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作者: 甲斐てつろう
#5
『ヒーローに、ならなきゃ。』
街中に突如として出現し再度暴れ始めたルシフェル。

「さぁ来い!暴れ易くしてやったぜぇ!!」

街に損害を出す事を気にしてまともに動けない事があるゼノメサイアを煽るために街を破壊して彼も動き易い環境を作った。
それと同時に街への被害を出す事で怒りを買い挑発に乗らせる事も出来る。

そして先にやって来たのは巨大な影。
ルシフェルの頭上を真っ黒い影が覆い陽光を遮った。
顔を上げたルシフェルはその正体を睨みつける。

「グゥルルル……」

それはConnect ONEのキャリー・マザーだった。
操縦しオペレーターも務めているのは蘭子。

「よし、切り離すよ!」

その声と共に接続されていた三機は地上に降り立つ。

「目標を補足、これより駆逐にあたる」

名倉隊長の言葉により三機は動き出した。
まずはウィング・クロウ。
荒々しく変貌した陽が華麗に飛び回りながらビーム弾を連射していく。

「おらぁっ!さっさと逝ねやぁ!」

それに対抗したのかルシフェルは右腕を上げて防ぎ他の機体に対抗しようとした。

「隙ありっ!」

飛び上がり砲撃を行おうとするランド・スネークに集中する。

「それはお前だっ!!」

地面を抉るように掬い上げランド・スネークに瓦礫をぶつけた。

「おぉっと……⁈」

慌てて避けるランド・スネーク。
攻撃を当てる事は叶わなかった。

「やっぱ一筋縄ではいかないみてぇだ……!」

明らかに前回より難しい戦いになっている。

「今の俺は冷静だからなぁ!」

高々と笑うルシフェル。
前回は奇襲されたため上手く行かなかった事を証明しつつあり気分は上々だった。

「多連装ミサイルっ!!」

名倉隊長のタンク・タイタンが一度に大量の小型ミサイルを放つ。

「見え見えだぜ!」

しかしそれもルシフェルは掌から放たれる獄炎で自らに着弾する前に灼いた。
とてつもない爆風が辺りを吹き飛ばし三機もそれに巻き込まれた。

「ぐあっ……!!」

上空からキャリー・マザーで見ていた蘭子はその様子に苦言を呈する。

「ちょっとみんな何やってんの……!」

言葉ではそう言うがルシフェルの強さは蘭子にもしっかりと伝わっていた。

「次お前だぁ!」

そのままルシフェルは獄炎を上空に向け放ち蘭子の乗るキャリー・マザーを狙った。

「あ、マズい……!」

慌てて避けようとするが間に合いそうにない。
そこへウィング・クロウが割って入る。

「シェルシールド……っ!!」

ウィング・クロウは機体全身を包むようにバリアを貼り獄炎を防ぐ。
キャリー・マザーを守った。

「オペレーターに死なれちゃ困るっ!」

「あっ……そう!」

少し恥ずかしそうに蘭子は反応した。

「おぉぉ!!」

そのまま空中旋回しビーム弾を撃つウィング・クロウ。
しかしルシフェルは難なく対応した。

「ゴアァァァッ!」

鋭利で硬い爪で防ぎ切る。

「クソッ、埒が明かねぇ!」

「削り切れないぞ……!」

殆どダメージを与える事が出来ない。
削れていたとしてもあまりに少しずつなのでこちらの消耗が先な気がしていた。

「ヒャハハハ!どうしたどうしたぁ⁈」

あまりに暴れ回るため隙が見えない。

「せめてデカいのを直撃させられれば……!」

竜司のその声を聞いて名倉隊長は思った。

「(何か動きを封じられるもの、ヤツを止められる切り札があれば……!!)」

彼は一体何を思い浮かべたのだろうか。





その頃チキン店でバイト中の快は休憩中の先輩によって状況を知らされた。

「マジか、また罪獣出たって」

制服を脱ぎラフな格好でスマホのニュースを見ながら驚いている。

「嫌な世の中になったもんだなぁ」

その話を聞いた快は動きを止める。

「……っ」

行かなければならない。
しかしバイト中のためまた以前のように先輩から叱られるのではないかと少し慄いてしまう。

「お前……」

