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作者: 真名鶴
Drawing
 壁は一面真っ白で、それはいつか自分を押しつぶすために迫り来るものだと思っていた。
 窮屈で、窮屈で、どうしようもなくて、息もできない。ままならない呼吸をどうにかしようとして、気付けば首を絞めていた。
 当たり前のことを当たり前にやっているだけだった。呼吸だってそのであるはずだった。
 ああ、だれか、どうか。
 私に呼吸の仕方を教えてください。どうやって息をしていたかすら、もう分からなくなってしまったのです。そうしてこれを、誰もが理解できないと首を横に振ったのです。
 壁は白い。
 真っ白で四角くて、どうしようもなく息が詰まる。どうしようもなく息苦しい。
 いっそ、すべて塗り潰してしまおうか。この白を汚して、穢して、そうすればこの意味不明な恐怖心は消えてなくなるのだろうか。
 頭の中がぐちゃぐちゃになる。ここから出せと叫んでいることばがある。
 何もかもすべて、流れ出てしまえ。

 汚したい、塗りつぶしてしまいたい。けれどここには壁を塗りつぶせるだけのものが何もない。
 何か、なにか。

 ああ――あった。これで、いい。
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