第172話 かいせん
「ユニテソリ様、物見の報告によると、ユリの勇者と共に大豪院覇皇帝がいる模様… それにこちらの世界への《転移門》を開いたのは女狐の様です。奴らが手を組むなんて一体…?」
「フッ、大方自分の命可愛さに簡単にこちらへのゲートを開いて見せたのでしょう。それこそ淫売の股を開く様にね…」
イアンの報告を鼻で嘲笑する油小路。勇者ユリを迎え撃つ為の軍勢2000を用意したが、魔王を倒す実力の持ち主相手にどれほどの抵抗が出来るのか疑問ではあった。
『大豪院1人ならギル様にお任せしても良いのだが、別の勇者に絡んで来られるとは想定外だった。さて、どうしたものか…?』
油小路は踵を返し歩き始めた。目的地はもちろん蘭と沖田のいる屋敷である。
☆
「んじゃあこの勇者ユリちゃんが『本当に強いんだぞ!』って所を見せちゃおうかな」
蘭達の居る屋敷近くの農村、こちらが油小路の軍勢2000の拠点である。村民も全員が魔族であり、老若男女関係なしに動員されている。普段は平和に暮らしていても、人間相手に戦う時は皆が例外なく戦闘員として振る舞える様にしっかり訓練されていた。
今、魔族軍とマジボラ部隊とが村周りの農地を挟んで対峙、一触即発状態にある。
戦闘能力を持たない鍬形と野々村、淫魔部隊5名を後方に残し実質8名で250倍の相手をする事になる。勇者ユリや大豪院が居たとしても、一度に何百倍もの戦力に対抗できるとは思えなかった。
つばめも戦闘能力を持たないが、一応は回復要員でもあり本人の強い希望もあって前線にいる。つばめの護衛は睦美の指示で久子と御影が就いていた。
その中でユリが率先して一歩前に出たのである。
彼女の手に持つ聖剣『光の百合』が自ら放つ淡光の残像で、ユリ本人の美しさと相まってとても幻想的な光景を映し出していた。
ユリは手にしていた聖剣をザクリと目前の地面に突き立て、空いた手で何やら目に見えないバレーボール大の球体らしきものを挟み込む様に持つ仕草をする。
そのまま両手の球体 (?)を右腰の脇まで移動させ、腰を落とし力を込める動作をする。
「はぁーっ… 行くよぉ、リリィ… ボンバーぁっ!!」
ユリが両手を突き出すと、ユリの手の平から青く輝くビームが放出され魔族軍の中央に穴を穿った。
その威力は凄まじく、少なく見積もっても村の中央に展開していた魔族の10%は何が起こったのか認識すら出来ずに消滅したであろう。
御影『か○はめ波かな?』
久子『かめ○め波だぁ!』
睦美『かめは○波ね』
つばめ『聖剣使わないんですね…』
事前交渉も宣言も何も無い、唐突な開戦にも動じることなく様々な感想を抱いたマジボラ一行であった。
「リリィストライク! リリィインパクト! トドメはリリィダイナマイト!」
傍目には同じ技を連発している様に見えるが、放っている本人からしたら何か違っているのだろう。ユリは立て続けに4発のビームを撒き散らし、パッと見だけで魔族軍の半数近くと拠点にしていた村、そして近隣の森を灼き払った。
「ヒャッハーっ!! とっつげきぃー!」
ユリは睦美らを振り返る事なく、単身で戦列の乱れた魔族軍へと突撃していった。
「そりゃ! リリィパーンチ! リリィチョーップ!」
肉弾戦にて確実に1人1人を始末していくユリ。大鎌を凪いで草を刈る様に魔族軍をまたたく間に蹴散らしていく。
「いやぁさすが勇者ユリちゃん、凄まじい。私達の出番は無さそうですねぇ…」
「アタシらどころか大豪院すら出遅れて手を余らせているわよ」
睦美の視線の先には、手持ち無沙汰で右手を開いたり閉じたりして、それを見つめているだけの大豪院が立っていた。
そんな御影と睦美の会話に久子とつばめが寄ってくる。
「何だか思ってたのと随分違いますねぇ…」
「あの… 聖剣が地面に刺さりっぱなしなんですけど良いんですかね…?」
確かにつばめの指摘した通り、ユリの聖剣は持ち主の遥か後方で無造作に地面に刺されたままだ。
「ゲーム的な『攻撃力の強い剣』じゃなくて、ユリさんのあの無双するパワーを引き出すとか、軍隊の采配力を上げるとか別の能力を持った剣なのでは無いですかね?」
「大体そんな感じよ。ユリの剣には筋力や知力等の様々な能力を何倍にも引き上げる力があるの。剣そのものの切れ味はその辺の鉄剣と変わらないわ」
アンドレの提案にアグエラが答えた事でこの疑問は解消された。
疑問は解消されたが、皆に蔓延する『もうユリ1人でいいんじゃね?』的な雰囲気は隠せなかった。
戦に於いて『死ぬまで戦う』様に訓練されている魔族軍であったが、ユリのあまりにも一方的な攻撃、いや蹂躙に少なからず浮足立つ者も出てくる。
戦力として維持出来なくなる寸前の所で、魔族軍の奥から何者かが飛び出し高速でユリと激突する。
その者はユリ同様に武器を持たない徒手空拳。コウモリの様な羽で空を飛び、ドラゴンの様な尾で激しい打撃を与える。
頭には雄鹿の様な凛々しい角を生やし、ファンタジーの世界に真っ向対立する最先端デザインのバイザー型のマスクを装着した露出の高い若い女だった。
敵の一撃を片手で難なく受け止めたユリは、その相手に向けてニヤリとした女性らしからぬ好戦的な視線を送る。
