネークとアモンと化した陽の乗るウィング・クロウが辛うじて連携をしようと動き出した。

「グゴォォォッ!!」

『デュオォォッ……!』

正面ではゼノメサイアとルシフェルが取っ組み合いの姿勢で睨み合っている。

『ヒヒ、お前じゃ役不足なんだよっ!!』

そうテレパシーで伝えながらゼノメサイアを思い切り投げ飛ばす。

『フオォォッ⁈』

その投げ飛ばされた身体は思い切り連携を取ろうとしたライド・スネークとウィング・クロウに激突してしまう。

「「ぐわぁっ……⁈」」

その様子を見た蘭子は更に苛立ちが増す。

「もう!せっかく連携してたのに!!」

ゼノメサイアの勝手な行動で作戦が台無しになってしまいキレる蘭子。

「(俺が声を上げた方がいいのか……?)」

一方で名倉隊長はゼノメサイアの焦りを理解していたため自分がわざわざ声を出して問う事で意思疎通が出来るのではないかと思っていた。

「くっ……」

しかしまだ勇気が出ない。
前回で存在意義に気付いてもそこから前へ進むのにはまだ覚悟が足りなかった。





『グゥ、オォ……』

大ダメージを受けてしまい苦しんでいるゼノメサイア。
その間もTWELVEはルシフェルに対して何とか連携を取りながら攻撃を仕掛けていく。

「食らえやぁ!!」

ライド・スネークとウィング・クロウはお互いをカバーし合うように敵を翻弄しながら攻撃していく。

「くっ……!!」

それでもカバーしきれない所は隊長のタンク・タイタンの多連装ミサイルの砲撃によって隙を作っていく。
だがしかし決定的に足りないものがあった。

「コイツ硬すぎだろ!!」

彼らの火力だけでは足りず前回よりも遥かに硬くなったルシフェルの体表に中々ダメージを与えられないのだ。

「やっぱりゼノメサイアの火力が必要だよね……っ」

オペレーターの蘭子も危機感を覚え不本意ながら彼の協力を望んだ。
スピーカーをオンにして直接語り掛ける。

『おい起きろ!ちょっと見直したと思ったらまたコレ?あんた本当に何なの!!』

前のルシフェル戦やデモゴルゴンの件でのゼノメサイアの成長は蘭子も確かに感じていた。
得体の知れない彼を仲間として認めざるを得ないと思っていた矢先にまた以前までの弱い彼に戻ってしまった。
確かに彼は成長している、成長故の新たな悩みにぶつかっているのだ。
しかし周囲の者からはそんなことは知り得ない、いつもと違いが分からないのである。

『(俺だって変わっていってるのに、誰も認めてくれないんだ……)』

蘭子の言葉を耳にして余計に卑屈になってしまう。
存在意義を示さねばならないというのに気力がどんどん削がれていく。

「頼む起きてくれ!!」

他のTWELVE隊員たちの声も聞こえてくる。
このままでは彼らもエネルギー切れや弾切れを起こし打つ手がいよいよ無くなってしまう。

「俺たちが抑えとくからその隙に光線を撃てっ!!」

彼らも焦っているためこのような口調になってしまうのは致し方ないがどうしてもそれが快の心を更に焦らせる。

『(怖いっ、プレッシャーが……!)』

緊張による心臓の鼓動が全身に響くのを感じた。

『(ここで失敗すればヒーローになる自信が……っ!!)』

リスクの大きすぎる状況にパニック発作を久々に起こしてしまうのであった。





久々のパニック発作により心臓の鼓動が激しく伝わり怖いほど生を実感させる。
目を背けられない、逃げられない状況に余計に焦りが止まらない快であった。

「前みたいにエネルギーを溜めててくれ、必ず隙を作る!!」

そう言われても通じなければどうしようなど考えてしまう。
ネガティブな思考ばかりが止まらず更に心臓の鼓動が速まる。

『(どうしよう、もう溜めるしかないか……?)』

パニックになりながらも何とか力を振り絞りエネルギーを溜めて行く。
全身に神の雷が駆け巡って行く。

『オォォォ……』

その様子を見た一同は少し安心したような素振りを見せる
しかし異変はすぐに起こった。

『ッハァ……ッ!!』

なんとゼノメサイアの身体から雷のエネルギーが弾けるように出て行ってしまったのだ。

「はぁ⁈」

「何でだ……⁈」

一同は絶句してしまっている。
無理もない、こんなことは今までに一度も無かった。

『(何で……ッ、パニックだから……⁈)』

パニック発作による意識などの乱れが集中力を削ぎエネルギーを逃がしてしまったのだ。

『ヤバい……!!』

立ち上がって光線を放とうとしたゼノメサイアにルシフェルは目を向ける。
そしてTWELVEの攻撃を搔い潜り突進してきたのだ。

「ググォオオッ!!」

何とか体制を整えて避ける準備をする。

『ウゥッ……』

そこであることに気が付く。
自身の背後に"彼女"はいた。

「快くんどこーっ⁈」

何と快を心配して班から離れた愛里が未だに快を探して歩いていた。
顔は煤だらけで制服は既にボロボロだ。
どれだけ探し回っていたのだろう。

『グゥウウウウッ……!!!』

避けようと思ったが背後の愛里を守るために突進してきたルシフェルを受け止める。
必死に踏ん張り何とか押さえ切った。

「あぁっ……!!」

その勢いで突風が舞い愛里は目を閉じた。
恐る恐る目を開くとゼノメサイアがまるで自分を気にしているかのように戦っていた。

「どういう事……?」

訳が分からなかったが必死さが伝わってくる。

『ンギュオォォォ……ゼリャアアアア!!!』

何とか力を振り絞りルシフェルを離れた所へ投げ飛ばす。

『へへ、火事場の馬鹿力ってやつか……』

そう言いながらルシフェルは胸の辺りにマグマのようなエネルギーを溜める。

「とんでもない反応、ヤバいの来るよ!!」

いち早くスキャンしてエネルギーの値を見た蘭子は驚きの声を上げる。

『夢のための犠牲となれや』

それに合わせてゼノメサイアも必死にエネルギーを溜める。
しかし間に合わない。

『天翔熱波・業火!!』

胸の辺りからマグマのような熱線が放たれる。
以前のものより遥かに威力が増しているのが見ただけでも分かった。

『ライトニング・レイ!!!』

まだエネルギーは溜まりきっていないが慌てて少しの力だけで放つ。
両者の最高威力の技がぶつかり合ったが結果はすぐに出た。

『グッ、グググ……』

当然威力の足りないゼノメサイアが押されている。
踏ん張っているがその努力も虚しく。

『グアァアアアァァァ……ッッ!!!』

全身にマグマの熱線を浴びて今までに無いほどのダメージを食らってしまったゼノメサイアは消し飛ぶ。
そのまま快としての人間の姿に戻り思い切り地面に叩きつけられた。
一同はゼノメサイアが負けてしまったという事実に驚愕している。

「がはっ、くぅ……」

朦朧とする意識の中で快は絶望していた。

「(ヒーローになれなかった……)」

絶望しながら意識は途絶えていく。

「(こんなに苦しいのに涙は出ない……)」

そのまま目は閉じられ快は意識を失ったのだ。





つづく
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