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作者: 犬物語
【宇宙】ビッグバンとインフレーション【SF作品向け】
宇宙ヤバイ
 宇宙、すきですか?

 宇宙って広いよね。大きいよね。ロマンあるよね。壮大で果てしなく、んでもって未知のナゾがたくさん詰まってるから『宇宙ヤバイコピペ』なんてのも誕生するくらいのヤバさ

 つまり何が言いたいかってと宇宙ヤバイ

 でもナゾをナゾのままにしたくないのがニンゲンっていう生き物なの。宇宙がどんなんだからイロイロな角度から研究してる

 宇宙の大きさとか、過去未来はどんな形になってるのかとか――みんなも『ビッグバン』って言葉は知ってるよね?

 知らない? これ知っとくといろんな創作に役立つかもしんないからぜひ覚えとくといいよ。とくに異世界ファンタジーとかでは盛り込めそうな要素多いからね

 あーそれね、しってるって方もわりとうろ覚えっていうか中途半端な感じじゃない? ビッグバンと『インフレーション』のちがいとか説明できる? なんかビミョーでしょ?

 ってことで、今回は宇宙関連の基本『宇宙の起源』について迫ってみようと思います





:宇宙は138億歳ってホント?:

 アナタは『宇宙は膨張し続けている』ってご存知ですか?

 実はそうなんです。宇宙って今も加速しながら・・・・・・膨張を続けています。ちなみに「なんで?」って聞かれても『観測したらそうだったから』としか答えられないのでどうぞよろしく

 ただこの膨張のしかたに特徴があってね……たとえば『風船』をふくらませるイメージをしてみてください。お口でふぅ~~~~~つってふくらませると全体的に均等に・・・・・・・風船内の空間が膨らんでいくでしょ? 宇宙もそれと同じような膨らみ方をしています

 あっちがちょっと膨らんでこっちはぜんぜん膨らまない、とかじゃないんです。ほんと全体的に等間隔に、ゴムを引き伸ばすような感じで膨らんでいってるのです

 あっちこっちの星の距離を計算してみたらそうだったんだ。ふしぎだねぇ~……で済まされないのが科学者たち。さっそくこの現象についていろいろ考えて、あるコトに気づきました

「これ、時間を逆戻りさせたらすべてが1点に・・・・・・・集約する・・・・んじゃね?」

 風船を膨らませたら等間隔で広がってく。んじゃ風船の空気を抜く、つまり時間を逆戻りさせたら最終的にはある地点に宇宙すべての存在が集まっちゃうよね? ってこと。これすごくない?

 で、科学者たちは次に『宇宙すべての物質が1箇所に集まってた時』はいつだったかを計算しはじめました。今から逆算して、すべての物質が1点にあった時の時間だね。端的に書くと『宇宙の年齢』を計算し始めたことになります。んで、エラい研究者たちが突き止めました

「宇宙の年齢はだいたい138億歳だよ」

 だいたいってのは、さすがに宇宙の起源を秒単位で正確に測ることはできないからです。誤差はだいたい2000万年。いやけっこー誤差あるなってツッコミありそうだけど宇宙の年齢からすると誤差よ誤差

 ちなみにこれは2015年に発表されたヤツね。他にもいろんな説ありありだけど、だいたい137~138億歳っていう結論に達している感じ

 これ、べつに勘でやったワケじゃなくてほんとにいろんな要素を交えて計算した結果なのです。今でこそこんな感じで議論されてるけど、ほんの60年前までは宇宙に年齢とか無いよとか、宇宙は絶対的で不変だっていう考え方が主流だったの

 まあ、宇宙年齢っていう考え方も間違いである可能性は否定できないけどね





:宇宙って膨張してるんじゃね? ってなるまでの話:

 宇宙に年齢がある。なぜこれが明らかになったのかはいろいろな経緯があります

 もともと研究者たちは「宇宙は絶対的で不変だよ」的な考え方が主流でした。たとえばみんなだいすきアインシュタインなどが出した相対性理論などのあれこれがあるね

 だから彼は「神はサイコロを振らない」言うて世の中はなんかしらの計算結果や答えがあるという信念を貫きました。計算結果におかしな値が出るときは『宇宙定数』っていう概念を差し込んで整合性を図ったりしてね

 当時の観測技術は望遠鏡であっちこっち覗き込むような時代です。現代ほど詳細ではなかったけど、それでも星の動きや挙動を観察するには充分でした。ってことで、やはりみんなだいすき『ハッブル』さんがある発見をします

「あれ……なんか星と星の距離遠のいてね? ――しかも全体的に膨らんでるんですけどぉ!?」

 彼は宇宙が銀河系だけでない・・・・・・・・・・・ことを発見した偉大な方でもあるね

 『赤方偏移』って用語ごぞんじ? 光はだいたい秒速30万kmで動くんだけど、宇宙の膨張は空間自体の膨張なので、光の波長は宇宙の膨張にしたがってどんどん引き伸ばされちゃうの