「私の名は『ウマナミ改』! 義により魔族軍に助太刀致します!!」
百合と蘭、2輪の花の戦いの幕が切って落とされた。
「フッ、大方自分の命可愛さに簡単にこちらへのゲートを開いて見せたのでしょう。それこそ淫売の股を開く様にね…」
イアンの報告を鼻で嘲笑する油小路。勇者ユリを迎え撃つ為の軍勢2000を用意したが、魔王を倒す実力の持ち主相手にどれほどの抵抗が出来るのか疑問ではあった。
『大豪院1人ならギル様にお任せしても良いのだが、別の勇者に絡んで来られるとは想定外だった。さて、どうしたものか…?』
油小路は踵を返し歩き始めた。目的地はもちろん蘭と沖田のいる屋敷である。
☆
「んじゃあこの勇者ユリちゃんが『本当に強いんだぞ!』って所を見せちゃおうかな」
蘭達の居る屋敷近くの農村、こちらが油小路の軍勢2000の拠点である。村民も全員が魔族であり、老若男女関係なしに動員されている。普段は平和に暮らしていても、人間相手に戦う時は皆が例外なく戦闘員として振る舞える様にしっかり訓練されていた。
今、魔族軍とマジボラ部隊とが村周りの農地を挟んで対峙、一触即発状態にある。
戦闘能力を持たない鍬形と野々村、淫魔部隊5名を後方に残し実質8名で250倍の相手をする事になる。勇者ユリや大豪院が居たとしても、一度に何百倍もの戦力に対抗できるとは思えなかった。
つばめも戦闘能力を持たないが、一応は回復要員でもあり本人の強い希望もあって前線にいる。つばめの護衛は睦美の指示で久子と御影が就いていた。
その中でユリが率先して一歩前に出たのである。
彼女の手に持つ聖剣『光の百合』が自ら放つ淡光の残像で、ユリ本人の美しさと相まってとても幻想的な光景を映し出していた。
ユリは手にしていた聖剣をザクリと目前の地面に突き立て、空いた手で何やら目に見えないバレーボール大の球体らしきものを挟み込む様に持つ仕草をする。
そのまま両手の球体 (?)を右腰の脇まで移動させ、腰を落とし力を込める動作をする。
「はぁーっ… 行くよぉ、リリィ… ボンバーぁっ!!」
ユリが両手を突き出すと、ユリの手の平から青く輝くビームが放出され魔族軍の中央に穴を穿った。
その威力は凄まじく、少なく見積もっても村の中央に展開していた魔族の10%は何が起こったのか認識すら出来ずに消滅したであろう。
御影『か○はめ波かな?』
久子『かめ○め波だぁ!』
睦美『かめは○波ね』
つばめ『聖剣使わないんですね…』
事前交渉も宣言も何も無い、唐突な開戦にも動じることなく様々な感想を抱いたマジボラ一行であった。
「リリィストライク! リリィインパクト! トドメはリリィダイナマイト!」
傍目には同じ技を連発している様に見えるが、放っている本人からしたら何か違っているのだろう。ユリは立て続けに4発のビームを撒き散らし、パッと見だけで魔族軍の半数近くと拠点にしていた村、そして近隣の森を灼き払った。
「ヒャッハーっ!! とっつげきぃー!」
ユリは睦美らを振り返る事なく、単身で戦列の乱れた魔族軍へと突撃していった。
「そりゃ! リリィパーンチ! リリィチョーップ!」
肉弾戦にて確実に1人1人を始末していくユリ。大鎌を凪いで草を刈る様に魔族軍をまたたく間に蹴散らしていく。
「いやぁさすが勇者ユリちゃん、凄まじい。私達の出番は無さそうですねぇ…」
「アタシらどころか大豪院すら出遅れて手を余らせているわよ」
睦美の視線の先には、手持ち無沙汰で右手を開いたり閉じたりして、それを見つめているだけの大豪院が立っていた。
そんな御影と睦美の会話に久子とつばめが寄ってくる。
「何だか思ってたのと随分違いますねぇ…」
「あの… 聖剣が地面に刺さりっぱなしなんですけど良いんですかね…?」
確かにつばめの指摘した通り、ユリの聖剣は持ち主の遥か後方で無造作に地面に刺されたままだ。
「ゲーム的な『攻撃力の強い剣』じゃなくて、ユリさんのあの無双するパワーを引き出すとか、軍隊の采配力を上げるとか別の能力を持った剣なのでは無いですかね?」
「大体そんな感じよ。ユリの剣には筋力や知力等の様々な能力を何倍にも引き上げる力があるの。剣そのものの切れ味はその辺の鉄剣と変わらないわ」
アンドレの提案にアグエラが答えた事でこの疑問は解消された。
疑問は解消されたが、皆に蔓延する『もうユリ1人でいいんじゃね?』的な雰囲気は隠せなかった。
戦に於いて『死ぬまで戦う』様に訓練されている魔族軍であったが、ユリのあまりにも一方的な攻撃、いや蹂躙に少なからず浮足立つ者も出てくる。
戦力として維持出来なくなる寸前の所で、魔族軍の奥から何者かが飛び出し高速でユリと激突する。
その者はユリ同様に武器を持たない徒手空拳。コウモリの様な羽で空を飛び、ドラゴンの様な尾で激しい打撃を与える。
頭には雄鹿の様な凛々しい角を生やし、ファンタジーの世界に真っ向対立する最先端デザインのバイザー型のマスクを装着した露出の高い若い女だった。
敵の一撃を片手で難なく受け止めたユリは、その相手に向けてニヤリとした女性らしからぬ好戦的な視線を送る。
「私の名は『ウマナミ改』! 義により魔族軍に助太刀致します!!」
百合と蘭、2輪の花の戦いの幕が切って落とされた。