すると純希が察したように声を掛ける。
快の震えた手を見て言った。

「手ぇ震えてるぞ、無理すんな」

様子が変な快に伝える。

「お前最初から罪獣の件に巻き込まれっぱなしだもんな、震えるのも分かるよ」

そして純希は提案をした。

「先に休憩入って来い、しばらくは一人で大丈夫そうだ」

この時間帯の忙しさをしっかりと考慮して快に休憩を勧めたのだった。

「え、いいの……?」

「心配すんな、自分に出来る範囲の事から少しずつやれば良い」

そう言って快の肩を優しく叩く。

「よーし、調理でも洗い物でも掛かって来いやー!」

そして快に背を向け仕事を一人で続ける純希。
気合が入ったその背中はとても頼もしかった。

「(コイツやっぱ凄いんだな……)」

少し悔しくなってしまうが自分には出来る事、やらねばならない事がある。

「……よし」

そして休憩に入り制服からいつもの服に着替えて誰もいない店の裏に出た。
そこで手に持ったグレイスフィアが輝く。
それを快は見つめていた。

「ゼノメサイア、何で俺なんだ……?」

静かに問い掛けてみる。
しかし返事はなかった。

「……自分で見つけろって事か」

そう理解し力いっぱい握りしめる。

「でも必ず理由があるんだよな、俺が選ばれた理由が……!」

きっと自分にしか出来ない何かがあるのだと信じる。

『自分には出来ない事、君になら出来ると信じて託した。応えなくていいの?』

英美が死んだ時、初めて変身した時。
このような幻聴が聞こえた。
自分にしか出来ない事を見つけるために今出来る事をする。
そう覚悟を決めてグレイスフィアを握った拳を思い切り前に突き出した。

「おおおぉぉぉぉぉっ!!!」

眩くも温かい愛の光が現れ快の全身を包む。
そしてその姿を50m級のヒーローへと変えた。

『セヤァァァァッ!!!』

ゼノメサイア降臨。
Connect ONEとルシフェルの戦う街へ飛んで向かったのだった。





一方Connect ONE実動部隊TWELVEと罪獣のような醜悪な姿をしたルシフェルが激闘を繰り広げる街では圧倒的にルシフェルが優勢だった。

「ゴアァァァッ!!」

衝撃波のようなオーラを放ち力を解放する。

「ぐっ、何だ……⁈」

その衝撃で吹き飛ばされる三機。

「なっ、エネルギーが上がってる……!」

キャリー・マザーでルシフェルの分析もしていた蘭子はそのデータの変化を見て驚愕している。

「コイツまだこんな力を……!」

絶望的な状況にTWELVE隊員たちは格段に士気が下がっていた。

「まだまだぁっ!」

しかし諦めはしない。
陽のウィング・クロウが突っ込みながらビーム弾を連射する。
しかしパワーアップしたルシフェルには通じなかった。

「フンッ」

尻尾を素早く降り全てのビーム弾を弾き飛ばす。
その勢いでウィング・クロウまで尻尾で叩きつけた。

「ぐぁっ……!!」

機体にダメージを負ってしまったウィング・クロウ。
飛行が安定せずどんどん墜落していく。

「マズいぞ……っ!」

コントロールが効かない。
このままでは地面に激突して大爆発を起こしてしまう。
死を悟ったその時だった。

『セアッ!!』

突如猛スピードで人型の何かが突っ込んできた。
それは堕ちていくウィング・クロウを地面に激突する寸前でキャッチに何とか救ったのだ。

「おぉっ……⁈」

コックピットから見上げる陽。
視線の先にはゼノメサイアの顔があった。

「……遅ぇよ」

そう言いながらも広角は上がっていた。

『ハァァァ……』

ゼノメサイアがキャッチしてくれたお陰でもう一度飛び立てたウィング・クロウ。
その後ゼノメサイアはルシフェルの方を向く。

「ヒヒ、来やがったな……!!」

ニヤリと笑ったルシフェル。
そしてゼノメサイアとTWELVEの三機はルシフェルに向き合う形で並んだ。

『ハァッ!!』

そして決戦のゴングが鳴る。
勝利はどちらの手に。





つづく
つづきます
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