 いわゆるドップラー効果みたいなもの。車の移動によって音がどんどん引き伸ばされていくことで聞こえ方が変わってくアレです

 何もない絶対的な空間でソレ・・が起こるわけないじゃん? ってことで、科学者たちは宇宙のアレコレについて激しく議論していきます

 宇宙に年齢がある! それをほぼ証明したのは『宇宙マイクロ波背景放射(輻射)』と呼ばれるものです。1964年だか65年に発表されたそれによって「あ、これほぼ宇宙年齢あるわ」という結論に達しました

 これは宇宙の全体的に存在するほぼ同じ波長・・・・・・のマイクロ波です。これがなんの証拠になるんだ? って話ね。えーっと宇宙って広いじゃん? そんな広い空間に同じ波長のマイクロ波がほぼ均等に、全体的に分布してるって現象ありえなくね? って話です

 ハッブルさんが発見した『宇宙は膨張してる』という事実と交えて考えられることは、つまりこういうことです

「宇宙ははじめ1点にあり、あるとき大爆発・・・によって広がった!」

 はい。もうみなさんお気づきですよね。これがビッグバンです





:ビッグバン:

 ビッグバン理論自体は以前からありました。その起源は、とある天文学者が「宇宙に年齢がある」と主張していた研究者たちを揶揄して言った言葉です。戦後の1949年、BBCラジオ放送の一幕で登場した言葉でした

 宇宙マイクロ波背景放射の発表は1965年ですが、それ以前から存在を予言してる学者たちがいたのでそれをバカにしたわけじゃなく、まあ「こういう説があるんだよ、まさかと思うよね?」的なニュアンスで一般の方に向けて言ったんだと思います

 宇宙がはじめに集約してたと考えると、そこには光も物質も関係なく『超高密度あんど超高温の熱エネルギー』的な何かがあったと考えられます。それが大爆発! して、はじめはあっちこっちにいろんな物質が散開してました

 物質言うても酸素とか窒素とかじゃなくてね? もうほんと原子をつくる材料(素粒子)があっちこっちにミッチリしてたんですよ

 光もそのひとつだったんだけど、あちこちに光の進行を邪魔するブツがたくさんあったので動くこともできず、当時の世界はわたしたちの視界からすれば暗闇に閉ざされた空間だったでしょう

 が、やがて宇宙が膨張によって熱を冷まし、さらにあっちこっち動けるような余裕も得たことで、宇宙に散らばる光が「ひゃっはー!」言うて自由飛行しはじめたんですよ、ほぼ同じタイミングで

 それが『宇宙マイクロ波背景放射』の正体です

 赤方偏移、ハッブルによる宇宙膨張の発見、そして宇宙マイクロ波背景放射と、まあキレイにビッグバン理論をつくる材料が揃っていったんですね。しかしここでもうひとつナゾがあります

「さいしょがめっちゃ密度で熱いエネルギーだってことはわかったけど……それ以前は?」

 その1点に集約したナゾの塊はいつ、どこで誕生したのでしょう? 





:インフレーション:

 大きなバン! は宇宙膨張や宇宙マイクロ波背景放射、さらに元素の数が軽いヤツ多くて重いやつ少ないっていうバランスをいい感じに説明できる一方こんな課題も抱えていました

・背景放射が"完全"に一様じゃない理由は?
・宇宙の"果て"はドコにあるの?
・すっげー高エネルギーの塊――それ以前は?

 まあそのほかいろいろあるけどだいたいこんな感じ

 宇宙マイクロ波背景放射ってちょっとしたムラがあったんです。だいたい10万分の1程度。ごく僅かでも宇宙にとってはデカいムラです

 このムラがあった、つまり均等じゃなかったからこそ、宇宙はあちこちで物質が合体し、星ができ、そしてわたしたちが誕生することができたのですから

 もしすべての物質が均等だったら、それぞれが均等な距離で均等な感じの星ができて均等な感じの世界になってるでしょう。まあそれはそれで見てみたい宇宙なんだけど……しかしこれおかしくない?

 だって1点に集約した熱エネルギーが一挙に大爆発したのなら、その結果は全体的に均等に爆発しなきゃいけないんです。それこそ10万分の1程度の誤差も許さずに

 でも、実際の放射には誤差があった――ビッグバン理論はすばらしい理論ですがそれはまだ完全じゃない。そしてビッグバン理論の大本となる『1点に集約したなんかすげーエネルギーの塊』が誕生した経緯を説明できてません

 これはどげんかせんといかん。ってことで誕生したのがインフレーションでした



 注意:インフレーションは量子力学に足をつっこむヒジョーにややこしい理論です。簡潔に、わかりやすく解説するよう心がけますが、ぶっちゃけどう説明しても難しくなるので「あ、これわたしにゃレベル高すぎるわ」と感じた方はひとまず読み飛ばしたほうがいいかも。ぶっちゃけわたしもよくわがんね(栃木弁



 インフレーションは『真空のエネルギーの相転移による圧力によって引き起こされた爆発的な膨張』です

 はいいみわかんなーい

 わかりやすく言い換えよう。インフレーションは『無だった宇宙に"ナニカ"が生まれて、そいつが空間をすごい勢いで膨張させたって理論』です

 えーっとね、まず常識をぶっ壊しましょう。通常真空には"何もない"とされてますが、宇宙論――量子力学的にはそこにはいろいろあります・・・・・・・・

 たとえば光がそこを駆け抜けられるので空間があります。時間経過によっていろいろ起こるのでつまり『時空』がありますよね

 ってことで、そこにはなにかが"ある"んです。量子力学的な無ってのは時空すらない完全な無・・・・・・・・・・を指します


 宇宙、という概念ははじめまったくなかった、つまり量子力学で言うところの完全な『無』だったのです

「え? そしたら現在の宇宙があること説明できなくね?」ってなりますよね。ですがご安心ください。量子力学的には『"無"の空間で定期的なゆらぎ・・・があり、そこにはいろんなモノが誕生している』とされます

 それが真空エネルギーです

 無の世界では頻繁に、この小さなエネルギーが生まれては消え、生まれては消えを繰り返しています

 わたしたちは普段『質量ある・ないエネルギー』と過ごしています。前者は水素、酸素など、そして後者は光などですね

 世界にはこれらふたつのほか、真空エネルギー(ダークエネルギー)というもうひとつのエネルギーが存在し、宇宙全体を満たしているのです。ただわたしたちが日常に関係している物理法則とはまったく関連しません

 だって真空エネルギーですもの

 しかし、実際宇宙全体に満ちているので宇宙論的に無視できないよね。しかも世界ははじめ『無』だったんだから、それはすなわち『宇宙の起源には真空エネルギーしかなかった』と解釈できちゃったりしますよね?

 生まれては消える。けど生まれてるってことは実際そこに在る。そして真空エネルギーは時間経過とともに、存在する空間を爆発的に増加させることができます

 アナタは『エネルギー保存の法則』をご存知ですよね? この法則は真空エネルギーでも同じで、高エネルギーから低エネルギー状態になったとしたら、減ったぶんどこか・・・にそのエネルギーぶんがなければなりません

 無の空間に生まれては消える真空エネルギーがこぞってパワーダウンする。しかしダウンした分のエネルギーがすべて『熱』になったら……さーてどうなるでしょう?

 理論では『ウイルスレベルの大きさから銀河系レベルの大きさまで一瞬で膨張した』と考えられています。一瞬ってのはだいたい10のマイナス36乗分の1秒から32乗ぶんの1秒までの間

1000000000000000000000000000000000000分の1秒
1秒を上の数だけ割って、そのうちひとつぶん秒

 イメージできねぇ……

 真空エネルギーがその性質で空間を膨らませ、さらに大量の熱を生み出したことでビッグバンが発生。この宇宙をさらにドデカくしてくれました

 こうすることでビッグバンがもってた宇宙の不均一性や地平線などあらゆる課題をスッキリ答えてくれる良い理論なのですよ

 宇宙のインフレーションは1970年代から議論が加速していき、現在はもはや常識的な理論となりました。現在はインフレーションですら説明できないような問題や、それらを解決するためのより詳細なインフレーションモデルを構築する研究が続いています



 インフレとビッグバンのコンビネーションが、現在わたしたちが教わっている『宇宙の起源』ですね。しかしこれらの理論も万能ではなく、まだまだ多くの課題を残しています

・この宇宙が誕生する『前』はどうなってたの?
・インフレを起こせるようなポテンシャルを秘めた
  場(インフラトン)の構造は?
・いつインフレしたの?

 これらの説は現代も更新され続けており、新たな研究報告や詳細データが得られるごとにより精巧さを増しています。もしかしたらその過程で「実はビッグバン起きてなかった☆」なんて発見があるかもしれませんね

 宇宙誕生以前はどうなっていたのでしょう?

 別の宇宙があったのか、わたしたちがイメージする宇宙とはまったく別の姿だったのか、わたしたちの常識をぶっ壊す法則で満ちていたのか――ナゾっていうかもはや空想ごとに等しいこの課題、それでも研究者はえっさほいさと挑んでおられます。彼らの今後の活躍に期待ですね

 宇宙に関するあれこれはSF作品によく登場します。猿の惑星とかスター・ウォーズみたいな古典的な作品から、現代の異世界〇〇的な作品でも宇宙関連の概念が使われてたりしますね

 そういった創作のお供に、ぜひともこれら宇宙関連の知識を取り込んでおくことをおすすめします。まあ物書きなら創作に活かすってのが前提になると思うので、知識欲というか「この概念どう使えばいいだろうなぁ」的な感じに読んでいただければ幸い

 アナタの創作ライフに幸あれ
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